新製品レビュー
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II(実写編)
“ハイレゾショット”など仕掛け満載の多機能ミラーレス
Reported by 永山昌克(2015/2/26 08:44)
オリンパス「OM-D E-M5 Mark II」は、4/3型の有効1,605万画素センサーを搭載したミラーレスカメラだ。同社のラインアップ中では、フラッグシップ「OM-D E-M1」に続くナンバー2の位置付けとなる。
最大の特長は、イメージセンサーシフト式の5軸VCM手ブレ補正がいっそう強化されたこと。補正性能は上位機を超えるシャッター速度5段分を実現。静止画だけでなく動画撮影でも効果を発揮する。
新機能としては、ピクセルシフトによって4,000万画素のデータを生成するハイレゾショットや、レリーズ時の音と振動を低減する電子シャッター、短編イメージビデオを自動作成するクリップスなどを搭載する。
前回のレビューでは外観と機能をチェックしたが、今回は実写編として、写りの性能を見てみよう。
大口径標準ズームで遠景描写力を検証する
OM-D E-M5 Mark IIには、倍率の高いズームレンズが付属する2種類のレンズキットがある。どちらも携帯性と利便性に優れ、コストパフォーマンスは高い。だが、より描写性能にこだわる場合は、ワンランク上となるM.ZUIKO PROレンズを使いたいところ。
下の写真は、M.ZUIKO PROの大口径標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」を使って12mm側と40mmで撮影したもの。四隅までくっきりと解像し、被写体の細部までを正確に再現できた。
感度別の画質をチェックする
撮像素子には4/3型有効1,605万画素のLiveMosセンサーを、画像処理エンジンには「TruePic VII」をそれぞれ搭載する。感度はISO200~25600を1/3ステップで選択でき、拡張設定としてISO100相当も選べる。
前モデルE-M5と比べた場合、センサーのサイズと画素数、ISO感度の範囲は変わらない。だが、エンジンのバージョンアップなど内部処理の進化によって高感度画質は向上している。
以下は、感度を変えながら撮影したJPEGデータだ。高感度ノイズ低減機能は「標準」を選択。ノイズリダクションの影響でISO1600を超えるあたりから解像感が徐々に低下していくが、ノイズの粒は汚く感じないように低減されている。
シネマクオリティをうたう「OM-D MOVIE」とは
動画はMOV(MPEG-4AVC/H.264)およびAVI(Motion JPEG)をサポートし、MOVの場合、最大で1,920×1,080/60pのフルHD記録に対応する。このスペック自体は標準的だが、動画撮影時に機能する5軸手ブレ補正がアピールポイントになっている。
同社では、動画撮影時の手ブレ補正と小型軽量システムを重要視し、動画機能を「OM-D MOVIE」と命名して訴求。手持ちによるアクティブなカメラワークの実現や、被写体に威圧感を与えずに自然な表情が切り取れることを売りにしている。
手ブレ補正の設定は、機能オフのほか、センサーシフト式5軸補正と電子補正を組み合わせたモード1と、センサーシフト式5軸補正のみのモード2が選べる。以下は、モード1を使って歩きながら手持ち撮影した動画だ。私の腕の問題で滑らかなカメラワークとはいかなかったが、手ブレ補正の効果は実感できた。
動画サンプル
1,920×1,080/60pのフルHD動画。レンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」を使用した。
動画に関する付加機能としては、クリップスを新搭載した。1~8秒の短い動画を撮影し、それをカメラ内編集することでイメージビデオ風の短編動画として保存できる機能だ。
編集といっても、できるのは素材の選択と並び替えぐらいで、複雑な操作や設定は特にない。出力の際に、必要に応じてBGMやフェード効果、アートフィルターを適用できる。
ハイレゾショットの描写性能を検証する
ハイレゾショットは今回の注目機能のひとつだ。1回シャッターを切ると、0.5ピクセル単位でセンサーが8方向に移動して8枚の画像を撮影。その8枚がカメラ内で自動的に合成されて、4,000万画素相当の画像を生成する仕掛けである。
