新製品レビュー
ソニー VLOGCAM ZV-1 II
超広角ズーム搭載で本領発揮 バランスの良さが持ち味のカジュアルVlogカメラ
2023年6月8日 07:00
ソニーのレンズ一体型デジタルカメラ「VLOGCAM ZV-1 II」(以下ZV-1 II)をお借りすることができたので、動画を中心としたレビューをお届けする。発売は6月23日。店頭予想価格は12万円前後となっている。
ZV-1 IIは2020年に発売された「VLOGCAM ZV-1」の後継モデルで、1.0型センサーはそのままに、レンズを35mm判換算24-70mmから同18-50mm(F1.8-4)に広角化したモデルとなっている。また、シリーズ最上位のレンズ交換式モデル「VLOGCAM ZV-E1」で採用されたいくつかの機能も追加された。
外観・操作性
ボディはコンパクトにまとまっており、ホットシューも備えていている。そこには同梱のウインドスクリーンを付けられ、風切音を低減できる。
バッテリーは小型なので、1日使うにはもの足りないかもしれないが、モバイルバッテリーで給電しながらの撮影も可能だ。
レンズ一体型ということで、どちらかというと動画撮影のライト層に向けたカジュアルモデルという位置付けと見られる。基本はオートモードでの撮影を念頭に置いたUIとなっているのも特徴だ。
必要十分な動画性能
動画性能に関しては4Kモードが最大30p/4:2:0/8bit/Intra非対応と、ZV-E1の4Kモード(最大60p/4:2:2/10bit/Intra対応)に比べるとだいぶ抑え目のスペックになっている。さらにピクチャープロファイルの「S-Cinetone」が省略されている。
ただ、一般的なVlog収録なら4K 30pでも基本的には不足は感じないはずで、むしろデータ量が少なく編集などもしやすいといったメリットもある。4:2:0/8bit記録ではあるが、一応S-Log3収録にも対応しているので、カラーグレーディングもそれなりにできそうだ。
S-Cinetoneは人の肌の表現を重視したプロファイルだが、肌という点では本機にも美肌機能はあるのでそちらも活用したい。デフォルトでは3段階のうち中間の「MID」が設定されており、今回の作例は全てMIDで撮影している。
撮像素子は、有効約2,010万画素の積層型CMOSセンサー「Exmor RS」を採用している。画素数は前モデルから変わっていない。
画角をチェック
最大のトピックはやはり広角端が18mm相当になったということだろう。レンズ一体型のVLOGCAMシリーズでは、20mm相当の単焦点レンズを搭載した「VLOGCAM ZV-1F」を抜いて最広角モデルになった。
以下はカメラを手持ちして広角端で自撮りをしたものだが、背景もかなり広く映すことができている。
以下の動画でわかる通り、広角側では狭い店内でも中の様子を広く撮ることができ、まさにVlog向きの仕様となっている。また、動画の後半は望遠端の最短撮影距離(約15cm)付近で料理を撮影したものだが、このようにマクロ的な撮影にも対応できる。
動画撮影ではアスペクト比が16:9や2.35:1(シネマティックVlog設定のとき)になるほか、アクティブ手ブレ補正を使うと画角が狭くなるので、このくらいの超広角レンズが付いていてちょうど良いという印象を受けた。
話し声もよく収録できていると思う。マイクの指向性はオートに設定しており、画面内で人物を検出すると指向性が前方に設定される。
広角化を優先したため望遠端は50mm相当と標準域に留まっている。もともと70mm相当でもさほど遠くのものを引き寄せて撮影できるといった焦点距離でもないので、50mm相当だからユーザー体験が大きくスポイルされる事は無さそう。それよりも、広角化を図った方がずっとメリットが大きいと思う。
次の作例は望遠端で絞り開放のF4にしてボケ具合を見たものだ。1.0型センサーということもあり、点光源を大きくボカすことはできないが、人物を撮るのに50mm相当は使いやすい焦点距離だ。
手ブレ補正は?
