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SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG DN OS|S

ミラーレス専用設計でコンパクトに生まれ変わったSportsライン第1弾

α7R IVに装着した状態

シグマより35mm判フルサイズミラーレスカメラ専用設計として生まれ変わったSportsラインの超望遠ズームレンズ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS」が発表されました。8月27日の発売に先立ち、Eマウント用の実機を手にすることができましたので、さっそくα7R IVに装着して全体に小型・軽量化されたサイズ感とは如何程のものなのかをお伝えしていきたいと思います。

ミラーレス専用Sportsライン第1弾

本レンズは35mm判フルサイズミラーレスカメラ専用に設計されたSportsラインの第1弾で、ソニーEおよびライカLの2種類のマウントでの展開となっています。

光学系は15群25枚(FLD4枚、SLD2枚を含む)のレンズ構成を採用。また光学式の手ブレ補正機構も内蔵しています(効果段数は600mm時にシャッタースピード4段分とのことです)。一眼レフカメラ向けとしてラインアップしている同スペックSportsライン(16群24枚)とは異なる設計となっています。

レンズ構成図(「新製品プレゼンテーション 8月4日」YouTubeより)

また、鏡筒パーツの精度についてもこだわっているとのことで、軽量化と剛性の両立など追求。近年同社が推し進めている“ビルドクオリティ”が追求されたデザインとなっていることが伝わってきます。最大径および三脚座を含めた質量、フィルター径などについても一眼レフ機向けSportsラインから、小型・軽量化されている点も特徴となっています。

特に加工精度にこだわったとの説明があった“レンズの骨格”としての役割を担っているという鏡筒パーツ。このパーツを高い精度でつくることができているからこそ、量産化が可能となり、また良好な動作が得られるているとのこと(「新製品プレゼンテーション 8月4日」YouTubeより)

デザイン面で見ると、一眼レフ機向けSportsラインの意匠に似通った印象をいだきますが、先端側に向けてシェイプされたズームリングはより幅がひろくなり、逆にフォーカスリングは幅が狭められていることがわかります。また、距離目盛窓も廃止されています。

150-600mm F5-6.3 DG DN OS|Sports。先端側からズームリング、カスタムモードスイッチ・AFLボタン(3カ所)・ズームロック/トルク量調節スイッチ、フォーカスリング、三脚座、フォーカスモード切換えスイッチ・フォーカスリミッタースイッチ・OSスイッチ・カスタムモードスイッチがならびます
参考:SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Sports

Lマウント用の各数値を見ていくと、最大径×全長が約109.4×263.6mm、三脚座込みの質量は約2,100g、フィルター径は95mmとなっています。一眼レフ機向けが121×290.2mm、2,860g、フィルター径105mmとなっていることを考えると、だいぶコンパクト化されていることがわかります。

フィルター径は95mm
Sportsラインであることを示す円型エンブレムが他シリーズ同様控えめに添えられています
三脚座リングにはストラップ環が2カ所設けられています

スイッチ類

AF/MF切り替えやフォーカスリミッター、光学式手ブレ補正機構のモード切り替え、カスタムモードの切り替えの各スイッチ類は、おなじみといっていい内容であるのに対して、ズームトルクスイッチ(ズームロックスイッチ部に設けられている「L・T・S」のスイッチ部分)およびその近傍に設けられているカスタムモードスイッチやAFLボタン(鏡筒脇に3カ所ある)が新規要素となっています。

OSスイッチはモード1が一般的な撮影向けの設定で、モード2は水平、垂直、斜めのいずれかに流し撮りする際に効果的とのこと。カスタムモードスイッチについては、C1がライブビュー撮影でレンズ内手ブレ補正機構の効果がわかるモードで、C2はライブビュー撮影でより自然な構図での表示が得られるとのことです。

ズームトルクスイッチの各スイッチですが、Lは文字どおりズームロックとして機能します。TおよびSに切り替えると、ズームリングのトルク量が変化。Tは少し重みが加えられており、Sではスムーズなズーム操作がおこなえました。Tはタイト、Sはスムーズを意味しているとのことで、YouTubeを通じて8月4日にライブ配信された製品発表会では、「タイト」は自重で鏡筒が動いてしまうことがないため、上向きのアングルなどでも活用できるポジションだとの説明がありました。

鏡筒は焦点距離に応じて全長が変化するタイプです。また、ズーミングはリングの回転操作に加えて、先端部を掴んでの直進操作にも対応しています(デュアルアクションズーム)。

三脚座リングは、90度ごとにクリック感のあるつくりとなっており、360度任意の位置で固定が可能。三脚座はアルカスイス互換形状の「TS-121」が備えつけられています。フット部は別売の「TS-81」への換装も可能です。

レンズ外観全体像

レンズ全体をぐるっと確認していきました。各スイッチ類の位置やストラップ環の位置などの参考にしていただければ幸いです。

ズーム操作による繰り出し量の変化

フードを装着した状態で、各焦点距離ごとの繰り出し量の変化を見ていきました。およそ300mmまでは重心バランスがとれていて、400mmを超えたあたりから、フロント側に重心が移っていく感触でした。

