新製品レビュー

THANKO USB指まであったか手袋

USBからの給電で動作するヒーター内蔵手袋

寒い時期は防寒対策をしっかりしないと撮影どころではない。あったかインナーやダウンジャケットをしっかり着込んでぬくぬくと快適撮影、と行きたいところだが“末端”である手や足は“たくさん着込む”ことが物理的に難しく、防寒対策がいつも悩みのタネだ。

足はゴツいウインターブーツと靴下に貼る使い捨てカイロなどを使えばまだ状況は悪くないが、手に関してはグローブをゴツくしすぎるとカメラ操作ができなくなり、薄いと凍傷になる。

そんな悩み多きグローブ問題に新たな選択肢が登場した。それが「USB指まであったか手袋」(サンコー株式会社・THANKOブランド)だ。

USB給電で暖を得る

USB指まであったか手袋は指先の空いた手袋だ。指先が空いていて「あったか」とは何をおっしゃい、と突っ込みたくなるが、ポイントはなんといっても「USB」にある。

手袋の内部にカーボンヒーターが内蔵されており、モバイルバッテリーからUSB経由で給電することで発熱する仕組みとなっている。そう、これまでは自分の体温を“保温”することしかできなかった指先問題に“発熱”というふた文字が加わったのだ。

サイズは男女兼用のフリーサイズ。やわらかなニット素材でできているのでキツさは感じない。なお、モバイルバッテリーは付属せず市販のものを使用する。

カーボンヒーターを傷めないように慎重に裏返してみるとご覧の通り、手の甲上部や指の第三関節から第二関節を中心にカーボンヒーターの線が通っているのが確認できる。これによって手の甲だけでなく指まで熱が伝わりやすくなっているのだ。

カメラの使用では?

断りを入れておくと本製品はカメラ用途ではなく寒い室内や日常用途を想定したものだ。そのためカメラグローブとしての操作感を語るのはどうかと思うが、指先が出ている構造のため操作感は良い。滑り止めなどの加工はないが指が出ているのでカメラが滑ってしまうようなこともない。

電源コードはジャックタイプになっており手袋と接続する。接続は片手で行うことになるが、ちょっとだけコツがいる印象。撮影していてかじかんでしまった状態の指では難しそうなのでヒーターをONにしていなくてもあらかじめ接続しておいたほうが良さそうだ。

モバイルバッテリーとの接続はUSB Type-A。もちろん片手それぞれコードは別となるので用意するモバイルバッテリーはUSBの出力がふた口あるものがいいだろう。

装着方法としては電源コードを手に持った状態でジャケットを着て袖の中にコードを通し、手袋側のジャックとモバイルバッテリー側のUSBをそれぞれ接続する。電源コードは自宅等で固定電源から給電することも想定されているため非常に長く約2mもあるので、あまったコードはモバイルバッテリーと共にジャケットの内ポケットにまとめておくのがいいだろう。

スイッチを入れてすぐに暖かくなる

ヒーターの温度は3段階で調整可能。LEDの色が変わり設定温度がわかるようになっており、赤が45度、緑が40度、黃が38度となる。消費電力は8W(両手、5V/800mAで利用を想定)とのこと。単純計算で1万mAhのモバイルバッテリーでおよそ6時間ほど保つことになる。

気になる暖かさだが、結論から言うと室内と野外では体感が大きく異なった。

スイッチを入れると瞬時にヒーター部分が暖かくなりじんわりと手を温めてくれるのがわかる。室内での使用では45度、40度、38度とスイッチを切り替えると温度差を感じられたが、野外では差がわかりにくく、基本的には45度で使用するのが良さそうだ。

というよりも冬の野外では本製品の単体使用では寒さを完全に防ぐことはできない。そもそも指が出ていることやニット素材で密閉性が低く、余裕のあるフリーサイズのためヒーター部分の肌への密着が弱いため熱が逃げてしまっているように感じた。そのためカメラ用途で考えるのであれば防寒グローブのインナーグローブとして使用するのが良さそう。私が冬期に使用している防寒ゴム手袋と合わせてみたところ指先が切れているためか思ったよりもすんなり入った。防寒ゴム手袋の操作性も邪魔をしていない。

実際に今回はこのセットで気温0度まで下がった展望台から夜景を撮るテストをしてみた。右手をスイッチON(45度)、左手をスイッチOFFで30分程度撮影してみたが、左手がそれなりに冷えているのに対し右手がほんわかと温かいのがわかる。明確に熱いと感じるような温度ではないが、冬の厳しい寒さにはこの“ほんわか”の差が違いとなって出てくるのではないだろうか。

ただし、このインナーグローブとしての使用方法は本製品の使用想定とは異なるため、低温ヤケドなどには注意をして自己責任において使用してほしい。

まとめ

「USB指まであったか手袋」は単体で万事解決、とはいかないものの冬の指先問題に発熱という可能性を見出した。これまでカイロをインナーグローブに貼るなどの方法をとったこともあるが、使い捨てカイロの多くは氷点下近くになると発熱をほとんどしなくなるなどの問題がありグローブには適さなかった。その点、カーボンヒーターを採用する本製品はバッテリーさえあれば確実に発熱してくれるので、その“発熱”をどう“保温”するかの工夫のしがいがありそう。これから来る本格的な冬の季節で期待がもてる製品のひとつだ。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。