2011年7月に発売されたパナソニックのマイクロフォーサーズ機「LUMIX DMC-GF3」は、前モデル「LUMIX DMC-GF2」(2010年10月発売)よりも体積比約17%、重量比約15%ほど小型になり、現在発売されているストロボ内蔵レンズ交換式デジタルカメラのボディとしては世界最小・最軽量のモデルです。
執筆時の大手量販店での価格は、ボディ単体で5万4,800円、パンケーキレンズの「LUMIX G 14mm F2.5 ASPH.」が付いたレンズキットが6万8,000円、「LUMIX G 14mm F2.5 ASPH.」と「LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.」の2本のレンズが付くダブルレンズキットが7万1,800円でした。
カラーはシェルホワイト、フェアリーピンク、センシュアルブラウン、エスプリブラックの4色ですが、パンケーキレンズが付いたレンズキットとボディ単体の販売カラーはエスプリブラックのみで、その他の3色はダブルレンズキットのみでの販売となっています。
■Gシリーズとの住み分けがはっきりしてきた
撮像素子はDMC-GF2と同じ1,210万画素の4/3型LiveMOSセンサー。同時に発表された「LUMIX DMC-G3」が新開発の1,600万画素4/3型LiveMOSセンサーを搭載していることを考えると、GFシリーズはエントリーモデルとしての立ち位置がより明確になったといえるでしょう。
動画はAVCHD形式のフルHD動画記録に対応し、液晶モニターは3型46万ドットのタッチパネル方式で、これもDMC-GF2と同様です。
DMC-GF2との大きな相違点は、ポップアップ式のストロボは内蔵しているものの、アクセサリーシューは取り除かれたことにあります。
アクセサリーシューは非搭載になったが、ポップアップストロボは継承 |
ビューファインダーやストロボなどの外付けアクセサリーを使ったり、レンズ交換式カメラらしい込み入った操作を楽しみたい人はDMC-G3を、レンズ交換式カメラ初心者やサブ機として気軽に持ち歩きたい人はDMC-GF3を……と言うように、GFシリーズ発売当初は曖昧だったGシリーズとの住み分けがはっきりしてきたと感じました。
■過去最高、絶妙のホールド感!
背面の操作系ですが、DMC-GF2では十字キーだった部分がDMC-GF3ではコントロールダイヤルになり、DMC-GF2では右上部にあった「後ダイヤル」がGF3ではなくなりました。タッチパネルで操作できる事が多くなるにつれて、背面のボタンやダイヤルが減っていくのは最近は当たり前になって来ましたね。
背面には十字キーを兼ねるコントロールダイヤルを新設 |
コントロールダイヤルは好みもあるでしょうが、小さいながらもスムーズな動作で、押し込みは深くも浅くもないちょうど良さ。指が当たって変な所を押してしまったり、撮影中に間違って触って他のモードに変わってしまうことなどもなく、とても使いやすかったです。
カメラ上部の操作系は、DMC-GF2と比べるとホットシューがなくなって中央部に内蔵ストロボが設置されたのは前述のとおりですが、その内蔵ストロボがあった左側の位置にマイクが移動して来ました。シャッターボタン部分の並びはそれほど変化はありませんが、ワンタッチで「iA」モードにできるiAボタンと電源スイッチの位置が逆になっています。
シャッターボタンは動画ボタンよりもかなり内側にあるので、見た印象では使いにくそうだと思ったのですが、グリップをホールドするとちょうどシャッターボタンの位置に人差し指が伸びる仕組みになっていて、とてもシャッターが押しやすい! 細かい所までしっかり考えている開発陣の真面目さを垣間見た思いです。
ホールド感はボディが小さくなると損なわれる場合も多いのですが、このモデルはそんな心配は皆無でした。前面のグリップが盛り上がった流線型をしていて握りやすいので深く持つことができ、背面の親指を置くミニグリップもちょうどいい位置にあるため、片手で持つのに最適な形状と言えるでしょう。
女性サイズの手の話になってしまいますが、私が今まで使ってきたミラーレス機で一番持ちやすいグリップの大きさと形でした。右手でカメラを持って、左の指でタッチパネル操作をして撮影をするというコンセプトにピッタリです!
