新製品レビュー

Canon EF600mm F4L IS III USM

軽量化と刷新された光学系が撮影シーンに与える変化とは?

キヤノンEF600mm F4L IS III USM(以降III型)は昨年12月に発売されたEFマウント用の超望遠交換レンズだ。初代のEF 600mm F4は1988年に発売され、今回紹介するレンズは初代から数えて4代目にあたる。そのうちIS付きに限ると3代目となる。白レンズという括りでは、F4.5と口径が違うもののマニュアルフォーカスのFD、NewFDマウントを含めて6代目となる。

このIII型のトピックは次のとおり。
[1]構成レンズの配置を一新して軽量化したこと
[2]フレア・ゴーストのさらなる抑制を目指しASCコーティングを構成レンズの一部に施したこと
[3]手振れ補正効果を最大5段分に進化させたこと

中でも、これまでは中央部から先端にかけて配置していた蛍石を含むレンズ群を中央付近に集め、径の大きい前玉を1枚とし光学材料全体の質量を下げた軽量化は大いに注目できる。3,920gのII型は2011年の発売で、5,360gあった初代から主に鏡筒材料を見直した軽量化をウリにしていたが、III型は光学系の変更でさらに軽量化し、約7年の歳月を経てのモデルチェンジとなった。

今秋はラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピックへ向け、スチールカメラ分野で両イベントのメインスポンサーを務めるキヤノンが最善の機材を写真家に提供しようと底力を見せつけた格好だ。

この軽量化と刷新された光学系が、“どのように撮影へ変化を与えるか”を中心にみていった。

デザイン・バランス

まず外観デザインをみてみると、これまでのキヤノン「白」望遠Lレンズの流れを汲んでいる。この「白」の塗装、今回のⅢ型には赤外線を反射させることでレンズの温度上昇を抑制する新たな遮熱塗料が採用され、外装や内部構造への温度上昇の防止に取り組んだ。

試撮影の際は陽炎の出る天候はあったが、5、6月の夏日とあってそれほどの気温にはならず、その恩恵には与れなかった。ただ、真夏の南国で撮影中、触れなくなる「黒」レンズのことを思うと、この季節は単なる「白」さだけでもありがく、さらにその「白」さに磨きを掛けるあたりに気合を感じる。

形状ではII型とは一見してその差が判りづらいが、前玉の数が減ったことにより前方形状が円錐状になり、中央から先端に掛けてはやや細身になている。

スイッチ類などの操作部はほとんど変わっていないので共通性を持たせているようだ。そして、この軽量化で感じたのは600mmという焦点距離の割に「とにかく軽い」ということだ。今回はEOS-1D X Mark IIと縦位置グリップを取りつけたEOS 5Ds Rとの組み合わせで試用したが、これらのようにカメラ側が重量級になる場合は、フロントヘビーならぬリアヘビーとなってカメラ側の重量を感じてしまうほどだった。特に三脚座をハンドルとして持ち運ぶ際や、そこを台座として平面に置いた時にカメラ側に少し傾いてしまうことがあった。

写真で各部を見てみよう。

フードの長さは、同梱フードが約20.2cm(ET-160)、別売オプションのショートフードが約10.2cm (ET-160B)だ。軽量化した新モデルではあるが、DOレンズなどで全体の短縮を目指したわけではないため、448mmという全長はII型のものと変わらない。

【2019年7月12日修正】フードの長さを17cmと記載していましたが、正しくは同梱フードが約20.2cm、オプションのショートフードが約10.2cmでした。お詫びして訂正いたします。

先端部にはかぶせ式フードを留める土手、Lレンズであることを表す赤帯が備わる。そして鏡筒が少し絞られ黒ゴムの帯にあるボタンが「フォーカスストップボタン」。AF作動時に押すことで駆動を止めるたり、カスタム設定でISのON/OFFなどの変更もできる。

