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さすが純正の使い易さ…プロも納得の使用感!キヤノンの新スピードライト「EL-5」レビュー
2023年1月31日 18:05
キヤノンから2023年3月発売予定の「スピードライトEL-5」(以下EL-5)は、現行フラグシップ機「スピードライトEL-1」(以下EL-1)の基本性能を引き継ぎつつ、小型化を実現した最新モデルだ。
ここでは向上したEOS Rシステムとの連動性に注目しつつ、EL-5の潜在能力をポートレートを題材に確認していきたい。「純正」ならではのメリットが作品づくりにどう影響しうるのかに着目していく。
なお、今回検証した機能のうち、カメラおよびレンズ側からコントロールする新機能は、「EOS R6 Mark II」と組み合わせた際に実現する。すべてのEOS Rボディで可能ではないことに留意いただきたい。
最大ガイドナンバー60のパワフルな発光部
まずEL-5の基本仕様を確認しておこう。光量に関しては、最大ガイドナンバー約60(ISO 100、照射角200mm時)で、フラグシップ機のEL-1に匹敵する。一方、1/1,024までの微小発光できるのも大きな魅力。微小発光は高感度撮影時に大きな力を発揮する。
サイズに関しては上位モデルのEL-1よりは小型なのだが、ガイドナンバー60相当の他のフラッシュと比較すると、そこまで小さいという印象はない。しかし、これはトータルでの性能を踏まえて考えたい。
発光間隔は約0.1〜1.2秒で、連続発光回数は約95回以上。EL-1ほどではないものの、それでもフル発光時のチャージが約1.2秒というのはこのクラスでは相当速い。動く被写体やポージングをその都度テンポよく変えながら撮りたい場面では、チャージを気にすることなく撮影に集中できる。
フル充電時の発光回数は約350〜2,450回。もちろん、ハイスピードシンクロにも対応する。
マルチアクセサリーシュー対応で連動性が強化
EL-5はマルチアクセサリーシュー搭載のEOS Rシステム専用のスピードライトとなる。2023年1月現時点※では、EOS R3、EOS R6 Mark Ⅱ、EOS R7、EOS R10に対応。旧アクセサリーシューを含む、それ以外の機種では利用できないので注意したい。
※2023年3月公開予定のカメラ側のファームアップが必要です。
マルチアクセサリーシューとは、システム拡張が可能な次世代インターフェース。EL-5はこれに対応することで、カメラ本体と連携しながらの操作が可能になる。この連動性の向上が本スピードライトの大きな特徴となっている。
EL-1と同等の電波通信ワイヤレス機能
電波通信ワイヤレス機能を使うと、カメラから離れたところにスピードライトをセットして、ライティングを行うことができる。この機能に関してはEL-1と同程度のスペックを備えている。センダー、レシーバー共に15台までセットでき、最大5グループに分けて発光モードや光量の調整ができる。通信可能距離は約30m。なお、光通信ワイヤレス機能にも対応する。
EOS Rシステムと連携してできることとは
では、EL-5とマルチアクセサリーシュー搭載のカメラ本体を連携させることで具体的にどんなことが行えるようになるのか、リストアップしてみよう。この連動性が他のスピードライトとの決定的な違いであり、EL-5を利用する最大の強みになってくる。
カメラ本体から簡単にストロボ機能の設定が可能
カメラ本体との連動性という意味でもっとも大きな特徴となるのが、この部分だ。現状ではEOS R6 Mark IIに限られるものの、EL-5のジョイスティックで「メニューダイレクト」を選ぶと、カメラ本体の画面に「ストロボ機能設定」を表示しながら、そのままスピードライトをコントロールできるようになる。
これはカメラに取り付けて使用する際だけでなく、ワイヤレスで使用する際にも適用できるから非常に利便性が高い。ワイヤレスでの多灯ライティングでも、カメラからそれぞれのスピードライトの発光モードや光量などが調整できるのだ。
注)今回検証した「メニューダイレクト機能」「クイックストロボグループ制御」「AF補助光の自動調光機能」「コントロールリング機能割当」といったカメラやレンズとの連動機能は、現在のところEOS R6 Mark IIでしか対応していません。
なお、EL-5とカメラ本体それぞれがオートパワーオフの状態でも、EL-5の「メニューダイレクト」を選ぶ、またはカメラ側のシャッターボタンを半押しすることで、EL-5とカメラ本体の両方の電源をオンに戻せる。これも互いが連動しているからこそできることだろう。
