交換レンズレビュー

キヤノン RF70-200mm F2.8 L IS USM Z

目を見張る高画質 動画も意識した大口径望遠ズームレンズ

キヤノン「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」は、35mmフルサイズ対応のRFマウント用大口径望遠ズームレンズです。

先行して登場した「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」と同じく、パワーズームアダプター「PZ-E2/PZ-E2B」を取り付けられるのが特徴のひとつで、その意味では、パワーズームアダプターに対応した高性能大口径ズームレンズの第2弾ということもできます。

しかし試写してみた感想としては、ただ単に動画対応を目指したというだけにとどまらず、レンズ本来の素性の良さとして、かなりの好印象を残す名レンズでもありました。

外観と操作性

本レンズの最大径×長さは約88.5×199mm、質量は約1,115g(三脚座除く)となっています。質量こそ異なりますが、外形寸法は同じパワーズームアダプター対応レンズである「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」とまったく同じ。共通の外装を採用しているのですね。

ということで、パワーズームアダプター「PZ-E2」「PZ-E2B」の取り付け位置や方法もまったく同じ。パワーズームアダプターを装着すれば、低速から高速まで、動画撮影を想定した一定速度でのズームが可能になります。ちなみに本レンズはインナーズームですので、ズーミングしてもレンズの全長が変わることはありません。

パワーズームアダプター「PZ-E2」「PZ-E2B」が取り付けられます

外装が共通ですので操作性も共通になります。操作リング類は、前方から順にコントロールリング、フォーカスリング、ズームリングの順に装備され、さらに後方には動画撮影に便利なアイリス(絞り)リングも装備されています。

アイリスリングは「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」と同じで、クリックの有無を設定するようなレバーやスイッチはなく、常に無段階という仕様。パワーズームアダプターの装着を考慮してのことだとは思いますが、動画撮影では良くても、静止画では意図せず絞り値がずれてしまい、正直言って使い良いものではありません。静止画撮影時はこれまで通り、カメラボディのコマンドダイヤルで設定した方が良いと感じました。

鏡筒左側下方にはアイリスリングをロック/解除するレバーが設けられています。アイリスリングを「A」に設定するとき、または「A」の位置から「F22」以降の絞り値に設定するときに使うものですが、「A」に固定することで上記のコマンドダイヤルでの絞り値設定ができるようにもなります。

それより手前側のスイッチ類は、上から撮影距離範囲切り替えスイッチ、フォーカスモードスイッチ、手ブレ補正スイッチ、手ブレ補正モード選択スイッチの4種類が並びます。上位クラスの望遠ズームレンズとして十分な装備だといえると思います。

レンズフードとして「ET-88C」が付属します。

ロックスイッチを備えた立派な造りのレンズフードで、偏光フィルターや可変式のNDフィルターなどを操作するための窓も設けられています。なお、フィルターサイズは「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」と共通の82mm径ですので、複数サイズのフィルターを用意する必要がありません。

解像性能

ワイド端70mmでの撮影です。絞りを開放F2.8にして平面的な建築物の撮影をしてみました。結論から言ってしまえば、絞り開放とは思えないくらい、画面全体で素晴らしいくらいの解像感が得られています。画面の中央から周辺に至るまで、シャープネス、コントラストともに安定しており、申し分なく高い状態です。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/70mm/絞り優先AE(1/1,000秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 100
拡大(中央)
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望遠端200mmでの結果はどうでしょう? 同じく絞り開放F2.8での撮影ですが、こちらも画面全体で非常に良好な解像感が得られており、中央と周辺の差はほとんどないという素晴らしい結果です。厳密に言えば4隅でほんの少しだけ解像感の低下が見られますが、大伸ばしのプリントでも問題を感じることは「まずないだろうな」という程度です。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/200mm/絞り優先AE(1/250秒、F2.8、+0.3EV)/ISO 100
拡大(中央)
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キヤノンが誇るLレンズのなかでも極めて優秀な部類で、それどころか他社の並み居る “ 70-200mm F2.8 ” のなかでもトップクラスの性能なのではないかという印象でした。

