オールドデジカメの凱旋
パナソニックLUMIX DMC-G1(2008年)
いま、マイクロフォーサーズ初号機を振り返る
Reported by 吉森信哉(2013/12/4 08:00)
この連載は前回が「コニカミノルタDiMAGE A200」(2004年)で、その前が「リコーCaplio GX100」(2007年)と、2カ月ばかりコンパクトデジカメが続いた。また、今年に入って取り上げたカメラを見ると“コンパクト4:一眼レフ1”という割合。だから「今回はレンズ交換式の一眼レフを選びたいナァ」とか思いながら、行きつけの中古カメラ店に向かった。
そして店内の商品をじっくりチェックして、一眼レフではないが、Aランクで価格が1万2,600円と手頃な「パナソニックLUMIX DMC-G1」のボディを見つけた。元箱はないものの付属品は揃っている。
ご存じのとおり、このカメラは“マイクロフォーサーズ規格準拠の第一号モデル”である。まあ、個人的にも「マイクロフォーサーズって割と新しい規格だよね」という印象があるけど、気がつけばこの第一号モデル「LUMIX DMC-G1」が登場して早5年。その間、オリンパス製品も含めると、かなりの数のマイクロフォーサーズ機が登場してるよね。……ということで、もうイイだろう、この規格のカメラを「オールドデジカメの凱旋」で取り上げても(笑)。
交換レンズに関しては、ボディと同じパナソニック製の電動式標準ズームレンズ「LUMIX G X VARIO PZ 14-42mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.」が1万7,000円台で数本並んでいたが、注目したボディよりも高いレンズというのも何だか面白くない(笑)。ということで、Aランクで8,400円の値段が付いていたオリンパスの標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R(シルバー)」を選択。G1ボディと14-42mm標準ズームで計2万1,000円也。まあ、このあたりのレンズならイイ組み合わせになると思うよ。
M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II Rは、35mm判換算28-84mm相当。非球面レンズ3枚を含む7群8枚構成で、AF方式はハイスピードイメージャAF(MSC)。最短撮影距離は0.25m〜0.3m。最大撮影倍率は0.19倍(35mm換算0.38倍)。フィルター径は37mm。最大径×長さは56.5mm×50mm。重さは113g……といった仕様である。
2008年8月5日、経団連のビルで開催されたフォーサーズ新規格(マイクロフォーサーズ)の発表会に、ボクは取材で訪れていた。従来のフォーサーズ規格の撮像サイズを維持しながら、フランジバックを約50%も短縮し(約20mmに)、レンズマウント外径も縮小。また、マウントの電気接点の数を9点から11点に増加。こういった変更&進化により、ボディやレンズの小型軽量化が可能になり、動画撮影機能の搭載なども視野に入ってくるらしい、というものだった。
でも、その時には具体的な製品(カメラ)はアナウンスされなかたので、「新規格って言われても、何だかピンとこないよなぁ」と思ったのを覚えている。……だが、この発表会の約1カ月後に、初のマイクロフォーサーズ機としてDMC-G1が発表された。
まずは、LUMIX DMC-G1の主なスペック紹介を。撮像素子は有効1,210万画素の4/3型Live MOSセンサー。超音波式のゴミ取り機能も搭載。露出モードは、P/A/S/Mの基本4モードに加えて、ダイヤル上にカメラまかせのインテリジェントオートモード、登録しておいた設定で撮影するカスタムモード、5種類のシーンモード、5種類のアドバンスシーンモード(人物、風景、スポーツ、クローズアップ、夜景&人物。それぞれ複数バリエーションあり)、効果を確認しながら色や明るさが調整できるマイカラーモード……など多彩。
シャッター速度は60秒~1/4,000秒、B(バルブ 最長約4分)。感度はISO100-3200(1/3EVステップに変更可能)。ファインダーは視野率100%の約1.4倍(35mm判カメラ換算約0.7倍)・約144万ドット相当のEVF。液晶モニターは3型・約46万ドットのTFT液晶で、フリーアングル方式を採用している。記録媒体はSDHCメモリーカードに対応し、RAWとJPEGの同時記録も可能。動画機能は非搭載だ。ボディの大きさと重さは、約124×83.6×45.2mm、約385g(本体のみ)。