次に白帯のリングは「再生リング」。プリセットしたフォーカス位置への呼び出しや、ヘリコイドを回さずモーターによる一定速度でフォーカシングを行う「パワーフォーカス」で使う。そして幅広の黒ゴムが巻かれるのがマニュアルフォーカス時のピント(フォーカス)ヘリコイド。今まで通り十分な大きさがある。

スライドスイッチ類は2か所にある。ピントヘリコイドに近い箇所は上から、ISのモードスイッチ(静止物へのモード1、流撮りへのモード2、激しい動きへのモード3)、ISのON/OFFスイッチ、フォーカスプリセットのセットボタン、フォーカスプリセットのOFF/ON/ON時電子音スイッチ、マニュアルフォーカス時の反応速度切り替えスイッチ、と並ぶ。

マウントに近い箇所には、AF/MFそしてパワーフォーカス(PF)を切り替えるスイッチ、その下はフォーカス調整レンズの動きを全域/無限遠側/近接側で制限させるファーカスリミッターだ。この上面部に52mm径のフィルターを差し込むドロップインのフォルダーが組み込まれる。

三脚座の座面にはマウント側に1/4インチ用の標準ネジ穴、先側に大型の3/8インチ用ネジ穴が光軸上に並び、その間にクイックシューなどで使うガイドピン用の穴がある。この三脚座は一脚を付けて撮影に臨む際や、持ち運ぶ際にハンドルとして握ることが考慮され、絶妙な位置と形状を持っている。三脚座環の固定ネジを緩め光軸中心にレンズを回すと、水平、垂直と90度の間隔でクリックストップがある。

ネームバッチは先代を踏襲してやや小ぶりのシルバープレートだが、フォーカス距離目盛窓と一体となりさらに控えめな存在となった。三脚座環を固定するネジの天板は蓋になっていて、開けると盗難防止用錠のソケットがある。

今回のレビューではこのレンズで撮影が想定される航空機シーンを岩国基地のフレンドシップデーや伊丹空港で、スポーツシーンは横浜で行われたトライアスロンワールドカップを、野鳥シーンは岩国基地の横を流れる今津川と都内の庭園に機材を持ち込み撮影した。カメラは前述したようにEOS-1D X Mark IIとEOS 5Ds R+バッテリーグリップ「BG-E11」を場面によって使い分けている。特に記述のない写真に関しては手持ちでの撮影だ。

シーン1:戦闘機

アメリカ海兵隊、岩国基地所属のF-18C戦闘機だ。5月の「フレンドシップデー」前日に行われた予行練習で見せた空母着艦のデモンストレーションでの1コマ。この日は雲がほとんどない晴天だったが温度と湿度がともに高く陽炎も出ている状況。

着陸進入とあって飛行速度は遅めだったが1/2,000秒のシャッタースピードではF4.5の絞りに対してISOオートでISO 160まで上がった。EOS 5DsRの50MPで見ると、コックピット周辺から着艦フックまで解像していることがわかる。超望遠ズームにない解像感を見せつけてくれ、撮影の醍醐味が得られた。当日は陽炎が出ていたため、細かい部分でところどころ不規則に滲みが出ている。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/2,000秒、F4.5、-0.3EV) / ISO 160

このF-35Bもアメリカ海兵隊、岩国基地所属の機体だ。着艦デモのF-18よりも陽の高い時間帯の撮影で、機体下面に光が回り込まない状況。高速での航過のためシャッタースピードを1/2,000秒で維持した。測光モードを評価測光にしていたので機体下面をシャドウとして潰すことなくやや明るめの露出になったが、ステルス機特有の“のっぺり”とした表面が表現できたと思う。代わりにオート設定のISO感度はISO 320まで上がっており、若干ノイズが現われたようだが、ノーズ先端から腹部、そして尾翼のエッジまで気持ち良いほどのキレを見せた。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/2,000秒、F4.5、±0EV) / ISO 320

