特別企画

ソニー用がついに登場!αユーザーの写真家が「Profoto A1X」を試してみた

6つのシーンで実力を探る

Profoto A1X

小型ながら最大76Wsの大光量を誇り、“世界最小のスタジオライト”として多くのフォトグラファーに支持されている「Profoto A1」。その改良版として「Profoto A1X」が発売された。

Profoto A1からProfoto A1Xへの主な進化点は、使用する充電式バッテリーの強化だ。発光回数はフル発光で最大350回から450回になり、リサイクルタイムは1.2秒から1.0秒へと短縮。撮影現場での要求に、より応えた改良といえるだろう。さらに、Airシステムの対応チャンネルが8から20に増加している。

そしてキヤノン用、ニコン用に加えて、Profoto A1Xからはソニー用が新たに用意された。Profoto A1の評判を聞き及んでいたソニーユーザーからすれば、まさに“待望の”新製品だ。

私もソニーユーザーの一人として使ってみたいと常々思っていたのでありがたい限り。そこで今回、ソニーα7R IIIとの組み合わせで、試用してみることにした。

Case 1:スタンダードにオンカメラ&バウンス発光

撮影のため静岡県伊東市内にある老舗の元旅館の建物をお借りし、まずは案内された部屋に入る。

部屋は落ち着いた雰囲気で、時代を感じる。部屋の地明かりは柔らかく自然で、窓からの光がとても優しい。ここで「彼女に襖を開けてもらったら」……とのアイデアが浮かび、部屋の入口でそのシーンを撮影することにした。

落ち着いた室内の雰囲気と、窓からの柔らかい光をそのまま生かすために、部屋全体にストロボの光を回したくない。またパンチの効いた光よりも自然に彼女を照らす柔らかい光のほうが似合うだろうと考え、拡散光であるバウンス光を用いることにした。

幸い襖が白色だったので、それを利用して壁バウンスとし、モデルを照らす程度の光に調整すればいい。窓からの光・薄暗い室内、と明暗のメリハリはあるので、モデル自身に大きなコントラストをつけなくても十分に画のメリハリは出るので、ストロボはオンカメラでいくことにした。

オンカメラでのバウンス撮影をする以上、カメラの位置は動かしたくない。動かしてしまっては、光に角度やバウンスする位置に影響が出てしまうからだ。でもフレーミングに変化をつけたい気持ちもあったので、FE 24-105mm F4 G OSSを選択した。F4の背景ボケが十分に状況説明となり、そのボケの塩梅もいい。

大まかに決定した後、バウンス角度の当たりをつけてシャッターを切る。モデルへの光の当たり方が大きなチェックポイント。周辺光量が落ちたことで、かえってリアリティが醸し出された。特に足元が明るくならないように注意しながら位置をコントロール。明るさの設定はTTLで行った。

窓からの光と同じく柔らかな光がモデルに当たり、背景の雰囲気に馴染んだ画に仕上がった。

α7R III / FE 24-105mm F4 G OSS / 24mm / マニュアル露出(1/60秒・F4) / ISO 200

Case 2:屋外でオフカメラ1灯、いわゆる日中シンクロ

伊東市内は歴史を感じさせる建物が多く、街並みひとつとっても、とてもフォトジェニックだ。屋外での撮影では、ぶらぶらしながら撮影場所を決めることも少なくない。漆喰の塀が歴史を感じる旅館の前で撮影させていただくことにした。

漆喰の塀の連なりと光る葉の美しさを入れながら、でもモデルを浮かび上がらせるような画にしたい、との意図からFE 100mm F2.8 STF GM OSSをチョイス。滑らかで息を呑むような柔らかなボケが特徴のこのレンズ、中望遠による引きつけ効果も相まって、理想的な背景となった。

太陽は画面右側から当たり、その日差しはかなりキツい。シャドウ部となるモデルの顔はアンダーに。かといって露出補正してしまっては、背景の漆喰の塀を含め白飛びしてしまい、折角の背景が台無しになる。いわゆる日中シンクロの出番だ。

モデルの向きも決定しているので、オンカメラで日中シンクロするとモデルの手前の頬(彼女の左頬)が明るくなりすぎてしまう。そこでオフカメラにして、画面左側から彼女に対して正面になる位置にカメラをセッティングした。