スライドバーでボケ量を変更できる「タッチぼかしコントロール」も引き続き搭載 |
■タッチ性能の良さが活きる「0.1秒AF」機能
タッチパネルはDMC-GF2と同様の感圧式。タッチペンも付属していますが、よほど指が太い人以外は指での操作で十分です。タッチ反応はとてもよく、タッチでのピント合わせもストレスなく行なえます。
「0.1秒AF」は、タッチ感度がいいのでタッチするとピントが合ったのか確認する間も無くシャッターが切られるので、はっきり言って撮っている人間のほうがついて行けていない感じ(笑)。ちゃんと動いている被写体をタッチしないと当たり前ながら違う所にピントが合ってしまうので自分の目を鍛えましょうというくらい、性能が良かったです。
ただ、再生時に写真をめくるスライド操作には難あり。タッチパネルではうまくめくれず、結局コントロールホイールの左右キーを使って写真送りをしていました。
また、撮影時に液晶に出たままのアイコンがとっても邪魔! せっかくタッチでどこにでもピントを合わせられるのだから、すべてのアイコンを消して構図の全体が見られるような仕様にしてもらいたいです。
■指一本でピントを操る!
ピンポイントAFはその名のとおり、従来のAFよりもさらに小さいAFエリアで合わせたい被写体にピンポイントでピントを合わせられる新機能です。撮影時はタッチした部分が約5倍に拡大され、画面上のAFエリアをドラッグして動かすことでピント位置を移動できるので、AF位置の微調整をすることができます。
1点AFにすると液晶画面の端までタッチでピント位置を指定することができる。AFエリアの拡大・縮小も可能なので、思い通りの位置にピントを合わせることが可能 |
この機能はかなり画期的で、花びらじゃなくて花のシベにピントを合わせたいときや、ごちゃごちゃした雑貨が並ぶお店などでも、もたもたすることなく撮影ができます。
画面左上の一番端に一番小さなサイズのAFエリアを指定。今までMFでちまちまと合わせていたことがAFで可能になるなんて……デジタルの進化ってすごい! |
一番小さなAFエリアに設定したところ | 一番大きなAFエリアに設定したところ |
拡大した画像はピントが合って少しすると拡大が解除されるのですが……その時間が結構長い! じっくり静物を撮る時や綿密なマクロ撮影などではないスナップ撮影時には、元の構図に戻るまでの待ち時間で軽くイラッとしてしまいます。ぜひ、手動で解除できる設定を作ってください!
■大胆さが欲しい「クリエイティブコントロール」
従来の「マイカラーモード」から名称変更して新たに搭載されたのが「クリエイティブコントロール」です。色合いを中心に変える旧モードから、今時のカメラには必ずといっていいほど搭載されているフィルター系のモードに進化しています。液晶モニターで効果を確認しながら撮影するフィルターを選択できるので、ムードある写真が簡単に撮れるようになりました。
クリエイティブコントロールは、モード選択画面から選択する。ぼかしコントロール、明るさ調整、色合い調整をすることができる「iA+」モードもここから選べる |
効果はジオラマ、ポップ、レトロ、ハイキー、セピア、ハイダイナミックの6種類ですが、レトロとハイキー、ハイダイナミックは色合いが似ているので、もうちょっと大胆に違う色合いになるフィルターを入れて欲しかったな~と思いました。これは今後に期待かな。
ポップ | レトロ |
セピア | ハイダイナミック |
ハイキー | ジオラマ |
今回特筆すべきは「ジオラマ」です! タッチで簡単にぼかしの幅や位置を調節することができるので、ジオラマ系のエフェクトを搭載した今までのどの機種よりも気軽に撮ることができました。ホイールとかボタンとかでちまちまと幅や位置を変えるのってめんどくさいんですよね(笑)。
■少しだけいじりたい時に最適な「iA+」モード
新しい撮影モードとして「iA+」(インテリジェントオートプラス)が搭載されました。カメラ任せで被写体によって適切な撮影処理をしてくれる従来の「iA」は便利ながらも自分好みに設定を変えることができなかったのですが、この「iA+」は、ぼかしコントロール、明るさ調整、色合い調整をすることができます。
普段は絞り優先AEなどで撮影している人も、手軽にパパッと撮りたいけど明るさだけ変えたい、ムードを出したいから色合いだけ変えたいという時に使ってみて欲しいモードです。
