新製品レビュー

freehandsメンズフォトグローブ ソフトシェル ブラック V3.5

防水・防風はもちろん汚れが気になるシーンでも活躍

撮影時に目が重要であることは言うまでもないけれども、チャンスに素早く反応して機材を操作できる手さばきの良さも、また一瞬を捉えるための大切な要素だ。通常の撮影シーンではあまり意識することは少ないものの、寒冷地や素手で機材を取り扱うのが難しいシーンで活躍するアイテムに、フォトグローブが各社よりラインアップしている。

今回は、そんなフォトグローブ製品の中からV3.5にアップデートされた「freehandsメンズフォトグローブ ソフトシェル ブラック」をピックアップした。毎年、少しずつ進化を遂げてきている製品で、2018年版のバージョンアップポイントは、手首側全周にゴムが入り、雨風の侵入をより防止する構造となったこと。このあたりの進化も含め、その使用感をレポートしていきたい。

どんなところで使うか?

フォトグローブの役割といえば、まず冷え込みの厳しいシーンで手指の冷えを防止し、快適な撮影を実現することにある。

そこで、晩秋の八ヶ岳に持ち込んで、その防寒性能がどれほどのものか体感してみた。機材は35mm判フルサイズの一眼レフカメラを使用した。

夕暮れが迫りつつある時間帯に、まずは素手で撮影を続けてみたところ、ボディが金属製であるためか、おどろくほどの早さで手から熱が奪われてくことが実感された。構わず撮影を続行したものの、日の傾きと同時に気温は更に冷え込みを増し、身に寒さを覚える状況となってきた。と、それと同時に手もかじかんできて、指は次第に思うように動かなくなってきた。

はたと気づいたのだが、この時点で露出補正などの細かな操作をおっくうに感じている自分に気づいた。こうなってくると、もうだめだ。次第に絞り値やピント位置の調整で指が思うように動かずに「このあたりで大丈夫だろう」という大雑把な判断をするようになってきてしまった。

撮影自体は続けたものの、後から見返したところ、そうした状態で撮影したものは、“その程度の出来”にとどまることが痛感された。この時「あぁ、フォトグローブというのは、とても合理的な必要性から誕生したアイテムなのだな」という実感とともに、細かな操作では指先がいかに重要な役割を果たしているのかに、改めて気づくこととなった。

理解したところで、グローブを着用。表面にナイロンが採用されているため、まず風を通さないことが有難い。しかもV3.5では手首まわり全周がカバーされるようになっており、手首側からの冷気や水の侵入をしっかり防止する構造となっている。これだけでも不要に体温が奪われることがない。

さらにグローブの上からソフト(ハード)シェルの袖口を絞って着用すれば、さらに強くなる。手首まわり全周がしっかりとカバーされていることで、固定もしやすかった。

素手と着用時の違いを比較

グローブ着用の前と後では手の冷え方が目に見えて変わった。風や冷気で体温が奪われなくなった分、手の感覚が回復。

では、肝心の操作性はどうだろうか。

ソフトシェルグローブは親指と人差し指部分が薄手のインナーと他の指と同じ複層構造のキャップの二重構造となっている。細かな操作が必要なシーンでは、必要に応じてキャップを外して対応できる構造だ。

親指と人差し指のキャップを外したところ。

キャップをした状態だとどうしても指先が分厚くなるし、感覚も鈍くなる。当然のように、各ボタンを押している感覚が不鮮明で、素早い操作は難しかった。

そこで、人差し指だけでも外したところ、だいぶ操作がしやすくなった。親指の役割を電子ダイヤル操作まわりに限定してしまうのならば、キャップを外すのは人差し指だけでもいいかもしれない。

