新製品レビュー

FUJIFILM XF16-80mmF4 R OIS WR

風景からスナップまで幅広く使える5倍ズーム

本レビューではX-T3との組み合わせで撮影をおこなった

富士フイルムXマウントシリーズの小型軽量性を最大限にいかす超万能で機動性に優れる「XF16-80mmF4 R OIS WR」が9月26日に発売された。35mm判換算で24-122mm相当となる5倍ズームレンズで、いわゆる高倍率ズームレンズのカテゴリーに属する。

この極めて使いやすい焦点距離とズーム全域で開放F値がF4固定という表現力の広さは数多あるズームレンズの中でも圧倒的に使いやすく、登場を待ち望んでいたXカメラユーザーは間違いなく多いことだろう。私もそのひとりで初めてレンズを予約して購入したほどだ。実際、販売店に聞いてみても「多くの予約でバックオーダーを抱えている状態」らしい。

X-T3にベストマッチなバランス

サイズはワイド側で長さ88.9mm、太さ78.3mmと、同クラスのレンズと比較するとひと回り小さい印象だ。Xシリーズの高倍率ズームとしてはXF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WRがあるが、長さ97.8mm、太さ75.7mmであり、長さで約9mm短くなっている。重さも440gで軽量性にも優れる。なおXF18-135mmの重さは490gだ。

本レンズは手ブレ補正「OIS」を搭載するが、その補正効果はXFレンズで最大となる約6.0段分を達成している。ファインダーを覗くと望遠側でも像はビタリと止まり安心感がパンパではない。私の手持ち撮影では80mm側で1/5秒のシャッタースピードでほぼ100%手ブレせずに撮影できた。しかし強力な手ブレ補正を持つレンズやカメラ全般に言えることだが、油断すると手ブレはなくとも被写体ブレを量産してしまうのでシャッタースピードの設定には逆に注意が必要だ。

Xシリーズには単焦点レンズが似合う「X-Pro2」やボディ内手ブレ補正を搭載する「X-H1」があるが、強力なレンズ内手ブレ補正を持つ本レンズは、ボディ内手ブレ補正を持たずズームレンズが似合う「X-T3」がベストマッチに思える。実際、X-T3に取り付けてみてもフロントヘビーにならず重量バランスはとても良い。なお539gのX-T3とXF16-80mmを組み合わせると979gとなり、超軽量とは言えないものの120mm域まで使える高倍率ズームレンズのセットとして考えると携行性はとてもいいように感じる。

デザインと操作性

デザインはズームリング、ピントリング、絞りダイヤルが適度な幅で配置されスッキリとしている。これまでレンズ内手ブレ補正「OIS」搭載のXFレンズは補正のオン/オフスイッチが搭載されていたが、本レンズは非採用。手ブレ補正のオン/オフはメニューから選択する形となった。

三脚使用時に手ブレ補正をオフにするのが面倒じゃないかと思うかもしれないが、三脚にセットするとカメラが自動的に判断して補正モードを切り替える仕組みとなっているので心配する必要はない。なによりカメラバッグからの出し入れなどでスイッチが動いてしまうような誤作動が起こり得ないのが良い。

ズーム操作は、1段繰り出し式で焦点距離80mmまで伸ばすと全長は131.5mmになる。ズームのトルク感はおそらくこれまでのXFレンズで最高の出来栄えで、適度な重さと引っかかりのない繰り出し感は撮っていないときでも、ついついズームリングを回してその感覚を楽しんでしまうほど。もちろんレンズを下向きや上向きにセットしても自重でズームが伸び縮みするようなことはない。

80mmまで繰り出した状態

フィルター径は72mmでフードは花形タイプ。フードにロック機構はないが「スッ、カチ」とはまる装着感はかなり良い印象。初期のXFレンズに感じた悪夢のようなゴソゴソ感からすると天と地の差だ。絞りリングのクリック感はやや軽めに感じる。

なお型番の「WR」が示すように本レンズは防塵防滴仕様。耐低温もマイナス10度の仕様で、降雨や降雪時にも安心して使用できる。

作例

風が通り抜ける鳥居。紙垂(しで)が風になびき太陽に掛かる瞬間を狙って撮影した。XF16-80mmの解像力は非常に高くX-T3の26Mセンサーとの相性はバツグン。F11まで絞って深い被写界深度と光条を描き出した。逆光によるゴーストやフレアーは少ないが、よく見ると画面左上あたりに薄くゴーストが確認できる。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 20mm / 絞り優先AE(F11・1/55秒・+0.3EV) / ISO 640