無線ストロボコマンダーにはProfoto Connnectを使用した。4月に発売されたシンプルなストロボコマンダーだ。設定モードはオート/マニュアル/電源オフの3種のみ。Profotoアプリでスマートフォンから操作できる。

今回はオートのTTL自動調光を使用。一発で明るさに満足がいった。あとはProfoto A1Xの高さと角度を微調整して、撮影した。

α7R III / FE 100mm F2.8 STF GM OSS / 100mm / マニュアル露出(1/250秒・F5.6) / ISO 100

Case 3:逆光で1灯直射、力強い表現に

日差しはあるものの雲が多く、すっきりと青空が見えない天気だったが、だんだんと雲が取れ始め、青空が顔を出し始めた。

そこで「夏の青空を背景に大胆に入れて撮りたい」と考えて、Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSSをチョイス。ワイド側16mmでダイナミックに背景を取り入れることにした。このレンズはカールツァイスらしい高コントラストでくっきりとした描写が特徴。空の青さやシャープさが際立ち、こうしたシーンにはぴったりだ。

モデルにしゃがんでもらうことで影の中へ。ストロボで明るく照らすことで、青空にも負けずに浮かび上がってくるはずだ。影になっている部分を構図の対角線に置くことで、よりシャープな雰囲気を作る。空には湧き上がるような雲が。パンチの効いた画になりそうだ。

Profoto A1Xは直射で1灯を選択。強く印象を残すためだ。ただし影をつけて立体感を出すために、オフカメラでやや斜めから当てることにした。

明るさはTTL自動調光。モデルの背後の影の出具合を調整する意味で、Profoto A1Xの高さを調整しながら撮影 する。こういうファッションフォト風の光の具合を、TTL自動調光で出してくれるのだからありがたい。

昨今、広角レンズ+ストロボライティングでのポートレート撮影が流行りだが、“つかみ”としての印象強い画を撮影するには、このレンズとProfoto A1Xはとてもいいコンビだ。

α7R III / Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS / 16mm / マニュアル露出(1/250秒・F9.0) / ISO 100

Case 4:グリッドでアクセントライトを入れる

老舗旅館の大広間にて。

ふすまの配置を含め、奥までずっと続く奥行きはそのままの光で十分に写し出せるので、誇張のない標準レンズでモデルを観察。座ってもらってからモデルとは距離を取り、奥へと続く大広間を十分に取り込む構図でカメラを構えた。

レンズはSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA。開放F値こそF1.8と控えめだが、とてもコンパクトでα9・7系のボディにマッチする。機動性高い標準レンズとして多くのユーザーの“単焦点・標準域”の撮影を支えている。

メイン光は画面左側からの自然光。その光で十分撮影はできるのだが、インパクトに欠ける。そこでアクセントライトを入れることにした。真上には天井から時代を感じる照明がある。その照明に照らされているかのような演出で光を差し込ませれば自然だ。

Profoto A1Xを画面右側、モデルの横からやや奥になる位置に配置。照明に照らされている感じを出したいので、光の範囲を狭くすべく、スポットライトに似せるようにする。

スポットライトといえば、使用するアクセサリーはグリッド。Profoto A1Xには専用のグリッドキットが用意され、光の拡散角度を10度または20度に狭める2種類から選べる。今回はそのうち20度のグリッドを使い、モデルの左肩口にアクセントライトを入れた。

発光部前面にグリッドを取り付けた状態のProfoto A1X。

モデル自身に陰影のメリハリがつき、肩のラインライトのおかげでモデルが浮かび上がってきた。画の中に「ちょっと光をプラスしたい!」というシーンは本当に多い。Profoto A1Xは手軽にアクセントライトを作り出せるので、表現の完成度を高めてくれる。

α7R III / Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA / 55mm / マニュアル露出(1/100秒・F2.2) / ISO 100

Case 5:木の葉で背景に玉ボケをつくる

せっかくのポートレート撮影だから、バストアップのストレートなカットも欲しくなり、公園へ。あいにく太陽は雲に隠れ、暗くなっていた。「夏の日差しを感じさせるキラキラしたポートレートが撮りたい!」と皆の意見が一致し、キラキラをProfoto A1Xで作ることにした。

バストアップでストレート……とくれば、FE 85mm F1.4 GMが活躍する。絞り開放からシャープ、そして大きく美しいボケが、被写体を綺麗に浮かび上がらせてくれる。高性能な瞳AFのおかげで、絞り開放でガンガン撮影できるので、ますます絞り開放の美しいボケに魅了されるユーザーは増えていくだろう。

