インタビュー

アドビの新プラン「フォトグラフィプラン」の魅力とは?

“フルバージョン”のPhotoshopとLightroomがリーズナブルに利用可能

アドビシステムズのクラウドサービス「Creative Cloud」(CC)の中の1つである「フォトグラフィプラン」は、月額980円でPhotoshopとLightroomの2製品を使えるため、プロの写真家から写真愛好家まで注目のプランだ。

このフォトグラフィプランについて、アドビのクリエイティブ ソリューション第1部デジタルイメージング製品担当グループリーダー栃谷宗央氏に話を聞いた。

“本物の”Photoshopがついてくる!

フォトグラフィプランの前身として、アドビは昨年9月より「Photoshop 写真業界向けプラン」として期間限定のプロモーションとして開始。その後は期間延長や、「写真家向けプログラム」と名称変更をしていたが、好評につき、2014年6月から「Creative Cloud フォトグラフィプラン」としてCreative Cloudの1ラインアップとして正式に加わった。

月額料金は980円、年間一括払いは11,760円。いずれも1年間の契約を前提としており、値段に差はない。なお、写真業界向けプランで月額1,000円の年間契約をしていたユーザーは、年間契約終了後も引き続き写真業界向けプランを利用できる。

アドビの戦略は、従来のパッケージ版の販売からクラウド型のサブスクリプションのCCに変更されており、そのためPhotoshopの最新版が必要だと、月額2,180円の「単体プラン」などを選択しなければならなかった。

それに対して、フォトグラフィプランはPhotoshop CCに加えてLightroomが付属して月額980円であり、割安感が高い。毎年パッケージを買い換えていたようなユーザーにとってはディスカウントになる。

しかし栃谷氏は、この割安な価格のために「誤解がある」という。

アドビ マーケティング本部 デジタルイメージング製品担当グループリーダー 栃谷宗央氏

Photoshop CC単体プランに比べて安いため、フォトグラフィンプランについてくるPhotoshopは、「Photoshopのライト版、またはPhotoshop Elementsなのではないか」という誤解だ。要はPhotoshop CCに対して機能が制限されているのでは、と思われてしまっているのだという。

もちろん、フォトグラフィプランに含まれるPhotoshopはPhotoshop CCであり、他の単体プランやコンプリートプランに含まれるPhotoshop CCと何も違いはない。完全な「Photoshop」だ。当然、Lightroomにも機能制限はなく、7月31日公開の最新版5.6になる。

フォトグラフィプランに含まれるのは、実はこの2つのソフトだけでなく、クラウド上のストレージや画像をWeb経由で複数デバイスと同期する、Lightroomの利用権も付属している。それにも関わらず、単体プランよりも値段が安いのは、ストレージ容量が単体プランの20GBに対して2GBに抑えられ、フォントなど、いくつかの機能が利用できないからだ。

逆に言えば、クラウドストレージをそれほど必要とせず、独自のフォント群など、どちらかといえば業務系の機能がいらなければ、Photoshop CCとLightroomを使うのには、このフォトグラフィプランが最適な選択となる。

栃谷氏はフォトグラフィプランについて、Webやストレージ、Lightroomといった「プラスαの魅力がある」と強調。しかし、まだモバイルアプリの存在があまり知られていないことも認めている。今後は、iOSでもカメラのRAW画像を読み込んで閲覧に加え、編集もできるとメリットをアピールしたい考えだ。

CCユーザーならではのメリットも

現在、アドビのサイトはCCにあわせてリニューアルしており、CCのユーザーはトップページからサインインすると、専用のページが表示されるようになっている。そこから「写真」を選ぶと、PC版のLightroomとiOS版のLightroomの間で、写真を同期することができるようになる。

これを利用すると、例えばiPhoneのカメラで撮影した写真が自動でWebにアップされ、それがデスクトップ側にも同期されるようになる。写真に編集を加えれば、それも自動的に同期され、「モバイル、Web、デスクトップがシームレスにつながる」と栃谷氏。

アドビのサイト。サインインしておけば、トップページにアクセスすると、すぐに個人サイトに繋がるようになった
iPadアプリに続き、Lightroom mobileのiPhoneアプリも登場。同じくデスクトップ用のLightroomと特定のコレクションを同期できる。CCへの契約が必要。

Photoshop CC、Lightroomがサブスクリプション型になったことで、製品のアップデートも変わることになるだろう。

これまで、Camera RAWのアップデートを始め、マイナーアップデートを繰り返して、新機能を搭載したメジャーアップデートを1年に1回行なう、という流れだったが、今後は1年に1回ではなく、新機能が完成した時点でアップデートする、ということもありえるだろう。栃谷氏は、それぞれの製品開発チームによってアップデートポリシーは異なるとしているが、「随時最新機能が使える」というのはサブスクリプション型のメリットなので、定期的にアップデートされることを期待したい。

解約するとどうなるの?

サブスクリプションは、「解約するとその製品が使えなくなる」というのは当たり前で、実際フォトグラフィプランでも解約するとその時点からPhotoshop CCは利用できなくなる。ところが、Lightroomはちょっと異なっている。

フォトグラフィプランを解約して使えなくなるのは、「現像」と「マップ」の2つのモジュール。つまり、「ライブラリ」「ブック」「スライドショー」「プリント」「Web」という5つのモジュールは、解約後も無料で使えるのだ。

もちろん、Lightroomの真価は「現像」モジュールにあり、高度な写真編集機能が使えないのは厳しい。しかし、「ライブラリ」モジュールによる管理機能も優れており、キーワードやラベル、メタデータなどによる検索など、大量の写真を管理するのに向いている。仮に一時的に解約する必要があっても、写真管理をLightroomに任せておき、再び契約したら、そのままLightroomを使い続けられる。このあたりは、ユーザーにもアドビにもメリットのある仕様だろう。

Lightroomの「現像」モジュール。スポットブラシの使用イメージ

フォトグラフィプランは、「写真家」に特化したCCの1プランだ。最近のプロの写真家であれば、動画も撮影してPremiereが必要になることもあるだろうし、デザイナーであればIllustratorも必要だろう。そうした人にとっては、コンプリートプランなど、別のプランが用意されている。しかし、基本は写真だけで、動画は管理と簡単な編集ができればいい、というのであれば、LightroomとPhotoshop CC、さらにモバイルでもWebでも写真を確認できるフォトグラフィプランが最適で、しかも価格的にも値頃感が高い。

写真愛好家にとって、PhotoshopやLightromの利用形態はさまざまだ。それをふまえ、フォトグラフィプランのメリットを確認してみてはいかがだろうか。

小山安博