特別企画

OLED搭載15.6インチノートPC「AERO 15S OLED」の実力を試す

ハイスペックなGPUに高速インターフェイス ロケ先での使用感は?

台湾のPCおよび周辺機器ブランド、GIGABYTEは数多くのゲーミングPCをラインナップしている。そのノウハウを活かしたノートPC「AERO 15S OLED」は、画像・映像を扱うシーンでも快適なパフォーマンスを提供してくれた。CPUのみならずGPUの性能は、静止画・動画の編集を快適なものにしてくれるのだ……

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世の中の流れは、PCから離れスマホやタブレットが全盛であるが、趣味にせよ、仕事にせよ写真と関わる以上、PCは必須のアイテムであり、PCがなければ成り立たないのが現在の写真のあり方だ。その中で常に求めるのは速いPCであるが、昨今のPCの能力はデスクトップマシンにおいては充足され、静止画を扱うことにおいて速度に不満を感じるマシンは少なくなってきたことだろう。

すると当然次に求めるのは、そうした性能を外に持ち出したいという願望だ。筆者はほぼすべての撮影にノートPCを持って行くが、データのバックアップに始まり、RAW現像、カラーグレーディング、レタッチ・合成、動画の編集 まで、現場でのPC作業は多岐にわたる。

もちろん、本格的な作業は事務所に戻ってからになるが、現場で行う作業はすべて確認につながる大切な作業なのだ。いうまでもなく、撮影の現場は一度の機会であり、その時間を大切にしなければならない。それゆえ、のちの作業につながるような確認をしたいのだ。

そんな中、GIGABYTE社のノートPC「AERO 15S OLED」を借用する機会を得たので、撮影現場での使い心地をレポートする。

GIGABYTE社のノートPC「AERO 15S OLED」

OLEDがもたらすもの

外観上の特徴は、ディスプレイ周りのベゼルが非常に狭いことだ。それゆえ外形も小さくなり、15.6インチディスプレイのモデルとしては小さめで、リュックタイプのカメラバックでも問題なくカメラと一緒に持ち運ぶことができる。

パネル自体は4K解像のOLED(Organic Light Emitting Diode)である。日本語での呼称は有機EL。有機ELは薄いシート状のデバイスであり、素子そのものが発光することが特徴である。それゆえ、バックライトを必要としないことが液晶パネルとの大きな違いだ。バックライトが必要ないのでディスプレイの厚みを薄くでき、軽量化にもつながる他、省エネルギーと良いことづくめなのだ。

ディスプレイ部の厚みは実測5mm、閉じた状態での全厚みは実測23mmであった。大きめのカメラリュックであれば、問題なく収納できる。

安心の色再現

本機のディスプレイは4K解像度であり、ノートPCとしては広いデスクトップを実現できる。写真を確認する際に重要なのは、dot by dotつまり100%表示で見ることだが、本機の4Kディスプレイでは100%表示であっても広い画角を一度で確認でき重宝する。

パネル自体はサムスン製だが、X-Rite PANTONE の認証を受けており、色再現についても安心できるものだ。PANTONEは様々な色の基準を作ってきた会社であるが、現在はi1で有名な測色機メーカー、X-Rite社の傘下企業である。双方とも色に関する専門の企業と言って差し支えないだろう。

写真・映像業界でデファクトスタンダードとして信頼されているディスプレイはEIZOのColor Edgeシリーズだろう。AERO 15S OLEDと並べて比較してみたのがこの写真だ。

左がColor Edge、中央がAERO 15S OLED、右はiMacである。AERO 15S OLEDはやや彩度が高いもののColor Edgeと色相は同系統であり、安心して色を取り扱えるディスプレイであることがわかる。

高性能GPUが決め手

AERO 15S OLEDは、販売店などではゲーミングPCとしても扱われている。これは本機に高性能なGPUが搭載されているからだ。GPUは「Graphics Processing Unit」の略で、画像の描写を受け持つプロセッサである。3Dグラフィックの描画において、大きな効果があるためハイエンドのゲーム向けPCには高性能なGPUが搭載されるからだ。

GPUの性能はゲームのみならずPhotoshopなどの画像編集アプリケーションや動画編集アプリケーションにおいても描画や動画書き出しの高速化を担っている。例えば、Photoshopの環境設定を確認してみると、本機に搭載されたGPU、GeForce GTX 1660がサポートされていることがわかる。

Photoshopの環境設定でGPUに対応しているかどうかがわかる。

本機は頭脳とも言えるCPUも高速である。6つのコアを持つIntel Core i7 9750Hが採用されている。当然放熱量も大きくなるからか、本機の筐体はアルミ製であり、質感も良いものだ。

また、背面や側面には排熱の為のスリットが多数設けられており、デザイン上の特徴となっている。排熱の為のファンは、ノートPCとしては大型のものが採用されているため、多数のスリットとともに排熱効率がよく、膝上で使っていても不快な熱さとはならなかった。

