特別企画
EOS Rシステムで使うSIGMAレンズ【動物園編】
150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary / 24-105mm F4 DG OS HSM|Art / 135mm F1.8 DG HSM|Art
2021年7月31日 12:00
「EOS R5」「EOS R6」が昨年発売され、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラが改めて注目されました。
同時に、キヤノン純正のRFレンズにも魅力的な製品が揃ってきました。ただ、隆盛を誇った一眼レフEOS(EFマウントレンズ)のラインナップにはまだ達していないのも確かです。
この連載は、EOS RシリーズのボディにSIGMAのEFマウントレンズを装着して、その画質や作品表現について確かめるものです。定評あるSIGMAレンズが、最新のEOS Rシステムでどのような魅力を見せてくれるのでしょうか。
今回は「動物園編」として、大浦タケシさんに撮影と解説をお願いしました。
宮崎県都城市生まれ。雑誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後専門誌および一般誌、Web媒体、セミナーなど多方面で活動を行う。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。一般社団法人日本自然科学写真協会(SSP)会員。https://www.takeshiohura.jp
前回のスナップ編はこちらです。
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今回登場するのは 「150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」「24-105mm F4 DG OS HSM|Art」「135mm F1.8 DG HSM|Art」 の3本です。
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動物園での撮影に欠かせない交換レンズ……150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary
私の動物園での撮影スタイルは、焦点距離の長いレンズを使い被写体である動物を画面の中に大きく引き寄せることが多い。背景をシンプルに、そしてなるべく被写体をしっかりと見せたい、という考えがあるからだ。そのため超望遠域までカバーする「150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」はまさに自分の撮影スタイルにぴったりの交換レンズ。特に今回伺った多摩動物公園のように広大な敷地を持ち、被写体との距離が遠いこともある動物園では頃合いがよい。
また、あくまでも得られる焦点距離やズーム比で見た場合となるが、比較的軽量に仕上がっているのも嬉しいところ。被写体となる動物が思うような様子でない場合、次から次へと被写体を変え場所を移動していくようにしているが(個人的には密かに「Run & Gun」と言っている)、レンズの重さが負担になるようなことは少ない。三脚座にストラップが装着できバランスよく、肩にかけられるのもそのようなとき便利に思える部分だ。
しかも強力な手ブレ補正OS(Optical Stabilizer)機構を内蔵しており、手持ち撮影でも躊躇う必要がないのも本レンズの特徴。動物園は子どもたちや引率する親など一般の入場者が多く、三脚・一脚の使用は躊躇われることも多いため、強力な手ブレ補正機構の搭載は心強い。個人的には動物園の動物を撮影するために生まれた交換レンズと言っても過言ではないように思えるほどである。
今回使用したカメラはミラーレスの「EOS R5」。キヤノン純正の「マウントアダプター EF-EOS R」を介して本レンズを装着している。
AF動作はワンショットAF(シングルAF)とサーボAF(コンティニュアスAF)を被写体の動きなどから使い分けているが、いずれもAFスピードや被写体へのピントの喰い付きはデジタル一眼レフで使用したときと何ら変わらず、ストレスフリーだ。
さらに、本レンズに限ったわけではないが、ミラーレスでの撮影の場合、フォーカスエリアがファインダー画面のより広い範囲をカバーするためアングルの自由度は飛躍的に向上。露出のシミュレートもできるため、思い通りの明るさに追い込むことも容易である。シャッタータイムラグやEVFの映像遅延もほぼ解消された現在、一眼レフ用レンズもミラーレスで使わない理由はないように思える。
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露出を切り詰め被写体を浮き立たせる。このような絵は解像感が高いほど、より美しく仕上がる。(フラミンゴ)
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画面にグッと引き寄せて、まるで目の前にいるかのように皮膚の質感をしっかりと写し込んでみた。(アフリカゾウ)
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サーボAF(コンティニュアスAF)で動く被写体を狙う。正確に被写体を捕捉し、シャープな写真が得られた。(ユキヒョウ)