ボタンカスタマイズでさらに連携を強化できる
「メニューダイレクト」と合わせて、ぜひ利用したいのが「ボタンカスタマイズ」による連携だ。好きなボタンに「クイックストロボグループ制御」を割り当ててみよう。登録したボタンを押すだけで、発光グループごとの設定を簡単に切り替えできるようになる。この機能はとくに多灯ライティングを行う際に重宝する。移動せずにカメラからそれぞれのスピードライトの光量調整や発光モードの切り替えが行えるのだが、これをカメラの液晶画面上でスピーディーに操作できるのが大きなポイントだ。
コントロールリングに光量調整機能を割り当てる
カメラ本体だけでなく、レンズとの連携も行える。「ダイヤルカスタマイズ」で「コントロールリング」に「調光補正/発光量」を割り当てよう。コントロールリングを操作するだけで、発光モードがETTL時は調光補正が、M(マニュアル発光)時は光量調整が簡単に行えるようになる。
このコントロールリングを使った操作や前述の「クイックストロボグループ制御」を使った操作は、ファインダーを覗きながら行えるのが大きな魅力だ。つまり、ファインダー越しに撮影しながら光量の微調整などが直感的に行えるのだ。
このコントロールリングによる光量調整機能は、前述のように発光モードをETTLまたはMにして利用したい。また、オンカメラ(カメラにEL-5を取り付けて通常発光する状態)で使用する際やワイヤレスでの1灯ライティング、またはグループがひとつだけの多灯ライティングでの使用がおすすめ。というのは、この機能はグループAにセットしたスピードライトのみがその対象となるためだ。他のグループに設定した場合は作動しないので注意。発光モードが「Gr」の際は、同様にグループAのみ対象となるが、ETTL発光時にしか利用できない。
その他の便利な機能
実際の撮影風景を見ていく前に、他にふたつほど便利な機能があるので紹介しておきたい。
ひとつは「EFメモリー」だ。この機能を有効にすると、ETTL発光で割り出した光量が、マニュアル発光に切り替えてもそのまま引き継がれる。ETTL発光でおおよその光量を割り出し、マニュアル発光に切り替えて固定したり、微調整しながら最終的な光量を決めていくことができる。「EFメモリー」はオンストロボの際、またはセンダーをEL-5にしてワイヤレス発光する際に利用できる。ST-E10使用時は非対応となる。
もうひとつは、ワイヤレス発光の際、レシーバーのモデリングランプをセンダーから点灯させたり、消灯できることだ。わざわざレシーバーまで移動して操作する手間が省ける。これもST-E10使用時は非対応。センダーをEL-5にしてワイヤレス発光する際に利用できる。
SCENE 1:カスタム発光モードで、硬めと柔らかめの2パターンを撮る
ここからは実践編。EL-5の特徴を生かした撮影を紹介していこう。まずは、オンストロボでカスタム発光モードを利用して撮影してみた。ここでは2パターンをC1とC2に登録した。
ひとつは直当てで硬めに光を照射する際のセットとして、EL-5側のC1にマニュアル発光(光量1/8)を、カメラ側のC1にはマニュアルモード(F8、1/200秒、ISO100)を登録。フラッシュ光のみで撮るイメージの組み合わせにした。
もうひとつは天井バウンスを使い、柔らかな光を照射する際のセットとして、EL-5側のC2にETTL発光(調光補正+1)を、カメラ側のC2には絞り優先オート(F1.8、ISO200)を登録。その場の環境光も生かして撮るイメージの組み合わせにした。
毎回同じシチュエーションで撮影することを想定した。それぞれのセットを登録しておくことで、その都度、細かく操作する必要がなくなり、撮影モードを切り替えるだけで、常に同程度の露出値でフラッシュを使った撮影が行えるようになるわけだ。
SCENE 2:ST-E10を使った1灯ライティングで、射し込む太陽光を演出する
ST-E10があると、EL-5が1灯あればワイヤレス発光が気軽に楽しめる。ここではシンプルにモデルに向かって右後方よりEL-5を直当てした。撮影はETTLを使用。コントロールリングに「調光補正/発光量」を登録していたため、そのままコントロールリングを回して光量を微調整しながら撮影が行えた。直感的に光量を変えられるのは非常に便利だ
SCENE 3:ST-E10を使った2灯ライティングで、陰影とスポットライトを演出する
ST-E10を用いたライティングをもうひとつ。ここでは2灯ライティングにした。1灯目は左手前からモデルに向けて照射。EL-5にディフューザー付きのアンブレラホワイトを取り付け、柔らかい光をつくり出している。2灯目はグリッド付きのEL-5を背後の棚に向けて照射し、アクセントにしている。