ただ、操作はぼかしコントロールはタッチパネル上から行なうことができるのですが、明るさと色合いはコントロールダイヤルから行なわなければなりません。ショートカットキーを使うのでそれほど手間はかかりませんが、なぜばらばらになってしまったのでしょう? ここはできればまとめてもらいたかったです。
■まとめ
一言で言うなら「小さい!」。パンケーキレンズを付けている状態なら女子の小さなバッグにもポイッと入ってしまうので、ちょっと大きなコンデジ気分で持ち歩けます。
二言目を言っていいなら「簡単!」。説明書を読まなくても操作しているうちにどんどん新機能が使いこなせるようになるのは、色々なメニューが階層深くにあったり、設定するのに手間がかかったりせず、直感で操作できるようになっているからでしょう。
ちなみに些細なことなのですが、ボディが小さくなった分ショルダーストラップの通し穴も小さくなったので、市販の両掛けストラップのほとんどが通らなくなってしまいました。
今回はしょうがなく付属のストラップを付けていましたが、かわいらしいカメラには自分好みのおしゃれなストラップを付けたくなるもの……まさかココを大きくして! とは言わないので(笑)、サードパーティーさんにがんばってもらって、このサイズに合うかわいいorかっこいいストラップをどんどん出してもらいたいものです。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
●クリエイティブコントロール
西武秩父駅の仲見世通り。秩父らしいお土産や味処が懐かしい風情で軒を連ねています。
プログラムAE / DMC-GF3 / LUMIX G 14mm F2.5 ASPH. / 4,000×3,000 / 1/80秒 / F2.5 / 0EV / ISO160 / プログラム / WB:オート / 14mm |
●タッチカラーコントロール
画像は色合い調整画面。ドラッグもしくはコントロールホイールでホワイトバランスを変えることができます。右に動かすと青っぽく、左に動かすと赤っぽい色合いになります。
※共通設定:DMC-GF3 / LUMIX G 14mm F2.5 ASPH. / 4,000×3,000 / 1/60秒 / F2.5 / 0EV / ISO500 / プログラム / WB:オート / 14mm
青っぽい色味 | 赤っぽい色味 |
●超解像
超解像は、OFF~拡張まで4段階で設定できます。初期設定はOFF。羊山公園は南側が芝桜で有名ですが、北側の「見晴らしの丘」からは秩父の市内が一望できます。
※共通設定:DMC-GF3 / LUMIX G 14mm F2.5 ASPH. / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO160 / 絞り優先AE / WB:オート / 14mm
超解像:OFF |
超解像:弱 | 超解像:中 |
超解像:強 | 超解像:拡張 |
●感度
ISO1600くらいからノイズが目に付いてきますが、大きなサイズにプリントするわけでなければ常用範囲です。ISO3200はかなりノイジー。ISO6400は緊急時に使うくらいにしておきたいです。長秒ノイズ除去の恩恵もISO160では感じられますが等倍にしないとわかりにくい程度。でもONでも弊害はないので、通常はONのままでいいでしょう。
※共通設定:DMC-GF3 / LUMIX G 14mm F2.5 ASPH. / 4,000×3,000 / F2.5 / 0EV / プログラム / WB:オート / 14mm
・長秒ノイズ除去:ON
ISO160 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ISO6400 |
・長秒ノイズ除去:OFF
ISO160 | ISO200 | ISO400 |
ISO800 | ISO1600 | ISO3200 |
ISO6400 |
●作例
●動画
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画(.mts)をダウンロードします。
- 再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
長瀞ライン下りの船の中から、片手で撮影! もう片方の手は水しぶきを防ぐビニールシートを持っています(笑)。AVCHD / 1,920×1,080ピクセル / 60i / 19MB |
2011/8/3 00:00