特別企画
【角型フィルター】撮影時に明暗を整えておくことでRAW現像の自由度を高める
H&Y 100mm K-Series フィルターホルダーKit Mark Ⅱ
2022年1月24日 07:00
風景写真で人気の高いアイテムのひとつが角型フィルターです。ただし角型フィルターといってもたくさんの種類があるため、どれを購入すれば良いのか迷う方も多いかと思います。
そこで写真家のsaizouさんに、角型フィルターでの撮影を気軽に始められるH&Y「100mm K-Series フィルターホルダーKit Mark Ⅱ」を紹介してもらいました。
記事の後半では、角型フィルターで撮影した作品をさらにブラッシュアップ。Lightroom Classicを使ったRAW現像テクニックも披露いただいています。撮影時に角型フィルターで明暗を整えていることもあり、高度な調整が容易におこなえているのがわかるでしょうか。(編集部)
風景写真はドラマチックな印象を求めて日の出、日の入りなど明暗差の大きいシーンでの撮影が多いが、そのまま撮影するとレタッチでカバーできないことが多い。
そこで活躍するのがハーフNDなどの角型フィルターだ。撮影段階で露出を整えられるため、現像する際の自由度が大きく上がる。
従来のハーフNDは装着が煩わしく、扱いにくいことがネックだったが、H&Yのフィルターホルダーシステムはマグネットフィルターやドロップインフィルターという革新的なシステムで、フィルターの取り付けをスムーズかつ簡単におこなえる。上下に動かすことも簡単なので効き具合を調整するのもスムーズだ。
ハーフNDを使うことで明暗差を小さくし白飛びや黒つぶれを抑えられるし、CPLは反射光をコントロールして鮮やかなコントラストを得られる。
最近ではカメラのダイナミックレンジも広くなり、RAW現像でもある程度の明暗差を抑えることが可能だが、それでも白飛び、黒つぶれする場面は多々ある。フィルターを活用し現地で丁寧に素材を撮影しておくことで、帰ってからの編集作業は格段にやりやすくなるし、イメージを再現するための現像の幅も大きく広がる。
FILTER GUIDE ①……マグネット式で重ね付けが容易 丸型フィルターもドロップイン可能
マグネットで着脱できるフィルターは重ね付けすることも可能。角型フィルターは複数枚で運用することでさまざまなシーンに対応できるが、その分着脱が面倒である。マグネットフィルターなら状況に合わせてさまざまな組み合わせを試すことも簡単だ。
また、丸型のドロップインフィルターも使用でき、角型フィルターを取り付けたまま、着脱できるようになっている。
FILTER GUIDE ②……超広角ズームを使う場合は別売のアダプターリングを装着
レンズに合わせたアダプターリングを使うことで、フィルターねじ切りのないレンズにも装着可能。超広角ズームのNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sにも対応し、表現の幅が広がる。広角端14mmでもわずかなケラレのみで使用でき、H&Yのホルダーのケラレへの強さを感じられた。
アダプターリングはケラレなく使用可能なスリムタイプもあるが、スリムタイプではドロップインシステムが使用できない点に注意が必要だ。
角型フィルター活用例 ①……フィルター&レタッチで波や岩の質感を引き出す
逆光の海辺で、手前は岩場に波が押し寄せ、遠景には光芒の差す空が広がりシチュエーション。岩や波の質感や立体感といったものはシャープや明瞭度を調整するよりも、明るさやコントラストを整える方が演出しやすい。
ここではH&YのリバースGNDを使い全体の露出をそろえておくことで、現像時に破綻なく明暗の調整を行っている。フィルターを使うことで手前の岩は黒つぶれせず、空の光芒も白飛びすることなくメリハリのある仕上がりになった。光芒の部分はマスクを使いさらに細かく明るさを調整している。
ここからさらにLightroom Classicで現像作業をおこなう。
【RAW現像テクニック 1】基本補正で明暗を調整する
露光量を少し上げた後、コントラストを強めに調整して、ハイライトを下げて白レベルを上げると、波の筋が浮かび上がってメリハリが出る。また、コントラストが上がることで、岩の質感も向上して、海辺の風景が立体的に描かれて効果的だ。
【RAW現像テクニック 2】円形グラデーションで光芒を強調する
遠景の光芒がアクセントなので太陽の暖かな光の色を再現したいが、画面全体の色温度を暖色に寄せると波の冷たい印象が損なわれる。そこで、円形グラデーションで光芒を選択して色温度を暖色に寄せて彩度を上げている。コントラストも上げて光の筋も強めに描いている。
角型フィルター活用例②……スポットライト効果で主役を際立たせる
貝殻があったのでメインの被写体として視線が誘導されるように仕上げた。流れが貝殻を囲むような構図をイメージして、0.8秒のスローシャッターで撮影した。空がオーバー気味になるのを抑えるためリバースGNDを装着。貝殻を後に明るく仕上げるためバランサーNDを逆に重ね付けすることで下の部分を若干暗めに。現像でスポットライトが当たっているような雰囲気に仕上げた。
【RAW現像テクニック】円形グラデーションで貝殻を照らす
円形グラデーションで貝殻周辺を選択し、露光量とハイライトを上げて、貝殻周辺が明るく、周囲が焼き込まれているようなイメージを作る。テクスチャとかすみの除去も上げて解像感を高め、貝殻の存在を強く見せた。
制作協力:H&Y Filters Japan