交換レンズレビュー
キヤノン RF50mm F1.4 L VCM
新モーターを採用したRFレンズ初のF1.4標準レンズ
2024年12月29日 12:00
キヤノンの「RF50mm F1.4 L VCM」は、35mmフルサイズセンサーに対応したRFマウント用の大口径標準単焦点レンズです。単焦点レンズの中核とも言える50mm F1.4のレンズとして、キヤノンが初めてミラーレスカメラ専用として出したレンズでもあります。
アイリスリング(絞りリング)を搭載するなど、動画撮影に重きを置いた仕様にはなっていますが、その実、静止画撮影で使ったとしても「さすがキヤノンのLレンズ!」と思える、抜群の性能に仕上がっていることにも注目です。
外観と操作性
本レンズの外形寸法は約φ76.5×99.3mm、質量は約580gとなっています。いまどきの高性能な50mm F1.4としては標準的といったところでしょうか。使ってみた感じとしては思いのほか軽快感を覚えるといった印象でした。
ミラーレスカメラ用のRFレンズとしては、初めて登場した50mm F1.4ではありますが、時代に合わせて「静止画と動画を自由に行き来して表現するクリエイターの要求に応え」ているところが特徴になります。それは、動画撮影に便利なアイリスリングを搭載していることからも判断できるというものです。
操作リングを前方から列挙してみると、コントロールリング、フォーカスリングの順に装備され、その後方には件のアイリスリングがあります。クリックの有無を設定するようなレバーやスイッチはなく、常に無段階と言う仕様。正直いえば、動画撮影では良くても静止画では意図せず絞り値がずれてしまい、決して使い良いものではありません。静止画撮影時はこれまで通り、カメラボディ側のコマンドダイヤルで絞りを操作するのがオススメと感じました。
なお現状、「EOS R5 Mark II」以外の機種以外では、静止画撮影時にアイリスリングで絞り値の設定をすることはできません。
スイッチ・ボタン類は、上からフォーカスモードスイッチ、レンズファンクションボタン、アイリスリングの切り換えレバーが並びます。単焦点レンズとしては結構豪華な装備ではないでしょうか。
アイリスリングの切り換えレバーはアイリスリングを「A」に設定するとき、または「A」の位置から「F16」以降の絞り値に設定するときに使うものですが、「A」に固定することで上記のコマンドダイヤルでの絞り値設定ができるようにもなります。静止画撮影なら、なんといってもこちらが便利。
レンズフードとしては「ES-73」が同梱します。ロックスイッチを備えた立派な造りのレンズフードで、有害光の遮光という用途以外にも、思わぬ衝撃からレンズ本体を守ってくれるため、ぜひ使用時には装着しておきたいものです。
解像性能
解像性能を確認するために、あえて絞り開放のF1.4で、建築物を遠方から撮影したのが以下の画像になります。
開放絞り値であっても、画面全体で解像感は十分に高く、コントラストやシャープネスも申し分がありません。ボディ内補正の助けもあることとは思いますが、歪曲収差や周辺光量の低下、色収差などもほとんど見られないところはさすがです。
同じ場所から絞りをF5.6にして撮影したのが下の画像。F1.4で撮影した画像と比べ、解像感がさらに向上しているのは当然のことですが、それでもパッと見て分かるほどの明確な違いはないように感じられます。まさに絞り開放から実用できる、高い解像性能をもったレンズだと言えると思います。さすがキヤノンが誇るLレンズであり、最新鋭のミラーレスカメラ用50mm F1.4だけのことはあります。
近接撮影性能
本レンズの最短撮影距離は0.4mで、その時の最大撮影倍率は0.15倍。決して高い近接撮影性能とは言えませんが、高性能ラインの50mm F1.4としては標準的な最短撮影距離と最大撮影倍率だと思います。例えば、ブーケをもった花嫁の手を画面いっぱいに写したい場合などに、ちょうど良いくらいの大きさではないでしょうか。
フローティングフォーカスによって近接時でも安定した高画質を維持しているのですが、本レンズの場合、その制御を電子式にしているのが特徴の1つになっています。いかに寄れるかよりも、いかに高画質を維持するかに注力しているあたり、高性能なLレンズらしい仕様だと思います。
作例
AFのスピードと精度の良さには特筆すべきものがあります。フォーカス群は一種のリニアモーターであるVCM(ボイスコイルモーター)。前述の電子式フローティングフォーカスはナノUSMによって、それぞれ精密に制御しながら駆動しているため、重量級の大口径レンズのフォーカス移動も非常に速く静かでした。動画撮影にも力を発揮してくれることだと思います。
収差がよく抑えられ高い解像性能がありながら、素直で綺麗な上質のボケ味も同時に楽しめる50mmレンズです。大きくボケた背景のなかにキリリと被写体を浮き上がらせることができるため、ポートレートなどでも大いに活躍してくれます。
絞り値の設定幅が広いので、このレンズ1本でさまざまな表現ができます。F4に絞った下の画像では、背景の状況が分かる程度に必要以上にボケさせず、それでいてモデルの輪郭をますます際立たせることができました。ズームレンズとはまた違った、大口径標準単焦点レンズならではの持ち味を楽しめます。
クセのない画角の標準レンズですので、もちろんスナップ撮影などにも向いたレンズです。今回組み合わせた「EOS R5 Mark II」とのバランスは絶妙で、高性能な大口径レンズであっても持ち重りすることがないため、普段使いから幅広い活用が見込めることでしょう。さすがは満を持して登場したミラーレス用の標準単焦点レンズといったところです。
最新のレンズだけに逆光性能にも優れており、強い光源が画面内にあっても、ゴーストやフレアをよく抑えてくれます。ただし、位置によっては比較的目立つゴーストが発生することもあるため、ファインダーやモニターで発生具合をよく確認した方が良いと思います。
まとめ
描写性能や使用感については、Lレンズらしい最高峰の性能が与えられています。あるいは、一眼レフ用の50mm F1.4をアダプターを介して使っていた人からすると、写りの良さや使い勝手の良さに隔世の感を覚えてしまうかも知れません。もちろん、動画撮影を意識したVCMやアイリスリングを見るに、キヤノンの意気込みを感じることができるというものです。
繰り返しになりますが、キヤノンが満を持して出したミラーレスカメラ専用の大口径単焦点標準レンズが本レンズです。その性能の確かさには、間違いのないものがあると感じました。
モデル:透子