交換レンズレビュー
FE 28mm F2
FE初のコンバーターレンズシステムを試す
2016年1月29日 12:56
ソニーの「FE 28mm F2」(SEL28F20)は、35mmフルサイズ対応のEマウントレンズであり、主に、同じく35mm判フルサイズセンサーを搭載する同社のミラーレス一眼カメラ「α7シリーズ」に向けて用意された交換レンズである。
焦点距離は28mm、開放F値はF2という、明るい単焦点レンズであるのだが、ポイントは本レンズが、「ツァイス」や「G」などの称号を冠していないノーマルな「ソニーレンズ」に分類されているところ。
α7シリーズ用のレンズも随分とラインナップが充実して選択肢が広がったのは嬉しいことだが、初代α7とともに登場した標準ズームの「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」と、高倍率ズームの「FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS」を除くと、いわゆる高級レンズであるツァイスレンズやGレンズばかりが登場し、価格的にやすやすと手を出すことができないところが難点だった。
スナップ撮影などの普段使いで使用頻度の高い焦点距離の単焦点レンズだけに、優しいお値段かつ実用十分な描写性能であってくれれば、それほど喜ばしいことはない。というわけで、期待の単焦点レンズ、その実力の程をじっくり見ていきたい。
デザインと操作性
外観はNEXシリーズ初期から受け継がれてきた、Eマウントレンズ共通の筒形デザインとなっている。鏡筒にスイッチやボタン類は一切なく、ツァイスやGの刻印といった装飾もないため、かなりシンプルな印象だ。
しかしながら、ピントリングを含めてブラックに塗装されたアルミニウム合金を纏っているため、高級感はなかなかのもの。高品位なα7シリーズに装着してもデザイン上のバランスを崩すことは全くない。
全長は60mm、最大径は64mm、質量は約200g。F2の明るさをもつ35mmフルサイズ対応レンズでありながら、かなりコンパクトにまとめられているので携帯性は抜群。大きさ、重さについてもα7シリーズとよくマッチするのは嬉しい。
本レンズ唯一の可動部分であるピントリングはトルクこそやや軽めであるものの、十分な幅の広さが確保されているため、手動でのピント合わせは問題なく、操作はしやすいと感じた。最短撮影距離は、AF時には29cmであるが、MF時には25cmとなるため、被写体に近づいて撮影する場合には特にピントリングを使用する機会が多くなる。
屋外での使用を考慮し、ほこりや水滴の浸入を防ぐよう、防塵防滴に配慮した設計がなされている。
遠景の描写は?
レンズ構成は8群9枚で、高度非球面レンズ(AAレンズ=advanced aspherical)を含む非球面レンズ3枚、EDガラス2枚が採用されており、これによって小型設計ながらF2の明るさを実現している。
解像感に関して、開放F2では、特に画面周辺においてシャープネスがいくらか不足して甘さが残るといった結果であったが、絞り込むほどに改善されてゆき、F5.6で画面全体の解像感が完全となる。その後はF16まで絞り込んでも画質に変化はなく高い解像感とシャープネスを維持するが、これはα7シリーズが搭載する回折低減処理による恩恵だと思われる。
開放F2での解像感がやや甘いとはいっても、今回使用したα7R IIは約4,240万画素の超高画素機であるため、画像を拡大するとレンズの特性が克明に映し出されてしまうという事情によるものである。通常の使用条件であればこれでも十分に高性能であるといえるだろう。
小型化の影響かもしれないが、少し気になったのは開放F2付近で周辺光量の不足がやや大きめである点だ。ただし、今回の試写では、ボディ側のデジタル処理である「周辺光量補正」をOFFにしているので、これらをONにすれば周辺光量の不足は大きく改善される。場合によっては、意図的に周辺光量補正をOFFにしてビネット効果を味としてとらえるのもよいかも知れない。
また、「倍率色収差補正」についてもレンズ補正はOFFで撮影したが、特に目立った色収差の発生は認められなかった。EDガラス2枚の採用によって、色収差は光学的にもよく補正されているようだ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
前述のとおり、最短撮影距離はAF時に29cm、MF時には25cmである。フルサイズ対応で焦点距離28mm開放F2クラスの単焦点レンズでは、AF時でも最短撮影距離25cm程度というのが一般的なので、AF時の撮影距離に制限があるのは少し不満を感じる。
ただ、それでも絞りを開いて被写体に近づいて撮影すれば、フルサイズ対応の大口径レンズらしい大きなボケを得られることに違いはない。小型化に注力したレンズでは、えてしてボケが固くなりがちであるが、本レンズではそのようなこともなく、背景に向かって柔らかく溶け込んでいく美しいボケ味を楽しむことができた。
素直なボケ味はある程度距離をとって絞り込んで撮影しても変わらず維持されるものの、植物の枝が複雑に絡む場合など、シーンによっては2線ボケが発生することもあった。しかし、これも目障りになるほど大きな問題となることはほとんどなく、広角レンズのボケ味としては優秀な部類であるといっていいだろう。
逆光耐性は?
