交換レンズレビュー

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7

待望のDX単焦点レンズ 寄って良し/引いて良しの有力な常用レンズ候補

ニコンZマウント初のDX単焦点レンズとなる「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」が6月23日に発売されます。

35mm判換算36mm相当の焦点距離は、スナップや旅行などでの撮影に最適な画角。それほどワイドとはいえませんが、遠近感を強調したワイドらしい表現にも利用できます。

また、単焦点レンズゆえに開放F値がF1.7と明るいのも特徴。APS-Cフォーマットでかつ広角レンズという不利な条件ではありますが、それなりにボケを取り入れやすいのも特徴です。

最短撮影距離も0.18mと寄れる方なので、料理などのテーブルフォトやお花のクローズアップも楽しめます。

そして小型・軽量なので、DXフォーマットのボディと組み合わせて持ち歩きしやすいところがポイントでしょう。

※製品化前のβ版を使用しています。

外観

最大径約70mm、全長も約40mmととにかくコンパクト。「Z 50」に装着した姿も魅力的です。

鏡筒の半分ほどを占めるピントリングは、ケーキを撮るときなど、マニュアルフォーカスのときにスムーズな操作感で使いやすかったです。

付属のレンズフードはいわゆるフジツボ型。レンズの前面が被写体などに触れるのを防げます。

最短撮影距離とボケ

同じ焦点距離のレンズでより大きなボケを得るためには、絞り値が明るいことと、被写体に近づけることが大切になります。

その点このレンズは絞り開放F1.7で、かつ最短撮影距離が0.18mと短いのが特徴。特に最短撮影距離の短さが効き、36mm相当の焦点距離(加えてAPS-Cフォーマット)にしては、大きなボケを作れます。


アジサイを上から見下ろすと上部と下部で距離の差が生まれ、絞りを開けることで、このわずかな差でもボケを作り出すことができます。絞りは開放のF1.7ではなく、シャープさを高めるためにF2.5と少し絞りました。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F2.5、+0.7EV)/ISO 500

小ぶりなアジサイをピントが合うギリギリまで迫って撮りました。このレンズの最短撮影距離は0.18mで、最大撮影倍率は0.19倍。いちばん手前にピントを合わせると、奥へとなめらかにボケていくのがわかります。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F1.7、+1.0EV)/ISO 400

薄暗いシーン

絞りを開ける必要のないシーンのように思えますが、絞り開放のF1.7で撮影しました。夕暮れはシャッター速度が遅くなりがちなので手ブレが心配になりますが、ズームレンズに比べて、絞りの開放値が明るいため、速いシャッターが切りやすく、感度を抑えることもできます。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/500秒、F1.7、−0.3EV)/ISO 800

テーブルフォト

本レンズの焦点距離36mm相当は、テーブルフォトでも使いやすい画角といえます。

主役のケーキに対して脇役のカップが、うるさすぎず、ほんのりとボケました。背景を広く写し込めるため、背後の雰囲気も取り入れることができました。絞り開放だとボケすだと感じたので、少しだけ絞り込んだF2.2で撮影しています。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/60秒、F2.2、+1.7EV)/ISO 250

広角らしい表現

超広角というほどではないのですが、36mm相当も立派な広角レンズ。遠近感を強調した表現を狙えます。ただ風景を広く撮るだけではなく、被写体に寄って遠近感を活かしてみましょう。レンズが軽いので、フットワーク良く撮影できるのではないでしょうか。

単焦点レンズだと自然と足を使って被写体の大きさを決めざるを得ません。ほどよいワイド感も扱いやすいので、レンズの使いこなしを学ぶ入口としても良いレンズだと感じます。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 400

旅/日常のスナップレンズとして

今回はこのレンズとともに、私が住んでいる地域の隣町を散策してみました。身近な場所とはいえ、知らない土地を歩いていると、さまざまな発見があるものです。

広く撮れて、そこそこのクローズアップもでき、ボケも作れる。さらに軽量コンパクトなDXフォーマットのため、心軽く撮影を楽しめました。

写真は古民家の庭の植木の青葉です。葉裏の透けた感じも綺麗ですし、初夏の青空も鮮やかで清々しく感じます。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/640秒、F8.0、−1.0EV)/ISO 200

逆光でもクリア

遊具の中に入り込み、下から見上げるようにして撮りました。ピントは上の段の方に合わせていますが、シャープ感がありますね。空を見上げているので自然と逆光になりますが、目立ったフレアやゴーストもなく、クリアに描写されています。

絞りをF8まで絞っているので、それにより金属に光が反射した部分に光芒が現れています。

Z 50/NIKKOR Z DX 24mm f/1.7/24mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、+0.7EV)/ISO 200

まとめ

36mm相当の画角、開放F1.7の明るさ、最短撮影距離0.18m、小型軽量なサイズ感・重量感。このレンズ1本を相棒に、どう使いこなすかを考える楽しみを与えてくれるレンズでした。

街へ出れば広い画角での切り取りや遠近感のある被写体探しを楽しみ、公園にある花にはグッと迫ってクローズアップしてみる。ちょっと歩き疲れてカフェに立ち寄ったら、背景のボケを生かして料理やケーキを撮る。薄暗い夕暮れのシーンも絞りの明るさゆえに感度が抑えられ、三脚なしでもシャープに撮ることができる……

そんな1日を過ごすことができるレンズでした。「Z 50」をはじめとするDX機ユーザーは、DXフォーマット専用に作られた単焦点レンズの魅力をぜひ味わってみてください。

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。