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上から流れ落ちる水で涼をとるサイにカメラを向けてみた。皮膚の質感、飛び散る水滴など緻密に表現する。(インドサイ)
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動物園でのスナップ撮影に適した交換レンズ……24-105mm F4 DG OS HSM|Art
動物園のなかを歩き回っていると自分の作品撮りのほかに記録しておきたいようなシーンに出会すことも少なくない。そのようなときに活躍するのが標準ズーム「24-105mm F4 DG OS HSM|Art」である。動物の周りの様子も画面に入れたり、先の「150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporary」では画角が狭すぎるようなときにも活躍してくれる。
24-70mm F2.8通しの標準ズームでも悪くはないのだが、少し重たくなってしまうのと、テレ端の違いは思いの外侮れないからである。
特に、あと一歩被写体に寄りたいと思ったときなど、絶大な効果を発揮する。さらにこのレンズも手ブレ補正OS(Optical Stabilizer)機構を内蔵しており頼もしく思える。
本レンズについてもAFの振る舞いなどEOS R5で使用した時の不満は皆無。ワンショットAF、サーボAFとも快適に撮影が楽しめる。EOS R5にはイヌやネコ、トリなどに対応する瞳AFも搭載するが、それに対応するのも嬉しい。もちろん写りはズーム全域で隙がなく、キレのよい写りはSIGMAらしいところだ。
本レンズは、150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporaryで攻めた動物の写真を撮るときはサブの交換レンズとして、家族サービスなどで緩く動物園を訪れるときは使い勝手のよいメインの交換レンズとなるだろう。
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水槽のガラス越しに撮影した。いい感じに被写体に光が当たっており、思わずカメラを向けたカット。(マレーバク)
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檻越しに凝視される。このような条件では檻は消しようがないが、目力のおかげでさほど気にならない?(ユキヒョウ)
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浅い被写界深度で被写体を浮き立たせたい交換レンズ……135mm F1.8 DG HSM|Art
今回は単焦点望遠レンズの「135mm F1.8 DG HSM|Art」での撮影も試みた。名称のとおり焦点距離135mmながら開放絞りをF1.8とする大口径の望遠レンズである。その大きさは焦点距離を考えると巨大だ。前述の「24-105mm F4 DG OS HSM|Art」のテレ端時よりもさらに狭い画角で撮影したいときに用いた。
大口径であること以外に最短撮影距離87.5cmを実現しているのも本レンズの魅力。これは撮影倍率にして1:5で、小さな被写体にぐっと寄って大きく写すことができる。
AFのスピードおよび精度とも申し分ない。フォーカスエリアと重なった被写体に速やかに、そして確実にピントが合う。動きの速い被写体の場合、時としてフレームからあっという間にいなくなるが、そのような時も失敗の少ないレンズである。手ブレ補正機構は備えていないが、カメラ側の手ブレ補正機構が作動するので、それも撮影していて安心できるところだ。
もちろん写りは他のレンズ同様不足を一切感じさせないもので、合焦面の解像感、アウトフォーカスとなったところの柔らかくナチュラルなボケ味、高いコントラストなど文句のつけどころがない。
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EOS R5の瞳AFで撮影。クチバシから瞳にかけ黒く見切りが悪いが、しっかりと瞳を認識しピントを合わせてくれた。(クロヅラヘラサギ)
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最短撮影距離の近くまで被写体に寄って撮影。ピントの合った部分の解像感は圧倒的だ。(オオゴマダラ)
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まとめ
SIGMAの交換レンズの魅力は、純正レンズに対しリーズナブルでありながら、ほとんど変わらない品質の写りが得られることだと私個人思っている。今回の結果はいずれもそれを実証するものであった。
しかも本来一眼レフ用の交換レンズにも関わらず、マウントアダプターを介してミラーレスに装着した場合もAFスピードなど純正のミラーレス専用レンズとほとんど変わらないのは驚きに値する。動物に対する瞳AFもしっかりと機能しており、一眼レフ用の交換レンズであることを忘れるほどだ。
同社には魅力的な交換レンズがほかにも色々とラインナップされている。今回は動物園の生き物たちを被写体に撮影したが、同社の他のレンズを使いポートレートやスナップなどにも挑戦する機会をつくってみたい。
制作協力:株式会社シグマ
撮影協力:多摩動物公園