ミラーレス、真の「最小最軽量」決定戦

Reported by 本誌:鈴木誠

 2011年もカメラ業界に限らず世間を賑わせたミラーレスカメラ。既存の一眼レフカメラからレフレックスミラーの機構をなくし、コンパクトデジカメのようなライブビュー専用機としたことで、レンズ交換の要素を残しつつ小型軽量・低価格化を図った製品群だ。小型軽量がウリなジャンルの製品だけに、「最小」や「最軽量」といった謳い文句も各所に見られる。

 しかし、それらの謳い文句には細かな断り書きが常だとお気づきのことだろう。これまでも「標準ズームレンズを付けた状態ならウチが最軽量」、「ストロボ内蔵ならウチが最小」、「撮像素子が〇×〇mm以上ならウチが最軽量」といった具合に、それぞれが細かな“部門”ごとにトップを主張してきた。当然ユーザーごとに画質・使い勝手・サイズのバランスに納得するポイントは異なるので、そうする理由も納得できる。

 とはいえ、これからミラーレスカメラにステップアップを考える初心者の方々などにとって、現状の「みんな一等賞」のような状態では決め手に欠けるのではないだろうか。そこで、カメラとしての機能・仕様はいったん無視し、サイズと重量の数値ランキングとポイント制で真の「最小最軽量」モデルを公平(かつ強引)に決定してしまおうというのが今回の主旨だ。

参加選手の紹介

 ミラーレスカメラを発売する各社から、最もコンパクト路線と見られるモデルを選んだ。あわせて、サイズ・重量以外の主なカメラ仕様を表にまとめてみた。簡単に言うと、撮像素子の大きさで全体的な画質やボケ描写が変わってくると言われ、手ブレ補正の有無により、複数レンズと組み合わせた際にシステム全体の重さが変わってくる。

OLYMPUS PEN mini E-PM1ソニーNEX-5N
Nikon 1 J1パナソニックLUMIX DMC-GF3
PENTAX Q
機種名撮像素子ボディ内手ブレ補正ストロボフランジバック
E-PM117.3×13.0mmあり脱着式19.3mm
NEX-5N23.5×15.6mmなし脱着式18.0mm
Nikon 1 J113.2×8.8mmなし内蔵17.0mm
DMC-GF317.3×13.0mmなし内蔵19.3mm
PENTAX Q6.2×4.6mmあり内蔵9.2mm

 今回の重量やサイズ計測には、以下の編集部所有機材を用いた。

タニタのデジタルスケールシンワ測定のデジタルノギス

重量部門(本体のみ)

 同梱のバッテリーと同一のSDメモリーカードを入れた状態で計測。撮影状態からレンズだけ取り外したイメージだ。ボディキャップは付けず、ホットシューカバーが付属するものは装着したままにしている。

・本体のみ

E-PM1NEX-5N
DMC-GF3Nikon 1 J1
PENTAX Q
順位機種名重量ポイント
1PENTAX Q199g5pt
2E-PM1264g4pt
2DMC-GF3264g4pt
4NEX-5N265g2pt
5Nikon 1 J1275g1pt

・ストロボ装着時
 脱着式ストロボの採用機種について、ストロボを装着した上で別途計測し、ランキングを設けた。ストロボ内蔵の機種については「本体のみ」の数値をそのまま採用している。

順位機種名重量ポイント
1PENTAX Q199g5pt
2DMC-GF3264g4pt
3Nikon 1 J1275g3pt
4NEX-5N(ストロボ装着)285g2pt
5E-PM1(ストロボ装着)288g1pt

重量部門(レンズ装着時)

 各機種ごとに、メーカー純正のパンケーキタイプの単焦点レンズと、標準ズームレンズをそれぞれ用意した。マイクロフォーサーズ規格のE-PM1とDMC-GF3ではレンズに互換性があるが、ここではカメラボディと同じメーカーのレンズと組み合わせる。

・パンケーキレンズ装着時

E-PM1+「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」NEX-5N+「E 16mm F2.8」
Nikon 1 J1+「1 NIKKOR 10mm F2.8」DMC-GF3+「LUMIX G 14mm F2.5 ASPH.」
PENTAX Q+「PENTAX-01 STANDARD PRIME」
順位機種名重量ポイント
1PENTAX Q236g5pt
2DMC-GF3314g4pt
3NEX-5N330g3pt
4E-PM1333g2pt
5Nikon 1 J1353g1pt

・標準ズームレンズ装着時

E-PM1+「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」NEX-5N+「E 18-55mm F3.5-5.6 OSS」
Nikon 1 J1+「1 NIKKOR VR 10-30mm F3.5-5.6」DMC-GF3+「LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」
PENTAX Q+「PENTAX-02 STANDARD ZOOM」
順位機種名重量ポイント
1PENTAX Q295g5pt
2DMC-GF3358g4pt
3E-PM1376g3pt
4Nikon 1 J1390g2pt
5NEX-5N458g1pt

 以上の「本体のみ」と「レンズ装着時」のポイントを合計したものを、重量部門の総合得点とする。いずれもシステムの小ささが光るPENTAX Qがトップとなった。

・部門総合結果

順位機種名ポイント
1PENTAX Q20pt
2DMC-GF316pt
3E-PM110pt
4NEX-5N8pt
5Nikon 1 J17pt

サイズ部門

 ここでは本体サイズの比較を行なう。デジタルノギスの使用を試みたが公平といえる計測が難しかったため、各社の公称値を採用した。実測値と比べてみたところ、ストラップ取り付け部のような突起は本体の幅に含まない方針でおおむね共通しているようだ。

