新製品レビュー
DJI Mavic Mini
法規制の基準200g未満を実現 小型軽量な本格派ドローン
2019年12月2日 07:00
DJIのドローン「DJI Mavic Mini」が発売された。国内の法規制に対応した重さ199gという軽量ドローンながら、安定した飛行ができる、ドローンを気軽に楽しめる製品になっている。
Mavicシリーズは、コンシューマ向けドローンでDJIの主力製品。アームを折りたたむことでコンパクトに収納できることが特徴で、Mavic Pro、Mavic Air、Mavic 2などの製品がある。コンシューマ向けではさらにSparkがあったが、コンパクトながら折りたたみのできないモデルだった。
今回登場したのはその中でも最軽量モデルで、アームを折りたたんだ状態ではSparkより小さく、重さは200gを切る199gを達成した。折りたたむと手のひらに収まる程度のコンパクトサイズになる。
この200gを切るというのは重要なポイントで、日本でドローンを飛行させるには改正航空法の規制に従う必要がある。この規制は200g以上のドローンを無人航空機と規定しており、飛行には申請や飛行制限区域を避けるといった配慮が必要になる。
重量199gを実現すると無人航空機ではなく模型航空機という位置づけになり、飛行の申請が不要になる。Mavic Miniの側面には199gという数字が誇らしげにプリントされている。
最大のメリットは、所定の人口密集地域での飛行に許可が不要になる点だ。一般的なドローン規制とされる空港周辺、150m以上の高度、指定の飛行禁止区域といった制限は変わらないが、人口密集地域での飛行は制限されなくなる。
もちろん、公園などその土地の所有者の許諾が必要な場合など、法律に規制されない制限はある。公園などで「無人航空機(ドローン)」の飛行が禁止されている場合、文面上は厳密にいえば模型航空機となるMavic Miniは飛行できる可能性がある。とはいえ、基本的に他のドローンと同様に許諾を取る方が安全だ。もちろん、周辺の安全確認も必須。それでも、土地の管理者の許諾があれば、今までは手間がかかった人口密集地域で飛行が簡単にできるメリットは大きい。
ちなみに、Mavic Miniの米国モデルは本体重量が249gとなっている。これは米国では250g以上という規制があるためで、それより厳しい200gという日本の規制に合わせて199gを実現している。米国版と比べるとバッテリー容量が減って50g分を軽量化しており、日本版は飛行時間が減っている。それでも、日本限定の制限に配慮している点は好感が持てる。
日本向け低容量バッテリーの外形寸法は海外モデルと同様。海外用のバッテリーも挿入はできるようだ。海外で使う場合や規制に従った利用をする場合なら、そちらを使った方が飛行時間は延ばせる。
バッテリー自体は背面から挿入する。
前置きが長くなったが、実際の製品である。Mavic Miniは、飛行時の本体サイズが245×290×55mm、アームを折りたたんだ状態では140×82×57mmというコンパクトなドローン。最大飛行速度はスポーツモードで13m/秒、通常モードで8m/秒、最大飛行時間は18分、運用限界高度は海抜3000mというスペック。150m制限があるため、限界まで高度を上げることはめったにないだろうが、余裕を持ったスペックではある。
折りたたみが可能な送信機も付属しており、2.4GHz帯を使った無線伝送によって、最大伝送距離は2km。海外モデルは5.8GHz帯を使うため、より安定した伝送が可能だが、国内は電波干渉があるので規制によって2.4GHz帯に制限されている。
コントローラーに差し込むスティックはねじ込み式で、ボディ内にはめ込める。こうした細やかな工夫は好感触だ。
スマートフォンを接続して使用し、iPhone用のLightning、Androidスマートフォン用のUSB Type-C/micro USB対応のケーブルがそれぞれ付属する。
スマートフォンに表示されたライブビューを見ながら操作ができ、映像品質は720p・30fps。遅延は一般的な撮影にはまったく問題ないレベルで、安定した映像を確認しながら撮影が可能だ。
コントロールは「DJI Fly」アプリで行う。撮影機能は多くはないが、反応は良く、とりあえず使用する分には問題は感じない。
肝心のカメラは、3軸対応のジンバルを搭載。搭載されている1/2.3インチCMOSセンサーは、有効画素数1,200万画素で、レンズの画角は83度。35mm判換算で24mm相当の広角レンズを採用する。レンズの開放F値はF2.8。
動画と静止画の撮影が可能で、動画は最大2K(2,720×1,530ドット)・30fps、ビットレートは最大40Mbpsで撮影できる。カメラ部の主なスペックはMavic Airと同等。
ただし、例えば連写モードがない、動画ビットレートが100Mbpsではない、HDR撮影機能がないなど、いくつかの機能が制限されている。それでも強力なジンバルは健在で、安定した撮影が可能だ。
GPS+GNSSの位置情報に加えて本体底面のビジョンセンサーによる正確な飛行性能も備えている。
軽量ながら飛行中の風に対しても比較的安定する。上位モデルに比べると強い風にややふらつくこともあったが、玩具レベルのドローンとは異なり、かなり安定して飛行できて安心感がある。
画質は、素直な描写で細部も良く描写する。全体的に破綻のない写りをして、画質としては最近のスマートフォンのような感覚。逆に言えば、最近のスマートフォンと比べても遜色のない写りをするので、日常使いでも十分な画質だ。
撮影機能は絞られているが、インテリジェント機能である「クイックショット」機能は搭載されている。位置情報をベースに、操縦者を中心にして自動で撮影してくれる機能で、サークル、ヘリックス、ドローニー、ロケットの4種類が用意されている。
コンパクト化というよりコストダウンのためなのか、人物を認識するアクティブトラッカーはない。人物を追尾してくれるなどの撮影はできないのは残念なところ。
飛行の自由度が増しているので、今までは難しかった「自宅の敷地内」での飛行も手軽にできる。風に対する安定性も高いので、住宅街の庭で飛ばしてあさっての方向に飛んでいくことも少ないだろうし、200g以下なのでいざという時も危険性は低い。
もちろん、Fly More コンボに含まれる360度プロペラガードを装着することも忘れないようにしたい。
Fly More コンボにはほかに2WAY 充電ハブとバッテリー2個(本体付属と合わせて3個)などが含まれている。
2WAY 充電ハブはモバイルバッテリーとしても使用でき、バッテリーを挿入すると充電も行ってくれて利便性が高い
自宅の敷地内で飛ばせるので、例えば屋根や雨樋のような普通では確認しづらい場所を確認して修繕に繋げるといった使い方もできるだろうし、カメラ代わりにも使えるだろう。
安定した飛行を手軽に行えることがMavic Miniのメリットだ。画質は一般的なレベルだが十分。初心者向けの低価格モデルというとオモチャのようで操作が難しく、逆に初心者の方が難しいという製品もあるが、Mavic Miniは初心者でも簡単に操作でき、安定した飛行ができるので、初心者であればまずはこの製品からトライすべきだと感じた。