カメラをEOS-1D X MarkⅡに替え、三沢基地所属の太平洋空軍デモンストレーションチームが駆るF-16Cを撮影。会場上空を高速航過のデディケーションフライパスのシーンだ。会場後方からの高速旋回に合わせてレンズを向けるが、恥ずかしながら右翼をはみ出させてしまった。

このカットで見る限り、尾翼周辺にフォーカスがあり、絞り値は開放絞りに近いF4.5とあって被写界深度が浅く、先端のレドーム近辺では深度内に収まっていないことがわかる。超望遠で、かつ明るいレンズとなれば、遠目の被写体でも被写界深度に気を配らなければならないとあらためて知らされた一枚だ。このようなシーンでは画面一杯に機体が入ったとしてもフォーカスを合わせたい位置に測距点を持って行くべきだ、と感じた。

Canon EOS-1D X Mark II / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/2,500秒、F4.5、±0EV) / ISO 160

着艦デモンストレーションを見せたF-18Cが離陸時にハイレートクライムを行った。

車輪が地面を離れると低高度のまま滑走路上を加速。滑走路半ばに来たタイミングで急角度の上昇を見せた。

急な姿勢変化や方向転換があっても本レンズのように重量が軽いと画面内での追随が行い易い。高速シャッターを使うことが被写体を鮮明に写す近道ではあるが、手振れ補正機能を試すため、やや遅めのシャッタースピードに落としてみた。ISのモードスイッチはモード2に設定。手持ち時の細かく動く「構えブレ」も抑えてくれ被写体追随に貢献するので手持ち撮影時に役立つ機能だ。

Canon EOS-1D X Mark II / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/2,500秒、F11、-0.7EV) / ISO 100

シーン2:旅客機

大阪・伊丹空港を離陸するANAの777-200。この日は雨こそ降らなかったが灰色の雲が一面を覆うスッキリしない天候だった。午後遅く、日没近くに薄っすらと山の稜線が見えてきた。ここでも手振れ補正の効き具合を積極的に試したく1/125秒のシャッタースピードに設定し手持ちでレンズを向ける。僅かにブレてしまったが、斜め上方向への振りでもファインダー像は安定し、無難にこなすことが出来た。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/125秒、F5.6、±0EV) / ISO 200

大型三脚にレンズを載せ、2倍テレコンバーター「EXTENDER EF2×III」を装着して満月2日前の上弦の月を撮影した。通過する航空機をキッチリ止めたかったが、月に合わせたフォーカスや大気のよどみのためか、それともシャッタースピードのためか、機体の詳細は失われたものの、月表面のディテールはISO感度がISO 1000、そして開放絞りながらも綺麗に描写できている。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM+EXTENDER EF2×III / 1200mm / マニュアル露出(1/1,000秒、F8.0) / ISO 1000

満月の夜に2倍テレコンバーター「EXTENDER EF2×III」を装着し、同じく三脚に載せた。月の出から35分、月の輝度は増しつつあるが、地平線から10度にも満たない位置にある。横方向に動く飛行機に合わせてレンズを振るか、月のディテールを見せるためにレンズを固定するか……。悩ましいところだったが、フォーカスは月を横切る直前の飛行機にAFで合わせ、画面中央に月を配置し、カメラ固定を選んだ。

闇夜に浮かぶ機体は着陸灯だけが頼りの存在で、2倍テレコン装着の悪条件にも関わらず、その点光源にEOS 5Ds Rの中央フォーカスポイントが反応してくれた。1/800秒のシャッタースピードでは止めることが厳しいと思いつつも、ISOをこれ以上にはしたくなかった。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM+EXTENDER EF2×III / 1200mm / マニュアル露出(1/800秒、F8.0) / ISO 6400