このパナソニックLUMIX DMC-G1で思い出されるのが、このカメラに合わせて結成された、女優の樋口可南子氏を筆頭にした「女流一眼隊」。あのネーミングは衝撃的だった(笑)。……その印象が強かったせいかもしれないが、勝手に「マイクロフォーサーズは自分の嗜好とは違うカメラかもね」という印象を持ったりした。何となくだけど。
なお、その当時(2008年の秋頃)ボクが主に使っていたカメラは、キヤノンEOS 5DとEOS 40D、ニコンD300などである。ちなみに、ボクがマイクロフォーサーズ機を初めて購入したのは、本流(?)のGシリーズではなく、2010年12月に発売されたLUMIX DMC-GF2のシェルホワイトであった。……って、こっちの方がよっぽど女流っぽいわ!(笑)
今、このDMC-G1を手にして感じるのは、最近の本流Gシリーズ(G5やG6など)のテイストとそう変わらないナァ、ということ。基本的な仕組みやスタイルは同じだからね。内蔵ファインダーを省いて小型軽量化を推し進め、シンプルで上質なデザインを追求したGFシリーズのような“女流っぽさ”は感じないんだよナァ~。まあ、現在ではいろんなメーカーから小振りで可愛らしい(しかもカラーバリエーションも派手めな)ミラーレスカメラが発売されていて、それをボクのような中年男性が使う事も珍しくないからねぇ。
ご存じのとおり、フォーサーズとマイクロフォーサーズの撮像素子(4/3型)は、APS-Cサイズよりも撮像面積が狭い。そして、多くのフォーサーズ機は、光学ファインダーの視野の狭さ(小ささ)が気になるポイントだった。……しかし、マイクロフォーサーズの第一号モデル「LUMIX DMC-G1」の電子ビューファインダーは予想以上に視野が広くて、しかも驚くほど高精細な表示品質が得られる。そう、従来の“電子ビューファインダー搭載のコンパクトデジカメ”とは比べ物にならないくらいに……。今回、あらためてそう感じた。
また、ファインダー接眼部に「アイセンサー」を装備しているので、ファインダーに顔を近づけるとファインダー内表示になり、ファインダーから顔を離すと液晶モニター表示に切り換わる(まあ、コンパクトデジカメの中にもその機能を搭載するモデルはあったけど)。そういった使い勝手の良さが実感でき、「最初のマイクロフォーサーズ機、あなどりがたし!」という印象を持ったね。
もちろん、現行モデルと比べると、物足りなさや「まだ、こなれてないな」と感じる部分もいくつかある。たとえば、グリップ部の前ダイヤルの位置や角度がいまいちで自然に操作ができないとか、連写速度が「約3コマ/秒」と遅めなのでオートブラケット撮影が“まったり”してしまうとか、今回一緒に購入したM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II Rのようなレンズだと、画像の自動回転表示が行なわれないとか(EXIFには方向が記録されていた)。あと、オートフォーカスモードが1点の時に移動させたAFエリアを「DISPLAYボタン」を押して中央に戻す機能がないのも結構不便なんだよねぇ……。
このDMC-G1の発売以降、マイクロフォーサーズ規格のLUMIXは、動画撮影機能に力を入れたGHシリーズ、ファインダーを省略して小型化したGFシリーズ、高品位ボディと高機能をウリにするGXシリーズと、その製品バリエーションを拡充していく。そういう経緯もあり、正直なところ現在の“Gシリーズの存在感”は少々微妙。動画も含め本格的な撮影ならGHシリーズだろうし、快適な操作性と高機能を両立したいならGXシリーズが適している。また、女性を含めて軽快に撮影を楽しみたいならGFシリーズだろう。
……だが、こういうバリエーション展開の基礎になったGシリーズ第一号機の存在感(存在意義)は大きい。それは単に“マイクロフォーサーズ規格の第一号機”という史実的な意味合いだけでなく、実際に手にして使ってみると、現在に続くGシリーズの魅力を垣間見ることができるからだ。高速化実現を謳ったコントラストAFは、今でも多くの撮影ではあまり不満は感じない。また、アイセンサーを搭載した大きくて高精細なEVFの快適さや、フリーアングル式モニターによるカメラポジションやアングルの自由度の拡大など、現在でも十分通用する魅力を備えている……そう感じられた。