E-PM1NEX-5N
Nikon 1 J1DMC-GF3
PENTAX Q

・幅

順位機種名ポイント
1PENTAX Q98.0mm5pt
2Nikon 1 J1106.0mm4pt
3DMC-GF3107.7mm3pt
4E-PM1109.5mm2pt
5NEX-5N110.8mm1pt

・高さ

順位機種名高さポイント
1PENTAX Q57.5mm5pt
2NEX-5N58.8mm4pt
3Nikon 1 J161.0mm3pt
4E-PM163.7mm2pt
5DMC-GF367.1mm1pt

・厚さ

順位機種名厚さポイント
1Nikon 1 J129.8mm5pt
2PENTAX Q31.0mm4pt
3DMC-GF332.5mm3pt
4E-PM134.0mm2pt
5NEX-5N38.2mm1pt

・サイズ比較「ボディのみ」の結果

 厚さにおいてPENTAX Qが2位となったのは背面ダイヤルの影響だろうか。フラットな形状のNikon 1 J1が、約半分のフランジバックであるPENTAX Qの数値をわずかに下回った。唯一内蔵ストロボをレンズ光軸の中心に配置しているDMC-GF3は、レンズマウント径に発光部の高さが加わり、数値上では若干不利な結果となったようだ。

順位機種名ポイント
1PENTAX Q14pt
2Nikon 1 J112pt
3DMC-GF37pt
4E-PM16pt
4NEX-5N6pt

 続いては、レンズ装着時の厚さを比較する。これは製品情報などにも数値の記載が見当たらないため、デジタルノギスで実測してみた。沈胴式レンズは沈胴させるなど、それぞれ鏡胴が一番短くなった状態で、レンズ先端の中央から本体背面までの長さを垂直に測定した。レンズキャップはいずれも外している。

・厚さ(パンケーキレンズ装着時、編集部実測値)

E-PM1+「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」NEX-5N+「E 16mm F2.8」
Nikon 1 J1+「1 NIKKOR 10mm F2.8」DMC-GF3+「LUMIX G 14mm F2.5 ASPH.」
PENTAX Q+「PENTAX-01 STANDARD PRIME」

※画像に記載したボディの厚さはメーカー公称値です。

順位機種名厚さポイント
1PENTAX Q50.75mm5pt
2Nikon 1 J151.93mm4pt
3DMC-GF352.86mm3pt
4NEX-5N56.11mm2pt
5E-PM156.46mm1pt

・厚さ(標準ズーム装着時、編集部実測値)

E-PM1+「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」NEX-5N+「E 18-55mm F3.5-5.6 OSS」
Nikon 1 J1+「1 NIKKOR VR 10-30mm F3.5-5.6」DMC-GF3+「LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」
PENTAX Q+「PENTAX-02 STANDARD ZOOM」
順位機種名厚さポイント
1DMC-GF359.43mm5pt
2Nikon 1 J171.68mm4pt
3PENTAX Q75.95mm3pt
4E-PM183.84mm2pt
5NEX-5N93.04mm1pt

 これらのEVF非搭載ミラーレスカメラは、パンケーキレンズを装着した姿がスタイリッシュで「コンパクトデジカメと張り合うサイズ感」とも言われているが、標準ズームレンズに交換すると、さすがに別物であると実感する。ここでは電動式沈胴機構のXレンズを装着したDMC-GF3が、2位に1cm以上の差を付けてトップになった。

 先に計測した「ボディのみ」のポイントランキングに、レンズ装着時のポイントも踏まえた部門最終結果が次の通りだ。ここでもPENTAX Qが強かったが、Nikon 1 J1の健闘が光る。

順位機種名ポイント
1PENTAX Q22pt
2Nikon 1 J120pt
3DMC-GF315pt
4E-PM19pt
4NEX-5N9pt

総合成績発表

 「重量部門」、「サイズ部門(ボディのみ)」、「サイズ部門(レンズ装着時)」のすべてのポイントを合計した総合結果が次の通りだ。

順位機種名ポイント
1PENTAX Q32pt
2Nikon 1 J124pt
3DMC-GF323pt
4E-PM114pt
5NEX-5N13pt

 おおかたの予想通りかもしれないが、撮像フォーマットの最も小さいPENTAX Qがトップとなった。DMC-GF3はストロボ内蔵かつ、沈胴時のコンパクトさが特徴的なXレンズに支えられた結果だろう。同じ4/3型のフォーマットながら、E-PM1にポイントで差をつけた。そこに迫ったAPS-CサイズセンサーのNEX-5Nは、想像以上の健闘と言えるのではないだろうか。2位につけたNikon 1 J1は飛び抜けた数値こそ持たないものの、ストロボ内蔵や沈胴式ズームレンズなどでバランスの良さを見せつけた。

 今回の規格はあくまでカメラを「物体」として数値化・ランキング形式としたもので、この順位がカメラとしての評価には直結しないことを改めて述べておきたい。気になる1台が見つかったなら、記事末の関連記事からカメラとしてのレビューを改めてご覧頂きたい。レンズ交換の楽しみを持ちながら可搬性も意識したサイズ感が魅力のミラーレスカメラ。こうした絶対的なサイズ感も踏まえた上で画質・機能面などから総合的に比較検討すれば、より納得の1台を選べるのではないだろうか。






本誌:鈴木誠

2011/12/13 00:00