光学式の手ブレ補正は非搭載となっており、電子式手ブレ補正の「アクティブモード」が利用できる。
電子式なので、画角はひと回り小さくなるが効果は十分だ。歩きながらの撮影では手ブレ補正を入れることをおすすめする。
立ち止まって撮る場合は広角側ならブレが目立ちにくいので、広い画角が楽しめるように手ブレ補正を切っておくと良いと思う。
AFの追従性を確認
AFは像面位相差センサーを使った定評ある「ファストハイブリッドAFシステム」を採用している。Vlogでは瞳AFが重要だが、追従性は文句の無いものだ。
作例のように人物と背景のフレームを変えても、おのおの即座にAFが合焦する。今回は撮影が夜でかなり暗い状況だったが、画面を動かしても瞳AFの追従が外れるといったことは無かった。
映画のような「シネマティックVlog設定」
ZV-E1で初搭載された「シネマティックVlog設定」が本機にも採用されている。ワンタッチでシネスコのアスペクト比(2.35:1)やフレームレートが24pに切り替わり映画風の動画を撮ることができる。アスペクト比については実際の記録は16:9で、その上下にマスクが付く仕組みだ。
色味についても「Look」と「Mood」の設定でシネマティックに表現できるようになっている。Lookは「CLASSIC」「CLEAN」「CHIC」「FRESH」「MONO」、Moodは「AUTO」「GOLD」「OCEAN」「FOREST」の組み合わせで絵を決められる。
ZV-E1ではLookにS-Cinetoneが入っていたが、本機ではこれが無くなり、代わりにCLASSICが加わったようだ。Moodの種類はZV-E1と同じである。
シネマティックVlog設定の作例では、新たに加わった「CLASSIC」とMood「AUTO」を組み合わせてみた。コントラストが弱めになり映画風の雰囲気になっている。作例ではS&Q(スロー&クイック)機能を併用して、2.5倍のスローになるように撮影した。スロー時は4K記録ができないため、この作例のみHDとなっている。
静止画を撮る
本体上部のボタンで静止画のモードに切り換えられる。記録アスペクト比は3:2だ。
下の作例のように広角端で手に持っての自撮りでもかなり広く背景を入れられる。夜の撮影のためISO 2500の高感度になったが、なかなかきれいに撮れていた。
続いて望遠端でマクロ的に花を撮ってみた。ここまで被写体に近づけば背景も結構ぼかせる。
超広角レンズを搭載しているということで、モノクロのスナップも味わいがある。こうした広い画角の絵はこれまでレンズ交換式カメラでないと難しかったものだ。
静止画も動画モードと同じくオートのほか、プログラム、絞り優先、シャッター優先、マニュアル露出にも対応している。ただし本機のダイヤルは1つしか無いため、例えば絞り優先モードでは絞り値はダイレクトに動かせるが、露出補正は一度露出補正ボタンを押さないと動かせないという不便はあった。このあたりもオート主体のカメラだと感じさせる部分だ。
まとめ
VLOGCAMシリーズといえば、4月に登場したフルサイズ機のZV-E1が約30万円という価格でも話題になったが、動画性能やレンズ交換による表現力ではさながら”ミニシネマカメラ”といって良い水準に達していた。ただ、価格もさることながらレンズ交換式モデルはサイズと重さがどうしても増してしまい、相当のモチベーションが無いと普段持ち歩くのは大変だ。ちなみに、ZV-E1にFE 20-70mm F4 Gを付けた重さは約971gになる。
その点ZV-1 IIは手のひらに収まるサイズ感であり、約292g(バッテリーとメモリーカードを含む)と日頃バッグに入れて持ち運んで全く苦にならないレベルだ。小型軽量というスペックはカジュアルなVlogカメラとして重要な部分なので、日常にしろ旅行にしろ負担にならないのはポイントが高い。
高い機動性とオート主体の簡単な操作性に加えて、18mm相当のレンズも「広過ぎる」ということは全くなく、引きがない室内撮影などでも重宝する。そしてアクションカメラなどの単焦点レンズ機ほどスパルタンではなく、画質の劣化無く適度なズームもできるなどバランスが良い。ライトユーザーにはまずオススメできそうな1台といえるし、上級ユーザーもサブ機などとして触手を動かされたのではないだろうか。