また、小さなファンを採用するノートPCにありがちな、ファンの高周波音を感じることもなく、この点においても快適なノートPCである。

すべてが高速なインターフェース

インターフェイスはHDMI 2.0×1基、Thunderbolt 3(USB Type-Cコネクタ)が1基、USB 3.1×3基、UHS-II対応SDカードリーダー×1基が採用されている。数が必要十分なのはもちろん、どのインターフェースも高速な規格が採用されており、データのコピーなども快適にこなせる仕様となっている。デジタルカメラにはSDカードを使用するものが多いが、UHS-II対応のカードリーダーにより、高速でデータのバックアップが手軽にできる点は特にありがたい。

ロケ先で使用してみる

上述の特徴を踏まえ、筆者のライフワークである星景撮影の現場で、AERO 15S OLEDを活用してみた。星景写真では、ピントとシャドウのディテールを確認するためにPCは必須であり、常にノートPCを持って行く。カメラのディスプレイでもある程度の確認はできるのだが、その大きさと解像度から、精密に判断することが難しいからだ。

また、映像作品も制作しているので、同時にタイムラプス撮影を行うことも多い。そのため、待ち時間も長くなるのだが、処理の速いAERO 15S OLEDでは待ち時間の間にタイムラプス動画制作の準備もできてしまう。

タイムラプス動画の制作では大量のRAW現像を行う必要がある。この日も200ショットの撮影をまず行い、次のショットの撮影中にRAW現像をしてみた。ニコンD850で撮影し、Adobe Camera RAW PluginでRAW現像を実施。TIFFデータで書き出した。4,500万画素のRAWデータを元解像度のままTIFFデータに書き出す重い作業である。

実測結果は、200ショットの書き出しが25分35秒であり、デスクトップにも比肩する結果となった。RAW現像時の補正は200ショットをすべて選択した状態で行うが、シャープとノイズ軽減の描画にはGPUの性能が影響を与える。200ショットを選択した状態でも、ほぼリアルタイムで描画され快適な補正が行えた。

直射日光下の使い心地

もう一つ活用例として、ドローン空撮の現場で活用してみた。下の現場写真では、直射日光下に本機を置いた。明るい日中では、画像を仔細に確認することは厳しいものであったが、フォルダを開いたり、データをコピーする作業は問題なく行えた。

本来は、日陰で作業するかPCシェードで直射日光を遮るべきである。プロ機に相当するドローンではCinemaDNG形式で撮影を行うのだが、秒30コマの連射をRAWデータで行っていると考えていただきたい。こちらはタイムラプス以上に大量のRAWデータでバックアップと画像処理を行う必要がある。

動画制作のパフォーマンス

ドローンで大量に撮影されたRAWデータから300ショットを選び10秒間の動画を作成した。

手順は、Camera RAW PluginでRAWデータを補正し、そのまま完了する。その後PhotoshopでRAWをレイヤーに読み込むが、その際にCamera RAW Pluginでの補正が適用される。次にPhotoshopでフレームアニメーションにし、4K動画として書き出した。

実測した時間は、300ショットのRAWデータをPhotoshopに読み込むのに、11分50秒。完成したフレームアニメーションを4K動画に書き出す時間は40秒であった(掲載した動画はリサイズをして小さくしている)。

結果は非常に優秀なもので、途中の作業時にもストレスを感じることはなかった。RAWデータを読み込む際と動画を書き出す際に、GPUに負荷がかかるが、ここでもGPUの性能に裏打ちされた結果となった。また、これらの作業とバックアップなど1時間ほどの作業をディスプレイの輝度を最大としたまま行なったが、バッテリー残量からこのように負荷の高い作業でも、3時間程度は行えそうだ。

まとめ

以上、AERO 15S OLEDは信頼できるディスプレイ、画像ワークを迅速に行う高性能なGPU、データの取り込みやバックアップを効率化する高速インターフェースを1台のマシンに集約している。

筆者の仕事は、撮影のみならず、静止画のレタッチや動画編集に及ぶが、AERO 15S OLEDは室内での作業から撮影現場まで、いずれの場合も快適で迅速なパフォーマンスを提供してくれた。現在はデスクトップPCと複数のノートPCを使用しているが、「仕事」を考えても1台のマシンに集約できてしまう可能性を感じるマシンであった。

静止画のみならず、タイムラプスを含む動画制作を考えているユーザーには特にオススメだが、静止画のみを扱うとしても、Photoshopでのフィルター処理の速さは大きなメリットと感じられるはずだ。日常的にRAW現像を行なっているようなアドバンスなアマチュアユーザーにもオススメしたい。もしパフォーマンスのあまり高くないデスクトップPCを使っているなら、AERO 15S OLED 1台に集約し、内から外まで、ハイスペックな画像環境を常に使えることになるからだ。

制作協力:GIGABYTE Technology

茂手木秀行

茂手木秀行(もてぎひでゆき):1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て2010年フリーランス。