交換レンズレビュー

キヤノン RF35mm F1.4 L VCM

動画対応も充実 軽量化・高画質化を果たしたRF待望の大口径広角レンズ

RF35mm F1.4 L VCMをEOS R6 Mark II(以下同)に装着したところ

キヤノンが単焦点レンズ「RF35mm F1.4 L VCM」を7月12日(金)に発売する。今回、短時間ながら試用する機会を得たので実写とともに使用感などをお伝えする。直販価格は税込25万3,000円だ。

軽量になりミラーレスカメラとのバランスが向上

EOS Rシリーズに対応するRFレンズの新レンズとなる。RFレンズの35mmはこれまで「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」があったが、今回開放F1.4のタイプがLレンズのグレードで加わった。

”35mm F1.4“は焦点距離35mmでは代表的な大口径レンズとして各社が高性能品をリリースしており、人気も高い。同社では一眼レフカメラ用としては長らく「EF35mm F1.4L II USM」があり、RFレンズでもF1.4タイプが望まれていたところだと思う。

本レンズはいろいろと新しい点があり詳しくは発表会の記事を見て欲しいが、使っていて良かったのは小型で軽量ということだろう。EF35mm F1.4L II USMは約760g、全長105.5mmだったところを本レンズは約555g、全長99.3mmとしている。

フィルター径も72mmから67mmにサイズダウンしており全体的に一回り小さくなった。そして、サイズ以上にミラーレスカメラで使いやすい軽さになり、ボディとのバランスも良くなったと感じる。

RF35mm F1.4 L VCM(左)とEF35mm F1.4L II USM(右)。劇的に小さくなったわけではないが、かなり軽くなっている
前玉の大きさはまったく違う。高級感という点ではEF版(右)に軍配が上がるかもしれない

EF/RFレンズで初めてとなるVCM(ボイスコイルモーター)によるフォーカスレンズ駆動とナノUSMによるフローティングレンズの駆動を組み合わせたということで、合焦はかなりスムーズで全く問題の無いものだった。

動画撮影も意識されており、アイリスリングを搭載している。録画中に滑らかに絞りを変えられるという機能で、リングにクリックは無い。なお、発売済みのボディにおいて静止画撮影時はリングで絞りを変更することはできないが、2024年6月以降に発売されるボディでは静止画でもアイリスリングが機能する。

絞りリングはマウント寄りに搭載。静止画撮影時はAポジションにしてボディから絞り値を設定する。Aポジションに固定するスイッチも備えている。

先端からコントロールリング、フォーカスリング、アイリスリング
機能を割り当てられるレンズファンクションボタン(中央)も備える。下はアイリスリングロック解除スイッチ
最小絞りの状態でパンをしながら絞りを開放に開け、最後にまた最小絞りまで動かした。非常に滑らかな明るさの変化で録画できている

面白いところでは着脱式のリアフィルターホルダーも備えている。シートタイプのフィルターが入るので、フロントと合わせてダブルのフィルターワークというのも可能。着脱式なのは、使用しない場合は外してゴーストの発生が抑えられるようにしているためだ。

リアフィルターホルダーを装着したところ

F1.4ならではのボケ感を味わえる

今回はEOS R6 Mark IIに装着し、スナップ撮影で実力を見てみた。梅雨入りしてしまい雨の風景となったが、それでもクリアで抜けの良い描写を見せてくれた。

絞り開放で撮影。合焦部分の水滴が鮮明に描写された。また、このレンズに限らないが開放付近では玉ボケはレモン形になっていた
キヤノン EOS R6 Mark II/RF35mm F1.4 L VCM/絞り優先AE(1/200秒、F1.4、−0.7EV)/ISO 100
こちらも絞り開放。ボケがなだらかに移行するのに加えて、ボケの質も滑らかで綺麗だ
キヤノン EOS R6 Mark II/RF35mm F1.4 L VCM/絞り優先AE(1/800秒、F1.4、−0.3EV)/ISO 200
最短撮影距離である0.28m付近での撮影。解像力も申し分ない上に、前後とも二線ボケ傾向は見られない
キヤノン EOS R6 Mark II/RF35mm F1.4 L VCM/絞り優先AE(1/60秒、F4.0、±0.0EV)/ISO 800
F2.8まで絞ると周辺の玉ボケも含めてほぼ真円になる。11枚羽根の円形絞りもそれに貢献している。玉ボケの内部はクリアで、輪郭も主張が少ないタイプだ
キヤノン EOS R6 Mark II/RF35mm F1.4 L VCM/絞り優先AE(1/125秒、F2.8、±0.0EV)/ISO 3200
建物をしっかり写そうとF6.3に絞り込んだ。画面周辺部もきっちりと写っていた
キヤノン EOS R6 Mark II/RF35mm F1.4 L VCM/絞り優先AE(1/30秒、F6.3、±0.0EV)/ISO 1600

まとめ

一眼レフ時代はボディも重かったので、レンズもある程度の重量があった方がバランスが良かった面もあるが、ミラーレス時代になって軽くなったボディにはやはり軽いレンズが使いやすい。

”35mm F1.4”といえば大きく重いというイメージがあるが、本レンズは軽量化されたことで日常的に使いやすい機動性を備える。加えて、動画撮影も強く意識しており、新世代とも言える35mm F1.4のレンズと言えそうだ。

同梱のフードを装着したところ。フードは大きすぎずスタイリッシュ

やはり開放絞りでの被写体が浮き出る感じなど、大口径レンズならではの点も見逃せない。それに、夕方や夜など暗くなってからの撮影にも大口径が威力を発揮する。

25万円オーバーだが、実はEF35mm F1.4L II USMの直販価格が税込29万1,500円なので多少買いやすくなっている点も見逃せない。コストがかかるBRレンズを使わずに高画質を達成できたためだが、RFユーザーにとって待望とも言える1本をぜひ試してみてほしい。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。