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アドビ、Creative Cloudのビジネス概況と方針を説明

制作から評価まで「One Adobe」の総合性をアピール

アドビ システムズのマーラ・シャーマ氏による、2016年のAdobe Creative Cloudに関するビジネス説明会が4月27日に行われた。内容は、同社のCreative Cloudが2016年に目指す方向と、同サービスのこれまでの経緯や実績について。

アドビ システムズCreative Cloudプロダクト、マーケティング&コミュニティ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのマーラ・シャーマ氏

Creative Cloudのこれまでと今

Creative Cloudのサービス開始の背景には、「誰もがクリエイティブを扱える」というビジョンがあったと説明。写真関連にサービスを限定して安価とした「フォトグラフィプラン」で個人ユーザーに訴求するなど、クリエイターになりたいユーザーをサポートする存在という側面もアピールする。

2012年にサブスクリプション形式でデスクトップアプリを提供開始したCreative Cloudは、2013年にはクラウドベースのストレージサービスやアセット(画像などの素材)の同期などの機能を追加した。

2014年はデスクトップアプリを補完するような関係の「コネクテッド・クリエイティビティ」をテーマに、写真ユーザーにとってはLightroom mobileに代表されるようなモバイルアプリを提供。デスクトップアプリの「パワー」をモバイルにも拡張するものとしていた。

2015年にはユーザー環境や素材を同期する「CreativeSync」が導入され、全てのアセット(フォント、カラーなど)を扱えるようになった。また、ストックイメージを扱うAdobe Stockの導入もトピックだった。

2016年の進化は、CreativeSyncをCreative Cloudの中核として、Adobe Stockのマーケットプレイスから入手したものもアセットとして組み込めるようにしたという。Creative Cloudについては「(ローカルの)ライブラリとCreative Cloudを併用することで生産性を10倍向上できる」という第三者の調査結果が出たとし、これを利用価値として強くアピールする。

CreativeSyncを中枢神経としたCreative Cloudの図式

ビジネス概況とユーザー動向。2016年の方針

2016年第一四半期の同社デジタルメディア部門の年間経常収益(ARR)は31億3,000万ドル。前年同期より2億3,800万ドルの増加だった。クリエイティブ分野の収益は7億3,300万ドルになり、前年同期比44%増の好調だったという。背景として、グローバルでの採用実績や、個人だけでなく中小企業、エンタープライズでの採用が進んだことがあると分析していた。

Creative CloudのモバイルアプリでのID取得は2,300万にのぼっており、これまでアドビ製品を買ったことがない新規ユーザーも30%以上増加したという。クリエイティブコミュニティ「Behance」のメンバーは世界で700万人。これら指標を鑑み、アドビ製品には関心が高く、事業自体も勢いがあるとしていた。

2016年の方針と成長機会については、「デジタル」を最大のキーワードとした。複数デバイスを使うような「コネクテッド・コンシューマー」と呼ばれる消費者は顧客体験について高い期待値を持つようになっており、それが事業に対して様々な課題を突きつけるという。同時に同社は、データ量の爆発的増加や、デジタルによる破壊的変革にも注目していた。

そのデジタルのキーは優れた顧客体験にあり、魅力的(関心がある)で、パーソナル(関連性がある)で、便利で、あらゆる場所で扱える(環境によるユーザー体験の統一性)、という4つの体験がそのブレークスルーを構成すると解説した。

クリエイティブを助ける存在として

アドビ製品のクリエイティブへの助けの一例として「ビデオ」が挙げられた。プロ領域ではナンバー1というPremier Proは、ハリウッドのみならず急速に採用が進んでおり、メインの編集ソフトとして活用されているという。

しかし、今はビデオも爆発的に増加していて、“YouTube世代”と呼ばれる層にも、複雑な編集をワンクリックで可能にするような手助けをしていきたい考え。それはCreative Cloudが写真ユーザー向けにアプローチしてきた手法でもあるという。

また、顧客体験を高めるためのツールとしては、3月に「Adobe XD」のプレビュー版を公開。デザイン、試作などのプロジェクトでツールを統一し、生産性を高めるためのアプリで、日本のユーザーもローカライズ以前から多数参加。多くのフィードバックを得るなど、高い注目を集めているとした。

Creative Cloudが「One Adobe」のプラットフォームとして提供するこれらのツールを用いることで、個人や企業のユーザーはコンテンツの制作、管理、測定、実績評価までが統合的に実現できると説明。何よりこうした総合的な対応ができるのはアドビのほかにないと自信を見せた。

(本誌:鈴木誠)