新製品レビュー
Adobe Lightroom CC
GPU対応、フィルターブラシ、顔認識…定番写真ソフトがさらに進化
Reported by 北村智史(2015/4/22 12:23)
Lightroomは、Photoshopでおなじみのアドビシステムズ社が開発した統合写真ソフトで、写真の取り込みから閲覧、管理、画質調整、プリント、Webでの公開といった、撮影後の作業全般を1本でカバーできるのが特徴だ。先ごろ、販売が終了したApple社のApertureもにたようなコンセプトの製品だったが、Lightroomは、そのApertureからの乗り換えのための移行ツールも備えている。
そのLightroomが4月22日、最新版にバージョンアップした。
販売形態は、買い取り型のパッケージ版と、年間契約(月払い)のサブスクリプション版が用意されている。
「Lightroom 6」と呼ばれるパッケージ版は1万6,000円、旧バージョンからのアップグレード版が9,600円。
「Lightroom CC」と呼ばれるサブスクリプション版は、月額980円で「Lightroom CC」と「Photoshop CC」が利用できる「Creative Cloud フォトグラフィプラン」などが選べる。
ちなみにCreative CloudでLightroomを購読済みの場合、自動的にアップデートの通知が来ているはずだ。
※記事中の価格表記はすべて税別です。
追加された新機能
GPU対応
基本的な機能やインターフェースについては従来バージョンと同じだが、新バージョンではGPU(グラフィック プロセッシング ユニット)も使用するように変更された。GPUを使用するかどうかについては、「環境設定」の「パフォーマンス」タブでオンオフが切り替えられる(初期設定ではオンになっている)。
けしてパワフルとはいえない筆者の環境ではあまり違いは感じられなかったが(色数の多い画像でホワイトバランスのスライダーを端から端まで振るようなことをやると、オンにしたほうが色の変化がスムーズに行われるのが分かった)、ハイパワーなGPUを搭載したパソコンを使っているのであれば、現像時などのパフォーマンス向上が体感できるだろう。
顔認識機能
画像の閲覧、管理を受け持つライブラリモジュールに、新しく顔認識機能が追加された。従来なら、撮影した画像に、自分でキーワードを付けるなどの作業が必要だったが、新バージョンの顔認識機能は、そういう手間を大幅に軽減してくれる。ハードディスクのどこかに埋もれてしまった家族や友人の写真を探し出すのに威力を発揮するだろう。
使い方は簡単で、ライブラリモジュールでツールバーに表示されている「人物」アイコンをクリックするだけ。カタログに保存されている写真の中から、Lightroomが自動的に人物の顔を検出して提示してくれる。最初の段階では、すべて「名前のない人物」と表示されるが、名前を付けると「名前のある人物」に分類され、以降は検出するたびに名前の候補付きで提示してくれるようになる。付けた名前は「キーワード」として記録され、メタデータ検索やスマートコレクションで活用できる。
フィルターブラシ
現像モジュールには、フィルターブラシが追加された。補正ブラシと同じく、マウスのドラッグ操作で効果をおよぼす領域を指定する範囲選択ツールだが、段階フィルター(直線で区切った片側にだけ効果を適用できるツール)や円形フィルター(楕円の内側または外側にだけ効果を適用できるツール)使用時に、選択範囲を追加したり減らしたりするのに利用する。段階フィルターも円形フィルターも、素早い操作ができる反面、単純な形の選択範囲しか作れないのが泣きどころだったが、フィルターブラシによって、その弱点をカバーできるようになったというわけだ。
HDR合成・パノラマ合成
従来バージョンではPhotoshopなどの外部エディターとの連携が必要だったHDR合成とパノラマ合成が、Lightroom単体で行なえるようになったのも新しい点だ。これまでは、Photoshopでの作業後にTIFFやPSD形式で保存した画像をLightroomに戻す仕様だったため、例えば合成後に、ホワイトバランスを再調整する必要が生じたときなどには、最初からやり直さないといけないという面倒くささがあった。
それに対して、新バージョンでは、合成した画像は自動的にDNG形式(Adobeの標準RAW形式)で保存される。拡張子は変わっても、RAWであることには違いはないから、調整の余裕度はTIFFやPSDよりも格段に高い。素材の段階での調整内容を合成後の画像に引き継がせることもできるので、作業全体の効率化がはかれるはずだ。
また、HDR合成では、風で揺れた木の枝などがズレた状態で合成されることによる「ゴースト」現象を除去するレベル、パノラマ合成では、合成の際の投影法(素材画像をつなぎ合わせるための変形のさせ方)を、プレビュー画像を見ながら選択できるところも使いやすいと感じた。
まとめ:より完成度を増した統合型写真ソフト
そのほか、ウェブギャラリーがHTML5対応になったことや、スライドショーに動画を含めることが可能になり、パンやズームといったエフェクトが使えるようになったことも改良点としてあげることができる。
サードパーティー製のRAW現像ソフトというと、それだけでハードルが高いように感じる人も多そうな気もするが、メーカー純正のRAW現像ソフトよりも軽快に動作するし、価格的にもかなり抑えられている(プロの定番となっているPhotoshopとセットで月額980円で利用できるプランも用意されているのだ)。また、30日間、全機能をフルに使える体験版も用意されているので、一度ご自身で試してみていただきたい。