150mm
180mm
200mm
250mm
300mm
400mm
500mm
600mm

フード・キャリングケース

レンズフード「LH1034-01」はかぶせ式が採用されています(固定はネジ込み)。先端側がラバーで保護されているため、フードを下にして直接地面に置いても傷がつきにくい仕様となっています。ズームトルクスイッチをTに入れた状態で真上に向けたり、真下に向けたりしてみましたが、自然に鏡筒が伸びてしまうということはありませんでした。が、こうした置き方をする際にはロックスイッチを入れておいたほうが安全でしょう。

フロントキャップ(LCF-95 III)は同梱されますが、フードを逆付にした状態で装着できるかぶせ式キャップ(LC-747E)も用意されているのは嬉しいポイントです。移動を繰り返しながら撮影を続けていくシーンでも保護面で助けとなってくれることが期待できます。

また製品にはストラップが備えつけられたソフトタイプのキャリングケースが付属します。側面にはベルトが備わっているため、キャリーケース等のハンドル部に固定することもできそうです。

フルサイズ用として3本目となる150-600mm F5-6.3

最後に、同社における150-600mm F5-6.3の整理をしてみたいと思います。

同社の超望遠ズームレンズ「150-600mm F5-6.3」は本レンズを含め、3本がラインアップされることになりました。一眼レフカメラ用のモデルは2本あり、堅牢性や信頼性を重視したSportsラインと、携帯性などを重視したContemporaryの2ラインで展開されています。各レンズは光学系と鏡筒で、それぞれつくり分けがなされています。発売は両レンズともに2014年のことでした。それぞれキヤノンEF、ニコンF、シグマSAマウント用がラインアップされています。

キヤノンEF、ニコンF用の同スペックレンズはタムロンからも発売されています。「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD」(Model A011)が2013年に発売。同レンズの第2世代目「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2」(Model A022)は2016年に発売されました。

ちなみにキヤノンの35mm判フルサイズ一眼レフ機「EOS 5D Mark IV」の発売は2012年で、同じくニコンのフルサイズ機「D850」は2017年に発売されていました。両社から35mm判フルサイズミラーレスカメラが発売されたのは2018年のこと。同年は「フルサイズ戦国時代」の幕開けとして、カメラ誌はもちろん経済誌もソニー、キヤノン、ニコンの各社の覇権争いを様々な視点からとりあげました。また同年はフォトキナにおいてライカ・パナソニック・シグマの3社からなるLマウントアライアンスの締結も宣言され、ソニーを除き各社におけるフルサイズ機のミラーレス化へ向けた動きが本格化したのが2018年という年でした。

そしてシグマからLマウントを採用した35mm判フルサイズミラーレス機「SIGMA fp」が2019年に発売。その後、35mm F1.2 DG DN|Artや24-70mm F2.8 DG DN|Artなど、Artラインが矢継ぎ早に登場。2020年末にはフルサイズミラーレス向けの単焦点レンズ3本(24mm F3.5、35mm F2、65mm F2)を発表。SIGMA fpとともに登場した45mm F2.8を加えてIシリーズとして展開するなど、フルサイズミラーレス機向けのレンズラインアップが急速に拡充されてきています。が、製品ラインアップはArtラインとContemporaryの2ラインのみで、ミラーレス機向けSportsラインに属する製品はこれまでありませんでした。その意味で、本レンズの登場により35mm判フルサイズミラーレス機向けレンズラインアップの顔ぶれが整いはじめたということにもなりそうです。

Eマウント用の超望遠ズームの選択肢は「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」(SEL200600G)がありますが、描写面を含め、AF速度や、α1と組み合わせた際に同機の最大連写コマ数を発揮できるのか、などといった点が気になるところとなってきそうです。

対してLマウント用は、1.4倍および2倍のテレコンバーターの装着にも対応しています。最大で1,200mm相当の画角が得られるということは、Lマウント機で鳥や航空機を狙いたいと考えているユーザーにとっても大きな魅力となりそうです。

Tシャツ

8月4日にYouTubeを通じてライブ配信された製品発表会では、“お約束”となったTシャツを身につけた同社代表取締役社長の山木和人氏が登壇。スタート時点からのネタバレというコメントがつく中で製品の詳細が語られました。詳かなスペックや特徴は、以下ニュースもぜひあわせてご覧いただければと思います。

さて、そのTシャツですが、価格に関する案内はありませんでしたが、発売はレンズと同じく8月27日になるとのアナウンスがありました。同社オンラインショップでの取り扱いで、数量は限定になるとのことです。

レンズ構成図Tシャツを身につけた山木和人氏(株式会社シグマ代表取締役社長)。「新製品プレゼンテーション 8月4日」(YouTube)より

本誌:宮澤孝周