背景に玉ボケを作るために、光が強く反射する葉を持つ木を見つけ、ストロボが太陽の日差しのようになるよう、高い位置に逆光気味に配置。逆光時の木々の葉の反射は、よく玉ボケになる。それと同じ理屈だ。

次に被写体への光。できればメイン光となるストロボに加えて、日差しを思わせるアクセントライトの2灯が欲しいところだが、残念ながらここでは残り1灯しかない。多灯ライティングは表現の幅を広げてくれるので、やはり3灯・4灯と欲しくなる。

今回は2灯での挑戦ということで、モデルの背後に1灯を配置して髪を光らせるアクセントライトとし、なおかつ溢れた光をレフ板で拾い、モデルに当てることにした。背景用のストロボとモデルのアクセントライト用のストロボの光量をそれぞれ調整して撮影。眩しい夏に日差しキラキラのカットに仕上がった。

α7R III / FE 85mm F1.4 GM / 85mm / マニュアル露出(1/250秒・F1.4) / ISO 100

Case 6:

老舗旅館の廊下はとても品が良く、しっとりとした雰囲気。歴史を感じる古さに高級感が漂う。ここで少しオトナの落ち着いたシーンを撮影することにした。

やや広がりを感じさせるように、大口径広角レンズのDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAを使うことにした。奥行きはあるが幅は狭いので、窓や壁を多く取り込むことで広さを作る。背景となる壁や窓から距離が近くなるので、大口径レンズでボケのコントロールに余裕をもたせた方が作画しやすい。

Profoto A1Xの配置だが、アクセントライトに使うことにした。画面左にある窓は中庭に面しているため、大きさの割に光が少ない。また木のぬくもりを大事にしている旅館のため、全体的に重たくなる。そこでProfoto A1Xを使って明暗のコントラストをつけることで、画にメリハリをつけることにしたのだ。

まずは画面右にある障子窓を照らすために、室内から廊下に向けて1灯を配置。もう1灯は、画面右手前の壁を照らし、同時にモデルの髪や頬に当てた。この壁は影がかかっているため、本来はとても暗い。ここに光が当たることでメリハリがつくし、障子窓の明るさも自然に見える。またモデルにもアクセントライトが当たるとメリハリがつき、それが室内から漏れた光のように自然に見える。画面左にレフ板を置き、光を拾った。窓からの光の層に馴染んでいると思う。

Profoto Connectを使ってのオフカメラだが、障子向こうや物陰に配置したのProfoto A1Xのどちらも問題なく発光してくれた。

α7R III / Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA / 35mm / マニュアル露出(1/13秒・F1.4) / ISO 200

撮影を終えて

今回の撮影では2灯ともに予備バッテリーを使うことはなかった。バッテリーの持ちは十分満足できる。またリサイクルタイムについてもまったく不満なく、テンポ良く撮影できた。メーカーによると一般的なクリップオンストロボより4倍程度速いというが、撮影時においてその恩恵は計り知れない。

操作系もとてもシンプルで、初めて手にしてもほぼ迷うことなく操作できるだろう。モデリングライトが搭載されているので、事前にライティングの状態を確認できるのもありがたい。

Profoto Connectによる無線通信も安定している。屋外での発光は問題なく、屋内・扉向こうなど陰になっている場所でもしっかりと発光する。この撮影中、「発光しない」を理由に配置を変更したシーンはなかった。たいがいの現場で困ることはないだろう。光の質も申し分なく、ヘッドが円形なのも、自然な光の質に役立ってるのかもしれない。

小型でありながらこれだけの大光量に長時間に耐えうるバッテリー、それとマグネット式で脱着がとても楽な使い勝手のいいアクセサリー類。システムをコンパクトにしながらも幅広く実践的な撮影に対応するソニーαに合っていると感じた。私なら2灯のProfoto A1XにProfoto Connectの組み合わせからスタートする。今回はロケ撮影だったが、スタジオでも大いに活躍してくれるはずだ。

提供:プロフォト株式会社
撮影協力:伊東観光協会
モデル:斉藤明日美

萩原和幸

(はぎわらかずゆき)1969年静岡出身。静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。写真家・故今井友一氏師事後、独立。ポートレートを中心に、広告・雑誌等で活動中。(公社)日本写真家協会会員。静岡デザイン専門学校講師。