池の周りに咲いた小さな花。XF16-80mmは近接撮影能力に長けていてズーム全域で最短撮影距離が35cmと短い。最大撮影倍率は0.25倍。80mmという中望遠レンズのため簡易的なマクロ撮影が手軽に楽しめるレンズだ。また約6.0段の強力な手ブレ補正は近接撮影でも効果的にブレを補正してくれる。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 76mm / 絞り優先AE(F4・1/320秒・±0EV) / ISO 160

キャンプ場で見つけたジャック・オー・ランタン。背景に木々を配置し、にぎやかな画面にした。ボケの形は画面周辺部で口径食がやや目立つが、全般的には非常に素直でクセの少ないボケに感じる。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 76mm / 絞り優先AE(F4・1/200秒・±0EV) / ISO 1250

ゆっくりと身体を温めてくれる薪ストーブ。火の粉が飛ぶ瞬間を、レリーズからさかのぼって撮影できるX-T3の「プリ連写」機能で撮影した。XF16-80mmはズーム全域でF4通し。大口径とは言えないが十分な明るさがあり薄暗いシーンなどでも活躍できる。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 32mm / 絞り優先AE(F4・1/55秒・-2.0EV) / ISO 6400

泥の上にできたネコの足あと。河川敷を散歩中に見つけた被写体だ。XF16-80mmは日常的に持ち歩けるサイズ感のため、少しの外出でもカバンに入れておくとスナップ的な撮影が楽しめる。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 72mm / 絞り優先AE(F4・1/750秒・-1.3EV) / ISO 320

クリスマスを彩るイルミネーションのオブジェ。ミラーボールが回る派手な作りだった。雨のしずくに照明があたり、きれいな色のコントラストが生まれていた。XF16-80mmの強力な手ブレ補正は1/7秒くらいのシャッタースピードではほとんど手ブレすることがない。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 56mm / 絞り優先AE(F4・1/7秒・-0.7EV) / ISO 320

煌々と輝くイルミネーションを後ろボケにして撮影してみた。通常のボケではあまり感じなかったが、こうした強い光源でボケを作るとボケの内側にリング状のスジが見える。非球面レンズを使用したレンズでしばしば見られる、いわゆる「玉ねぎボケ」(年輪ボケともいう)だ。光学系に非球面レンズを4枚採用している影響だろう。

あえてミラーボールの強い光がレンズに直接あたっているカットをセレクトしたが、木の幹部分にひとつはっきりとゴーストが発生し、画面全体のコントラストがやや低下しているのがわかる。

X-T3 / XF16-80mmF4 R OIS WR / 58mm / 絞り優先AE(F4・1/13秒・-0.7EV) / ISO 320

まとめ

個人的な話で恐縮だが、私は自称“単焦点レンズ派”だ。ではなぜ今回XF16-80mmF4 R OIS WRを導入したかといえば、本レンズが「XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR」と非常によいコンビネーションになると想像したからだ。

単焦点派を自称している割に作風は望遠側が好みで、XF100-400mmは超がつくほど好きなレンズ。しかしXF100-400mmは持ち出す際にカメラバッグ内の容量がかなり奪われる。そのジレンマを抱えながら標準域を小型で軽量な高倍率ズームレンズに変更したお手軽セットをずっと夢想していたところに本レンズが登場してくれた、というわけだ。

焦点距離的には80-100mmの部分が抜けることになるが、私の場合そこにはXF単焦点レンズ史上最高傑作と思っている「XF90mm F2 R LM WR」が鎮座しているのでなにも問題はない。

と、まあ個人的な話を長々と書いてしまったが、やはり風景フォトグラファーはズームレンズでシステムを組むユーザーが多いだろう。そこで私的に風景撮影での最強セットを考えてみた。

それは、X-T3にズームレンズのXF10-24mm、XF16-80mm、XF100-400mmの3本を組み合わせるというものだ。機動力、画質、携行性、フィルターワークを含めた表現力など、どれを取っても申し分なく快適で楽しい撮影ができるだろう。

もちろん上記のようなセットでなくとも、本レンズなら単体で十分すぎるほどさまざまな撮影が楽しめるだろう。風景はいわずもがな、スナップや旅行、ファミリーユースやペットの撮影などでも機動力と描写力がいきてくる。

室内などの撮影も広角16mmの画角とF4の開放F値は、XF18-135mmよりもアドバンテージがある。「XF16-80mmF4 R OIS WR」は使う人を選ばないXマウントレンズでもっとも万能なレンズだ。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。