強い光源である太陽を画面の左上に配置して、太陽を画面内に入れた場合と、太陽が画面内にギリギリ入らない条件で撮影をした。いずれもゴーストやフレアが最も発生しやすい厳しい逆光条件である。
結果として、太陽が画面内入った状態でも、入っていない状態でも、ゴーストの発生、または画面のコントラストを低下させるようなフレアの発生は、まったく見られなかった。逆光耐性を見るための結果としては、抜群に優れているといえるだろう。
本レンズに限らず、ここのところソニーから発売されたレンズは非常に優れた逆光耐性を有しているという印象が強い。これは、コーティングの技術向上はもちろん、レンズ構成や鏡筒内において不要な反射を徹底して防ぐ設計をしている努力が偲ばれ、大変に好ましいことである。
作品
大口径ながらコンパクトで取り回しがよく、猫をローアングルで撮影するのにも楽だった。フルサイズ対応の広角レンズだけあってボケは大きく、立体感のある描写が可能である。
花壇に咲いていた花を開放F2で撮影。目についたものを何気なく写すことができるのは、コンパクトで明るい28mmである本レンズの持ち味であると思う。
F2という実用性の高い開放F値は夜の撮影に効果を発揮してくれる。α7R IIはボディ内手ブレ補正を内蔵し、高感度性能も高いので、組み合わせれば相当に暗いシーンでもシャープに写すことができる。
「レンズ補正」の「周辺光量補正」をOFFにして撮影した。絞り開放付近での周辺光量落ちはやや大きめであるが、逆手に取ればむしろ印象的な作画ができる。同時に、ホワイトバランスを「日陰」にしてトイカメラのような効果を狙ってみた。
コンバーターレンズ(別売)
マスターレンズの描写性能を大きく損なわずに焦点距離を短縮できるのは、専用設計のコンバーターの強みといえるだろう。
ウルトラワイドコンバーター(SEL075UWC)
主題を大きくしても、背景を広く写すことができる超広角レンズ。絞り開放での撮影であるが、自然なボケ味は主題を邪魔せず、自然に溶け込んでくれる。
最短撮影距離は22cmと、マスターレンズ単体の場合よりも近くなる。わずかな距離の差で被写体の大きさが大きく変わる超広角レンズでは、撮影距離の短縮は重要なことである。
まとめ
スナップ撮影などで馴染みのある、広角28mm・開放F2の単焦点レンズという設定であるが、フルサイズミラーレス機であるα7との連携で、画質的にもサイズ的にも、大変素晴らしいバランスをもったレンズが登場してくれたという印象。ちなみにこれは、筆者がα7 IIのユーザーであることからきた感想である。
決してオマケ的なアクセサリーではなく、画質に満足できる、焦点距離21mmのウルトラワイドコンバーターと、対角180度のフィッシュアイコンバーターが用意され、1本で3つの形態を利用できる単焦点レンズであるところも素晴らしい。
本レンズのように実用性が高く、かつ手の届きやすい価格帯の(ツァイスでもGでもない)「ソニーレンズ」がもっと多く登場してくれれば、α7シリーズの活躍の場もさらに広がるのではないかと思うのである。