シーン3:スポーツ

トライアスロン・ワールドカップ横浜大会の前日に行われた試泳で山下公園沖を泳ぐ選手を入水路から撮影。トライアスロンでの泳法はクロールが基本だが、居場所がわかり難いオープンウォーター(外海)とあって息継ぎは自分の位置を確かめつつ前を向いて行う。腕が海面から出るところをファインダーで追い続け、息継ぎで顔を上げた瞬間に親指AFによってAFを開始した。

選手までの距離は10~15m。航空機とは違い近い距離へのAFでは調整レンズの動きも大きくなり、ここでのフォーカスキャッチが達成できるかどうかで以降の追随にもかかわる重要な局面。水しぶきなどコントラストの高いものに引っ張られる傾向があったが、それもある意味では高精度の証だろう。

Canon EOS-1D X Mark II / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/800秒、F7.1、-1.7EV) / ISO 100

ワールドカップ当日、女子エリートのバイクパートのシーン。普段はクルマが行きかう公園通りを選手集団が颯爽と駆け抜けていた。後続の選手があとに続く列線の様子を収めようと、フォーカスポイント(測距点)を周辺部に設定し、コーナリング開始の時を狙う。EOS-1D X Mark IIの測距点は全部がF8まで対応するものの、F値の暗い超望遠ズームでは周辺測距点では、デフォーカス量が多い場合などに迷いが生じることがある。ここはさすがにF4の単焦点だけあり、選手顔面にキッチリとした合焦を見せた。

Canon EOS-1D X Mark II / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/500秒、F4.5、±0EV) / ISO 320

バイクに続くランのエイドステーションで快走する選手を捉える。

ウエットスーツで走る選手は、ステーションごとに用意された水を口に含む前に冷却のために頭から浴びる。バイク走行シーンと違い身体が上下動するランは、本来は速いシャッタースピードで写し止めたい。ペットボトルから流れ落ちる水玉も止めるとなるとなおさらだ。しかし、EOS 5Ds Rの高画素をいかそうとISOは上げずに、経験上ギリギリと思う1/1,250秒に設定し、コースの低い位置から全身を狙った。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/1,250秒、F4.0、±0EV) / ISO 100

シーン4:野鳥

身近にいる野鳥にもレンズを向けた。

岩国基地の横を流れる今津川の河口付近にいるサギが飛び立とうと翼を広げた。30~40mほど離れた距離だったが、開放絞りとあってフォーカスの合う背の部分以外はアウトフォーカスに。背の付近の白い羽は、レンズの描写能やブレが原因でそのティテールを失わせてしまう可能性もあったが、背景の黒土部分の影響を避けようとマイナスの露出補正も行っていたので、羽一本一本の質感が判る解像が得られた。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM / シャッター優先AE(1/1,000秒、F4.5、-1.3EV) / ISO 125

羽を広げるサギとは別個体のサギが、餌となる小魚をついばんでいた。これをアップで捉えようと1.4倍のテレコンバーター「EXTENDER EF1.4×III」を装着しレンズを向ける。浅瀬をゆっくり歩き回るが、捕食の際は素早く嘴を水面に突っ込む。そんな瞬間も撮影出来たが、嘴にくわえられた魚を見ていただこうと、このカットを選んだ。

テレコンバーター装着に関わらず、サギの瞳に測距点が来るようにしたこの場面は、AF合焦・追随ともにも問題なかった。絞り開放ではあるが、合焦しているサギの瞳、嘴、頭部の羽毛はキレのある描写を得た。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM+EXTENDER EF1.4×III / 840mm / マニュアル露出(1/1,600秒、F5.6、±0EV) / ISO 200

各地でカルガモ誕生の話題が出た春。梅雨入り前の庭園にも成長した幼鳥の姿があった。一脚の使用が許された庭園の池の脇から、親鳥の後を追う体長15cmほどの幼鳥にレンズを向けた。曇り空だったが池の水面をつややかに新緑が反射し鮮明な色彩で飾ってくれた。カメラから10mほど先を泳ぐ姿を追うことは自体はそれほど難しくはないが、生え揃い始めた羽毛のディテールを表現すべく、一羽がこちら向いた瞬間の瞳へのフォーカシングは気を使う撮影であった。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM / マニュアル露出(1/640秒、F4.0) / ISO 200