キャップをした状態
キャップを外した状態

操作ボタンの操作に配慮して指先部分のみを外せる構造が採用されているわけだが、この着脱は思いの外、慣れが必要だった。

キャップ自体がタイトなためか、外したはいいが、あらためてはめる際にまごつくことが多かった。装着時にキャップ部をひっぱるためのベロもついているのだが、反対側もグローブをはめていると、うまくつかめずに装着に難儀してしまった。次第に、どうせすぐに外すのだからとキャップを外したまま行動するシーンが多くなっていた。

撮影時以外のシーンでも

山岳の場合、冷えるからといって手をポケットなどに入れて歩くことは危険をともなう。転倒した際に危ないからだ。そして、想像以上に山道は足元が悪い。注意していても岩で滑ったり、足をとられることがある。空気中の水分が木や岩に付着して、うすく氷がはっていることもある。

そういった意味で、両手は必ず空けておく必要がある。カメラもぶらさげていたくないくらいだ。ぶつけないように、とバランスをとって歩いていると、かえって危ない。機材に気をつかっていることで、かえってアンバランスになり転びやすくもなってくるからだ。

素手で触ると濡れたりざらついた木の表面で棘がささったりするケースもあるため、グローブがあったほうが何かと便利だ。手のひら側にはグリップパターンがほどこされているため、滑らかな岩でも掴みやすく、すべりにくかった点は想像以上に助けられた。

濡れた岩やささくれだった木肌にふれても平気。

汚れても、ちょっとはたけば、よほどひどい汚れでなければ落ちるため、機材を汚してしまう心配も少ない。ボディが防塵防滴に対応していれば、さらに安心だろう。

砂汚れが付着した状態。
少しはたいたところ。

うっかり水につけてしまっても

機材のセッティングや移動時にうっかりグローブを水場に落としてしまうこともある。今回、ついうっかり湖面に落としてしまい、しかも手がとどかないところにいってしまったが、回収するための棒を探し回っている間も、撥水性があるためか、取りに戻るまで浮いていてくれた。

無事に救出に成功。表面がしっかりと水を弾いていることがわかる。キャップを外していたため、若干インナーに水濡れを感じたが、それ以外の部分への浸水はなく、すぐに着用して使用することができた。親指と人差し指部の開閉部からの浸水の心配も、そこまで神経質にならなくて良さそうだ。

まとめ

撮影を続けながら、どのようなスタイルが最適なのかを試行錯誤していたが、主要なダイヤル操作は右手でのオペレーションが主体で、左手側はほぼズームとピントリング操作のみとなることから、左手のキャップはつけっぱなし、右手も常時外したままで行動するシーンが最も多かった。

もちろん、機材を完全に収納して移動に集中する場面では両手ともにキャップをつけた状態に。多少煩雑だけれども、2役の使い分けができるのは、やはり大きいと感じる。

素手とグローブ装着では手の冷え具合が大きく異なる。かじかんで操作がおっくうになったり機材に体温をもっていかれるくらいなら、多少煩雑でも、やはりグローブは装着しているべきだ。いいなと思った被写体に出会った時に手が冷えていて、撮りたい瞬間を逃してしまっては意味がない。

利点は他にもあった。今どきの製品らしくタッチパネルにも対応しているのだ。スマートフォンはもちろん、タッチパネル搭載機でも使えるため、ピント位置を画面上で操作できる機種では便利に使えると思われる。

それに何より嬉しいのが、冷えや汚れといったことに注意を向ける必要がなくなることで、被写体の観察に対する集中力が向上したことだ。撮影カット数も大幅に伸び、あっという間に記録メディアの交換となる。RAWとJPEGを同時記録していることももちろんあるが、32GBを2時間弱の間に撮りきってしまうペースだった。グローブ使用前は32GBのカードでも余裕じゃないか、なんて思っていたのに……。

本製品はすっきりとしたデザインでまとまっており、色調もマット調のブラックで統一されているため、普段着に組み合わせても違和感がない。大げさな印象がないため、撮影シーンだけでなく普段使いでも活躍してくれそうだ。

本誌:宮澤孝周