交換レンズレビュー

小さくて軽い28mm特集【第4回】パナソニックLUMIX S 26mm F8

スナップ撮影がはかどるシンプルな機能・操作性

AF対応の28mm単焦点レンズを順次紹介していきます。カメラメーカー各社がミラーレスカメラ用としてラインアップする28mmレンズのうち、比較的小型軽量なものをピックアップしてみました。

今回はパナソニックの「LUMIX S 26mm F8」のレビューをお届けします…が、実は本レンズ、焦点距離が28mmでもなければ、AF(オートフォーカス)レンズでもありません。少々イレギュラーになりますが、なかなか面白いレンズですので番外編として扱わせてください。

外観・仕様

外形寸法はφ67.1×18.1mmで、質量は約58gです。いわゆるパンケーキタイプのレンズですが、それにしても薄さと軽さが際立っています。

この薄さと軽さは、本レンズがAF機能をもたないMF(マニュアルフォーカス)専用レンズであり、絞りがF8固定で調整機構をもたず、5群5枚というシンプルなレンズ構成であることが関係しているのでしょう。

操作系はフォーカスリングのみという、これまたシンプルな構成です。ただしMF専用レンズですので、このフォーカスリングの存在は非常に重要です。MFというと難しく感じてしまうかもしれませんが、被写界深度がかなり深いこともあり、カメラ側のMFアシスト機能を使えば比較的簡単にピントを合わせられます。

同梱品はリアキャップのみで、フロントキャップもレンズフードもありません。徹底したシンプルさには、ある意味、潔さすら感じます。

作例

全体的にかなりシンプルなレンズですが、写りはなかなかのものです。高性能レンズのような鋭いシャープネスはありませんが、スナップ撮影などではむしろ好ましく感じられる程よい解像感になります。作風によっては案外はまることもあるのではないでしょうか。

パナソニック LUMIX S9/LUMIX S 26mm F8/プログラムAE(1/200秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 100

日陰で休憩中の猫を撮らせてもらいました。被写界深度が深いとはいえ、被写体に寄って写せばそれなりに背景はボケます。そして、そのボケが思いのほか綺麗なことに驚かされました。羽根式の絞りではなく、完全円形絞りになっていることが、良い方向に影響しているのかもしれません。

パナソニック LUMIX S9/LUMIX S 26mm F8/プログラムAE(1/30秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 640

個人的に気に入っているフォトスタイル「LEICAモノクローム」にして撮影しました。抑えきれていない諸収差による描写の甘さと、「LEICAモノクローム」の画作りが妙に相性良く、次々とスナップ撮影を楽しみたくなります。潔いほどシンプルなのに、とても使いでがある不思議なレンズだと思いました。

パナソニック LUMIX S9/LUMIX S 26mm F8/プログラムAE(1/30秒、F8.0、+1EV)/ISO 100

まとめ

今回は試しませんでしたが、焦点距離26mm・絞り値F8の本レンズでピントを合わせる位置を3m程度に固定すれば、概ね手前1.5mあたりから無限遠までの範囲が被写界深度に収まります。これを利用すればノーファインダーでの撮影も可能になることから、本レンズがまさしくスナップシューターであることを実感しました。

高性能レンズと比べれば、描写性能に物足りない部分があるのも確かですが、メーカー希望小売価格が3万1,900円であることを考えれば、その不満も解消されるのではないでしょうか。

展開著しいLUMIXのフォトスタイルと最適な組み合わせを模索することで、意外なほどに肌に合う相棒となる可能性を秘めているように感じます。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。