SCENE 4:センダーにEL-5を使用した、より連動性のあるライティングを実践
今度はセンダーにST-E10ではなくEL-5を使用し、ワイヤレスでの2灯ライティングをしてみた。
カメラに取り付けるセンダーのEL-5は発光しない設定にした。メインライトはアンブレラシルバーを装着したEL-5。これを右正面近くからモデルに照射。さらにモデルの背後、見えない位置にカラーフィルター付きで1灯をセットし、後ろの壁に向けて照射している。
この撮影ではカラーフィルターによる光の広がり方をモデリングランプで確認している。センダーがEL-5の場合、カメラ位置からモデリングランプの切り替えが可能なので、非常に楽だ。とくにこの場所は狭い空間だったため、なおさらこの機能が重宝した。
また、光量は「FEメモリー」を使用して決めている。つまり、ETTL発光である程度の光量を割り出し、その上でマニュアル発光に切り替え、引き継いだ光量に対して微調整している。これも、EL-5をセンダーとして利用するからこそ可能になるワークフローだ。
カラーフィルターを付けると光量の大きさによって色の出方が変わる。この場面では最終的にメインライトの光が少し背後に漏れているため、2灯ライティングのカットのほうが、色が薄くなって見えている。
SCENE 5:センダーにEL-5を使用して、ハイスピードシンクロで撮る
通常フラッシュは、同調速度(EOS R6 Mark Ⅱの場合、メカシャッター時で1/200秒)を超えて使用すると、シャッター幕が写り込んでしまう。これを回避できる機能がハイスピードシンクロだ。この機能を使うと、晴天時の明るい屋外でも、高速シャッターを使用しながら背景をぼかしたフラッシュ発光が可能になる。
ここではEL-5の機動力を見るために屋外に出た。モデルに対し、ハイスピードシンクロでワイヤレス発光してみた。センダーにはEL-5を使用。発光モードをマニュアル発光にし、コントロールリングで光量調整しながら撮影を行った
ハイスピードシンクロを利用しないと、こうした明るい日中では絞りを絞って全体の露出を調整することになる。ここでは絞りをF13まで絞った。背景ボケはそれほど大きくない
SCENE 6:センダーのEL-5も発光させる3灯ライティング
最後にセンダーとしてカメラに取り付けたEL-5を発光させる(センダー発光)3灯ライティングを実践してみた。ここもハイスピードシンクロで撮っていく。
まず、左右後方からEL-5を2灯同じグループに設定し、ワイヤレスで照射。モデルの両側面にハイライトを入れ、独特の立体感を演出した。加えて、カメラに取り付けた1灯から上半身全体の光量を補っていく。
「クイックストロボグループ制御」から、それぞれの光量を調整したのもポイント。この機能は本当に多灯撮影での大きな武器になる。鳥瞰的な視点で光量を判断できる。
また、この撮影も「FEメモリー」を使用。左右後方からの2灯は、ETTL発光でおおよその光量を割り出したのち、マニュアル発光に切り替え、微調整している。センダー発光による正面からの1灯はETTL発光のまま調光補正で微調整しながら撮影した。これは、撮り手(私)が前後に動きながらさまざまな構図で撮影したかったため。ETTL発光を保持することで、モデルとの距離が変化しても常に標準露出を割り出そうとしてくれる。
まとめ
キヤノンはEL-5を“次世代モデル”と形容しているのだが、これはまさしくスピードライトがよりカメラやレンズとシンクロし、新たな表現を可能にするという意味で“次世代モデル”だ。単なる“最新のスピードライト”という枠を超えている。ライトのコントロールがカメラ本体やレンズから容易に展開できるシステムは、純正のスピードライトだかこそできることだ。非常に新鮮な体験だったし、今後の展開に向けても期待が持てる。他のカメラメーカーからそれほど意欲的なストロボが出てきていないことを踏まえると、その本気度を歓迎したいし、評価されるべきことだろう。
デジタルカメラの時代になり、小光量でも十分明るい写真が撮れるようになった。クリップオンタイプのフラッシュの需要も高まっている。スタジオ撮影などでも、そう遠くない将来大型ストロボではなく、こうした小型機材が主流になる時代もやってくるかもしれない。そんな予感がするアイテムだ。
モデル:安島萌(GATHER)
ヘアメイク:Luna Yoshikawa
制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社