もともとは手ブレ補正用に考案されたイメージセンサーシフトの技術を、高画素データの生成用に応用した機能といっていい。むやみな高画素化を求めないマイクロフォーサーズ規格にとっては二律背反する要素も感じるが、技術的には興味深い。
ハイレゾショットの注意点は、三脚が必須であること。撮影中に被写体が動くと、動いた部分はきちんと解像せず、ジャギーのようなノイズが生じる。そのため、動きのない風景や建物、静物専用の機能である。
画像サイズは、通常の撮影時は4,608×3,456ピクセルであるのに対して、ハイレゾショットでは7,296×5,472ピクセル(約4,000万画素相当)にもなる。上の2枚をPCのディスプレイ上に見比べると、通常撮影では記録できていないディテールまで、より細かく解像していることが分かる。
さらに、記録形式をJPEG+RAWに設定した場合は、JPEGのほかに、9,216×6,912ピクセル(約6,400万画素相当)のRAWデータが同時記録される。ハイレゾショットのRAWは、同社が提供するPhotoshop用のプラグインを使って現像できる。
このRAW記録した約6,400万画素相当の写真は、JPEG記録した約4,000万画素相当の写真と見比べた場合、格段に解像が高まっているとは感じない。しかし、12ビットのRAWから現像した場合には、階調はより豊かに記録できる。
以下は、ハイレゾショットのRAWデータから現像した写真だ。WEB掲載用に8ビットに変換してJPEG保存している。
ハイレゾショットはフラッシュ発光して撮ることも可能だ。ハイレゾショットでのフラッシュの同調スピードは1/20秒と遅いので、自然光の影響に気を付ける必要があるが、インテリアや商品撮影など静止した被写体を撮る際には役立つだろう。
以下は、外部フラッシュを発光しながらハイレゾショットで撮影したもの。撮影中にフラッシュは8回光る。フラッシュ充電の待ち時間は、メニュー画面から1~30秒に設定可能だ。
作品集
スタジオではなく、手持ちによるスナップ撮影である。右手でカメラで支え、外部フラッシュを持った左手は花の後ろまで伸ばして、ワイヤレスTTLで発光。こうして透過光気味にすることで、立体感のある描写が得られた。付属する新しい小型フラッシュFL-LM3は、上下左右の首振りに対応し、よりワイヤレス発光がしやすくなっている。
キットレンズでもある高倍率ズームを装着して、街を散策中に見かけた夕日を150mm側で撮影。こうしたシャッターチャンスに出会っても、確実に対応できることは高倍率ズームのメリットだ。
シリーズ初となるバリアングル液晶を生かし、カメラを縦位置に構えてローポジションで撮影。被写体は、展示された消防車の一部分だ。天窓からの光がスポット的にあたり、陰影が引き立っている。
歩行者の影がバランスよく重なったタイミングで撮影。レリーズタイムラグが短く、狙いどおりの瞬間が撮りやすい。
こちらもシャッターチャンス重視で撮影したもの。レンズは大口径の望遠ズームを使用。焦点距離の割には小型軽量で、E-M5 Mark IIとの相性はいい。
カメラを三脚に固定してシャッター速度5秒で撮影。人影がほどよくぶれて、夜の都会らしい雰囲気が出た。ホワイトバランスは蛍光灯にセットして、やや光が残る夜空を紫色で表現している。
逆光によるコントラストの強い街の1コマを狙ってみた。小型軽量ボディなので、常に持ち運び、目に留まったものを気軽にスナップできるのがありがたい。
小型ボディに凝縮された高機能が楽しめる
今回は短期間の試用だったが、E-M5 Mark IIの魅力をぞんぶんに味わうことができた。細部の操作性に関して注文を付けたい点はあるものの、全体としては、使い勝手の面でも、画質の面でも満足度は高い。
小型ボディに凝縮された高機能によって、さまざまな被写体に幅広く対応できることが本モデルの持ち味だ。チルト式に比べて速写性でやや劣るバリアングル液晶については、人によって好みが分かれるかもしれない。だが、縦位置撮影も含めた構図の自由度では優位である。撮影が好きな人なら、長く飽きずに楽しめるカメラになるだろう。
【2月26日14時25分】記事初出時、ハイレゾショットの部分で「RAW記録時は16ビット出力のため階調豊かに記録できる」との旨を記載していましたが、表現を改めました。RAWをPhotoshopで16ビットデータとして扱っていたものの、カメラ側のRAW出力仕様が12ビットと判明したためです。