特別企画
春の短期連載:桜の撮影とレンズ焦点距離の関係——望遠ズームレンズ編
2024年3月24日 12:00
今年も桜が咲き誇る季節となりました。待ち望んでいた読者も多いかと思います。そこで、毎年桜の撮影で日本を駆け巡る写真家の館野二朗さんに、自身の作品を解説してもらいました。
テーマは「ズームレンズと桜の関係」。
自然風景では広角ズームレンズ、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズの3本が良く使われるのはご存じの通り。桜の撮影の場合、どのような作画意図でその3本を使い分けているのでしょうか。今回は最終回、望遠ズームレンズ編です。(編集部)
望遠ズームレンズの使いどころは?
望遠ズームレンズも、風景写真を撮る上で必ず持っていたいレンズだ。使い道はとても多く、遠くのものを引き寄せての撮影はもちろんのこと、近くのものを大きく写したい場合やボケを活かしたい場合、そしてレンズの特性である圧縮効果を使えるのが大きな魅力だろう。
近年では、かなりコンパクトで軽量になった望遠ズームレンズが数多く登場し、価格が求めやすい物も多い。肉眼では見えない表現が望遠レンズではできるので、持っていない方はぜひ試していただきたい。
舟屋の街に馴染む桜
海を挟んだ対岸に並ぶ舟屋。ポイントとなるのは舟屋から突き出た桜で、その桜をアンカーとして左右に振った構図と、寄りと引きの構図を薄暮の時間に撮りたかった。ズームレンズなので素早く画角を変えられ、思い通りの画角を得ることができた。
水面の桜に落ちる影
一面花筏に埋め尽くされた弘前公園のお濠。木の影が花筏に落ちていたので、水面に花を咲かせるような演出を狙って撮影している。たくさん落ちている影の中から枝とわかるような画角をズーミングで調整して切り抜いた。
ズーミングで土手の光景も印象的に
背の低い花々と奥にある桜を同じ画角に収めるために、離れた場所からローアングルで狙った。画面の中を花で埋め尽くしたかったので、望遠側にズーミングして構図を決めた。前ボケを活かせるようにF8で撮影している。
遠方の山脈を引き寄せて
桜並木を撮影していると、少し高い場所から狙える場所があった。上がってみると遠くには残雪の山が美しかったので、全景に桜を入れて春らしいコントラストを狙った。圧縮効果が効き、遠くの山も迫力のあるまま撮影できた。
望遠端で荘厳な光景を演出
この桜は丘の上に立っており、背景には残雪の大きな山がそびえている。望遠レンズの特徴でもある圧縮効果を利用して山を引き寄せることで、桜との遠近感をなくしダイナミックな絵を狙えた。望遠レンズの醍醐味の1つだ。
花弁をドラマチックに切り取る
逆光に透過された桜が美しく輝いていて印象的だった。たくさんある花から形のいい房を切り取って撮影した。透過された桜の花びらに露出を合わせたことで背景が暗く落ち、よりドラマチックに写すことができた。
超望遠で“手前+奥”を組みあわせる
遠く離れた山の斜面には様々な花が咲き乱れ、更に遠くには噴火口が特徴的な山が望めた。200mm以上の超望遠で山と花とのバランスを考えて切り取っている。被写体の遠近感がある時は、撮影位置も重要なので気を使うこと。
同じ場所からさらに望遠で
上のカットと同じ場所から横位置で撮影。花の斜面と背景にある山の噴火口を更に印象的に写す為に、400mmまでズーミングし遠近の圧縮効果を高めて撮影している。100-500mmと幅のあるズームレンズだからこそ撮れた1枚だ。