特別企画
春の短期連載:桜の撮影とレンズ焦点距離の関係——広角ズームレンズ編
2024年3月3日 12:00
今年も桜が咲き誇る季節となりました。待ち望んでいた読者も多いかと思います。そこで、毎年桜の撮影で日本を駆け巡る写真家の館野二朗さんに、自身の作品を解説してもらいました。
テーマは「ズームレンズと桜の関係」。
自然風景では広角ズームレンズ、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズの3本が良く使われるのはご存じの通り。桜の撮影の場合、どのような作画意図でその3本を使い分けているのでしょうか。今回はその1回目、広角ズームレンズ編です(編集部)
広角ズームレンズの使いどころは?
広角レンズは一般的に焦点距離35mm(35mm判換算)よりも画角の広いレンズのことで、近年では10-20mmなど超広角なズームレンズも多く発売されている。人間の視野角を遥かに超えた世界を楽しめるのが特徴の一つといえるだろう。
文字通り、目の前の光景をより広く撮影できるレンズであるが、用途はそれだけではない。被写体にぐっと近づいて撮影すれば、肉眼でも感じられない遠近感やダイナミックな写真が撮影できる。
自然風景写真を撮影するときは、立ち位置や撮影ポジションが自由に動けない場合もあるのでズームレンズの方が何かと使い勝手が良い。画角が広いということは撮影できる可能性も広がるので、風景写真では必ず一本は欲しいレンズだ。
広角表現で取り囲まているような構図に
桜並木の“木と木の間”からの撮影。対岸にある桜を手前の両側から出ている桜で囲うように撮影する狙いがあった。RF14-35mm F4 L IS USMのワイド端で手前の桜に近づき、奥の桜とのバランスを見ながら撮影位置を決めて、やや上向きに煽って撮影している。手前の桜や地面を入れることで遠近感が強調された。
縦位置構図で“高さ”を強調
高さのある木は縦位置で撮影することで、その高さが強調されてよりインパクトのある写真になる。この角度では近寄る事ができなかったので、少し離れた位置から木を画面いっぱいに入れるため24mmまでズーミングして撮影している。
一本桜はパースを効かせて堂々と
堂々とした大きな一本桜は、迫力が出るように表現したいので、できるだけ近づいて撮影した。この時は木に歪みが出ないように、木の中心と画角の中心を合わせ、ローアングルから見上げるように煽って撮影している。
周りの状況がわかるように
この場所では遠くに見えている桜がメインになり、近づいての撮影もしているが、全体の状況がわかるように離れた位置からも撮影した。離れたことで花大根の群生や、対岸のシダレザクラの数がわかる。ズームレンズを使用しているので、ちょうど良い画角を得る事ができる。ズームレンズを使用しているので、ちょうど良い画角を得る事ができる。
広角でもF2.8ならここまでボケる
花が散った後に残る桜蕊(さくらしべ)を印象的に写すため、最短撮影距離まで近寄り、大口径ズームレンズの特性を活かしてF2.8の開放絞りで撮影した。広い画角のまま近寄っているので、枝や幹がボケて映り込み、ストーリーを感じられる写真となった。
水鏡を入れながら
撮影ポジションからライトアップされた桜の間には、水が張られた田んぼがあり、これ以上は近づけない状況である。このような状況では、焦点距離を自由に調整できるズームレンズの方が使い勝手がよい。
「桜+菜の花+星」も広々と撮れる
「菜の花」「桜」「星」三つの要素を画面に抑えるためにRF15-35mm F2.8 L IS USMを選んだ。画角から言えば標準ズームレンズでもカバーできる範囲ではあるが、星まで撮影するため、F2.8と明るいこのレンズが活躍する。