ミニレポート

ロモグラフィー「DigitaLIZA+」

スマホ・デジカメで手軽にフィルムスキャン ロモらしい仕組みも魅力

現像したフィルム、みなさんどうやってデジタル化しているのでしょう。SNSに写真をアップしようというとき、もっと手軽にスキャンができたら……。長年フィルムスキャンに悩んでいたわたくし、「DigitaLIZA+」を発売とともに購入、早速使ってみました。

この「DigitaLIZA+」、ぜひおすすめしたいのは、以下のような方です。

・とにかく手軽にスキャンしたい人
・部屋にこれ以上、物を増やしたくない人
・フィルムカメラ好き。特に中判フィルム(120フィルム)でも写真を撮る人

このたび発売となったロモグラフィーの「DigitaLIZA+」は、機能はシンプル、カメラバッグの隅に入れても持ち運べるくらい、コンパクトなフィルムスキャナーです。スキャン自体にはスマートフォンのカメラ、もしくはデジタルカメラを使用します。

パッケージングには「DigitaLIZA MAX」と「DigitaLIZA+」の2種類があり、「DigitaLIZA MAX」の方にはスマートフォンスタンドが付属し、三脚なしでも、フィルム面と水平にスマートフォンのカメラを固定できます。スマートフォンのカメラでスキャンを考えている人には「DigitaLIZA MAX」がおすすめです。

筆者は、スマホ・デジカメとも三脚を使って固定するか、手持ちで撮影し、多少の歪みは後から画像処理で直そうと考え、スマートフォンスタンドなしの「DigitaLIZA+」の方を入手しました。

どうやって使うの?

「DigitaLIZA+」は大きく分けて、バックライト部分と、水準器付きのフィルムホルダーの、2つの部品から構成されています。あと、135フィルムの24×36mmエリアのみをスキャンするための標準フィルムマスクと、127フィルムマスクも同梱されています。

DigitaLIZA+のパッケージ内容

機能はいたってシンプル。言ってみればライトボックスの上にフィルムを載せて、それを上から撮影するのと理屈は同じなのですが、この「DigitaLIZA+」の強みは、フィルムホルダーの完成度にあります。

スキャンに必要な要素のみで構成されたDigitaLIZA+本体

バックライト部分とフィルムホルダーはマグネットで連結されるようになっており、赤いノブでフィルムをライトボックスの上まで送って使用します。

フィルム送りは引っ掛かることもなく滑らかに動きます。逆戻りもできます

特筆すべきはフィルムの平面性です。今まで数台、簡易スキャナーを使ってきた経験から言うと、フィルムキャリアにフィルムを挟み込んでから、スキャナーの中に差し込むタイプの簡易スキャナーは、手軽な反面、フィルムキャリア自体に多少の遊びがあるものもあって、フィルムの反りがそのままスキャン結果の歪みとして反映されてしまうこともありました。

「DigitaLIZA+」は、ホルダーの細い溝に沿うようにフィルムが送られていくので、反りは綺麗に伸び、フィルムは平面を保ちます。本格的なフラットベッドスキャナーと同レベルとまではいきませんが、簡易スキャナーにして、この平面性は“買い”ではないでしょうか。

中判フィルムに関しては対応しているスキャナーが少なく、筆者も長年頭を悩ませてきましたが、「DigitaLIZA+」は極めてシンプルなやり方で、中判フィルムのスキャン(複写)を可能にしました。

135フィルム用のホルダーを外すとこの状態になります

バックライト上の、35mmパノラミック・ディフューザー部分を外すと、そのまま中判フィルムを挟み込めます。四隅近くに強力な磁石がついており、フィルムの四隅をしっかりと張ることで、平面を出す仕組みです。あとは真上からお手持ちのデジタルカメラやスマートフォンで撮影するだけ。6×4.5、 6×6、 6×7フォーマットのスキャンが可能です。

35mmパノラミック・ディフューザー(白いパーツ)部分を外したところ。簡単に外せます
四隅のマグネットにご注目。しっかり留まります
この上からカメラ/スマホで撮影します。今回はRICOH GR III/IIIxをミニ三脚でセットしました

DigitaLIZA+はあくまで簡易スキャナーのため、ネガのスキャン後には、自分で色を反転しなければなりません。本格的にやろうとすれば画像編集ソフトを扱う必要がありますが、お手軽な方法としては、iOS/Android用の「NEGAVIEW PRO」アプリで好みの色調に反転し、カメラロールに保存してから、iOSであれば「写真」アプリで台形補正やトリミングを行うのが簡単そうです。

参考:スキャン&仕上げ例
DigitaLIZA+に35mmのカラーネガフィルムをセットして、デジタルカメラ「RICOH GR III」で撮影
撮影データを「NEGAVIEW PRO」でネガポジ反転&色調整しました。カラーネガでも簡単に思い通りのネガポジ反転像が得られる便利アプリです
こちらは同じコマをスマートフォン(iPhone SE)で撮影し、同じアプリでネガポジ反転&色調整したものです。色味の違いはアプリ上の設定によるもので、デジタル化に使ったカメラによる複写画質の違いがポイントです

さすがロモ、パーフォレーションまでスキャン可能

付属の35mmフィルムホルダーには、実にロモグラフィーらしい利点があります。フィルムホルダーの開口部が24×36mmの撮像範囲より幅広く作られており、パーフォレーションの部分までスキャンできるのです。ロモグラフィーの「スプロケットロケット」など、スプロケット穴まで撮影できるカメラをお持ちのユーザーは、ぜひこの「DigitaLIZA+」を試してほしいです。

真四角フォーマットで、パーフォレーションの部分まで写し込めるローライフレックスSL26のネガも、うまくスキャンできました。(筆者は126カートリッジに長巻フィルムを詰めて使用しています)

スキャン時にパーフォレーションまで写しこむと、いかにも「フィルムで撮りました!」という雰囲気が出せるので、新しくフィルム撮影を楽しむようになったフィルムカメラユーザーにもおすすめですし、手軽にデジタル化できるという点ではベテランユーザーにも便利なはず。フィルムカメラユーザーが幅広く使えるアイテムではないでしょうか。

ありそうでなかった新スキャナー「DigitaLIZA+」は価格も7,980円とお手頃。(「DigitaLIZA MAX」の方も9,980円)。今回は一目惚れで買ってみましたが、1台持っておいて損はないと思いましたので、フィルムカメラライフのお供にぜひどうぞ。

柊サナカ

小説家。日本語教師として7年間の海外勤務を経て、第11回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉で2013年デビュー。著書に、老舗クラシックカメラ店を舞台にしたカメラミステリー、「谷中レトロカメラ店の謎日和」(宝島社)シリーズ、「天国からの宅配便」(双葉社)等々。 カメラ愛好家として、カメラ雑誌・Web記事でも連載多数。2022年夏頃に、大判カメラを使う三人組の女子、写真学校を舞台にした小説を発売予定。