新製品レビュー
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8
普段使いにマッチする、身軽で手頃な大口径標準ズーム
2022年4月6日 09:00
ニコンからZシリーズ用のF2.8通しとなるズームレンズ「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」が登場した。Z用のF2.8標準ズームレンズにはS-Lineの「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」があるが、本レンズはワイド側を28mmに抑えるなどの違いから約240g軽い約570gとなり、普段使いでも負担にならないコンパクトさを実現している。
高性能を売りにしているS-Lineのレンズではないけれど、最新のF2.8ズームレンズであることや、同時に発表されている「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」と実売価格が近いことなどから、気になっている人も多いハズ。
手に持った感じは、ややしっかりした鏡筒サイズから想像するよりも軽め。サテン調の仕上げであることも新しい世代のZレンズという感がある。その一方でNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sと同様に、爪の擦り傷などが付きやすい不満も同一で、芸術点としては欠けるように思った。
また、操作感は悪くないが、直前にS-LineのNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sに触れていたこともあって、ズームリングの感触では一歩劣るように感じる。
既存のZレンズに通じる描写。“寄れる”のも魅力
レンズ構成図が似ていることもあり「タムロンのOEMでは?」という点も話題に上る本レンズ。直接比較したわけではないが、ソニーα7 IIIに「28-75mm F/2.8 Di III RXD」を組み合わせた時の描写の記憶よりも、本レンズとZ 7IIの組み合わせの方が印象が良い。
※4月7日16時追記:記事初出時、比較対象のレンズを「28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」と記載していましたが、正しくは「28-75mm F/2.8 Di III RXD」(G2ではない初代)だったため修正しました。
具体的には、絞り開放から十分な解像力があり、撮影距離やズーム位置を問わず安定してクリアでシャープな描写という点で、本レンズも他のZレンズと共通の好ましい印象を持った。実写してみた印象としては、紛れもなくZレンズそのものだった。
本レンズでは「ナノクリスタルコート」や「アルネオコート」といった名前付きの高級なレンズコーティングの採用がアピールされているわけではないものの、逆光耐性は十分に高く、シーンを問わず安心して使えそうだ。
周辺光量落ちは、カメラ側での補正をOFFにした状態では、シーンによってやや急激に落ちて見えるので好みが分かれそう。もちろんカメラ内の補正を適用すれば問題ない。
撮影していて「これは楽しい!」と感じたのが接写性の高さ。ワイド端では撮像面から0.19m、レンズ先端から約5cm程度まで寄れるので、草むらや花壇にカメラを突っ込んで撮影してみるなど、興味本位に任せた撮り方をした際にもしっかり応えてくれるし、その状態でもZレンズならではのクリアでシャープな写りが楽しめる。
最大撮影倍率こそNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sに軍配が上がるけれど、本レンズの方が感覚としては「寄れる」感が強い。
気になる存在「24-120mm f/4 S」と比較
簡単に比較撮影を行ってみた。まず、逆光耐性についてはNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sの方が良好。今回試したシーンに限った話ではあるけれど、本レンズについては絞り込むほどフレアの程度が悪化するように思った。
ボケや解像性についても、同一絞りではさすがS-Lineという感じで、観察するとシャープさとボケの感じがNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sは一枚上手だ。同一シーンを撮り比べた写真をExif情報を見ずにチェックしていくと、割とズボラな筆者の眼でも「こっちの方が性能が良い」と感じた写真はS-Lineで撮影したものだった。
ただ、光学性能の良さが必ずしも“パッと見の心地よさ”や“撮影時の楽しさ”と比例関係にあるわけでは無く、使っていて楽しかったのは明確に本レンズ。やはり、軽さと寄れる恩恵は偉大だ。
NIKKOR Z 28-75mm f/2.8はどんな人に向いている?
日常的にF2.8通しのズームを使いたい人に、本レンズはマッチするように思った。ズーム比はともかく、スマホ並にガンガンに寄れる感覚があるので、新しい視点を発見する楽しさがあるし、フルサイズ機でここまで寄れると、その喜びも大きい。楽しさを求めるなら本レンズがオススメだ。
逆に、NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sが向くのは?
利便性重視、業務用途で選択する人にはNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sがピッタリだ。筆者自身、仕事や旅行で使うならS-Lineを選ぶ。ズーム倍率だけで言えばニコンには「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」という優れた高倍率ズームレンズもあるし、コンパクトさ重視なら「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」があるけれど、NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sは性能とサイズのバランスが良い上に、開放F4通しという“鬼に金棒”的な安心感があるのが魅力だ。
まとめ:日常的に楽しめるトータルバランスの高さが魅力
個人的な意見になるが、超高性能なNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sのようなレンズも良いけれど、圧倒的に高価であるし、サイズも重さも存在感がある。ここまで性能が良くなくても、出来上がる写真のクオリティにはそうそう影響しない。もちろん堅牢性など、絶対的な性能・機能では価格なりの違いがあるけれど、ほとんどの人にとってはその違いが“撮れる・撮れない”という差として表れることはない。
日常的に撮影を楽しむなら、機材はコンパクトな方が肩肘張らずに楽しめて、疲労感も少ない。なので本レンズのように魅力的なスペックと十分に高い描写力、バランスの良いサイズ感、手の届く価格といったトータルバランスの高さに加え、広角端でレンズ前5cmという“メチャクチャ寄れる”ユニークさを持った本レンズをぜひ一度体験してほしいという気持ちがある。