近接撮影性能

近接撮影性能については、ワイド端と望遠端で最短撮影距離が変わるタイプのレンズです。

ワイド端70mmの最短撮影距離は0.49mで、最大撮影倍率は0.2倍。設計の自由度が高くなった今どきのミラーレスカメラ用のレンズとしては、まずボチボチの性能と言ったところだと思います。しかし、Lレンズとしての高画質を保障しながらのことですので、そうした意味では信頼に足る優れた近接撮影性能だと言えるのではないでしょうか。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/70mm/絞り優先AE(1/100秒、F20、+1.0EV)/ISO 6400

一方で、ワイド端200mmの最短撮影距離は0.68mで、最大撮影倍率は0.3倍。最大撮影倍率が0.3倍でしたら、これは十分に高い近接撮影性能をもったレンズだと、個人的には考えます。世の中にはさらに優れた近接撮影性能をもった望遠ズームレンズも存在するのは確かですが、ここまで寄って大きく写せることができるなら、一般的な撮影でしたらきっと問題を感じることなく満足できることと思います。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/200mm/絞り優先AE(1/100秒、F22、+0.7EV)/ISO 12800

作例

効果の高いコーティングが施され、設計上も内面反射を抑える構造を採用していることもあって、逆光性能はとても優秀でした。ゴーストやフレアは効果的に抑制されており、常にコントラストが高くヌケの良い描写を楽しめます。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/135mm/絞り優先AE(1/125秒、F2.8、+2.0EV)/ISO 100

大口径ズームレンズらしい大きなボケも、本レンズの魅力のひとつでしょう。距離によっては若干硬めに感じることもありましたが、全体的には柔らかくて品の良い良質なボケ味のなかに被写体を浮き立たせることができます。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/75mm/絞り優先AE(1/100秒、F3.2、+1.3EV)/ISO 100

インナーズーム式の大口径望遠ズーム(70-200mm F2.8)として、数々の名レンズを世に送り出したキヤノンですが、ミラーレスカメラ用としては実は本レンズが初になります。先述の解像性能やボケ味の良さもさることながら、ズーム全域、すべての撮影距離で安定した高性能レンズとしての画質の良さをヒシヒシと感じました。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/200mm/絞り優先AE(1/200秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 400

キヤノン独自のナノUSMを2基搭載しており、AFは非常に高速でパワフルです。ナノUSMは被写体の動きに対するなめらかな追従を特徴としており、動画撮影に高い適性があるAFモーターですが、静止画撮影においても高速・高精度で快適なAFを体感できます。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/168mm/絞り優先AE(1/250秒、F3.2、+0.7EV)/ISO 8000

ポートレートやイベント撮影などさまざまなシーンで活躍してくれる70-200mmのレンズですが、もちろん風景やネイチャーなどでも大いに力を発揮してくれるはずです。携行性では同スペックの「RF70-200mm F2.8 L IS USM」に軍配が上がりますが、性能・汎用性重視でインナーズームという本機の個性も見逃せません。

EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/168mm/絞り優先AE(1/320秒、F5.6、+0.7EV)/ISO 100

まとめ

パワーズームアダプター「PZ-E2/PZ-E2B」を装着できる、動画にも本格対応した大口径望遠ズームレンズが本製品です。アダプター用の接点やクリックのないアイリスリングは、動画撮影に比重をおくユーザーにとっては有難い措置でしょうし、そうでなくとも将来性を考えれば有用なことだと思います。

レンズ本来の資質としていえるのは、インナーズームを得意としてきたキヤノンならではの、非常に安定して優れた描写性能の高さと、操作性の良さに尽きるのではないでしょうか。

数ある 70-200mm F2.8 のなかでも、間違いなくトップクラスの高性能レンズであるというのが使ってみての率直な感想です。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。