幼鳥の群れは池の散策を終えると、兄弟鳥と眠りについた。2倍のテレコンバーターを装着し、画面一杯となるようなアングルで臨んだが、合成F値が8となり、EOS 5Ds Rでは中央1点の測距点のみが有効となる。

どの幼鳥を主題とするかをマニュアルフォーカスで探りながらの撮影となったが、F8と暗めながらマニュアルフォーカス時はピントの山も掴みやすく、正面を向いた一羽が嘴を開けた時にすかさずヘリコイドを回してシャッターレリーズした。今回から電子化され応答速度を3段階に変えられるヘリコイドを回してのマニュアルフォーカスは、いずれもリニアに反応し違和感は感じることはなかった。

Canon EOS 5Ds R / EF600mm F4L IS III USM+EXTENDER EF2×III / 1200mm / シャッター優先AE(1/320秒、F8.0) / ISO 500

絞り値ごとのボケ具合

最後にボケ具合を見る。

このレンズでわざわざボケを撮影する状況も少ないとは思うが、参考までに開放絞りのF4からF5.6、F8と一段ずつ絞ってみた。

当然ながら開放絞りの画像のボケが溶けるように再現される。しかし、周辺減光もあって四隅は僅かに暗くなり、彩度が乗るこの被写体では少しばかり色乗りが減少するようだ。以降、絞っていくと線状のボケが徐々に見えてくる。2段絞ってF8となると輪郭が現れつつ、ざわつき感も出てくるが、状況を伝えるにはこの辺りの絞りが妥当だろう。

F4.0
F5.6
F8.0

まとめ

600mmの画角は近年、廉価なズームレンズの出現もあってアマチュアユーザーの間でもかなり身近な存在になった焦点距離だ。しかし、飛行場周辺などで、時に大勢の撮影者がいる現場を見渡しても、600mm F4クラスのプロユースレンズを見かけることはごく稀だ。

画角の特殊性もそうだが、何より製品の価格が高いのだ。毎週のようにスポーツイベントを撮影するプロの写真家でも、本レンズの導入については相当に悩むことだろう。しかし、趣味であれ業務用途であれ、カメラとレンズを道具として使用し、また写真を愛し続ける人々にはわかる。このレンズが有する描写性能が必要となる場面が確実にやってくる、と……。

解像に妥協することなく焦点距離と明るさを確保し、さらに重量面や鏡筒・光学材料に配慮した、高い性能を誇るレンズはどうしても高額になってしまう。しかし、やはり価格なりの魅力があることも確かなのだ。175万円(量販店実売価格)という価格は出費として厳しいが、しかし澄んだファインダー像や素早く追い続けるフォーカス、そして現段階で最良と思われる解像などに、その魅力はしっかりとあらわれている。

何よりも、一層の軽量化が達成された本レンズは、現場での取り回しの良さだけでなく、撮影が積み重なった際の身体への負担軽減も明らかだった。あわせて高温化対策の新塗装は画質への配慮だけでなく、炎天下で本体に触れる必要がある撮影シーンを想定した配慮でもある。このほか、新コーティングの採用、短くなった最短撮影距離など、ブラッシュアップが撮影シーンでの、“あとちょっと”できいてくる。

スポーツ、野鳥、飛行機、風景などでの活躍が期待できる本レンズ。写真のクオリティーだけでなく、撮る度に気持ちの高揚が得られることもまた、このレンズならではの魅力だ。

撮影協力
・日本トライアスロン連合
・目白庭園

井上六郎

(いのうえろくろう)1971年東京生まれ。写真家アシスタント、出版社のカメラマンを経てフリーランスに。自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。この4月「今すぐ使えるかんたん 飛行機撮影ハンドブック」を技術評論社より刊行。日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。