交換レンズレビュー
SAMYANG AF35mm F1.4 FE
実力を備えたソニーEマウント用ハイコストパフォーマンスレンズ
2018年2月9日 07:00
コストパフォーマンスの良さで多くのユーザーを魅了するサムヤン(Samyang)から、ソニーEマウントのフルサイズ対応AF 35mmレンズが発売された。サムヤンのAFレンズでソニーEマウントのフルサイズ対応レンズとしては、50mm F1.4、14mm F2.8、35mm F2.8に続いて第4弾となる。
35mmは、このところの筆者の撮影にとっては“標準レンズ”ともなる重要焦点距離。仕事で使えるかどうかという視点でこのレンズに迫ってみる。
Eマウントといえば、同じスペックでソニー純正のDistagon T*FE35mm F1.4 ZAがラインナップ。フィルター径こそ、Distagon T*FE35mm F1.4 ZAは72mmでサムヤンAF35mmF1.4 FEは67mmと違いがあるものの、重さは15gしか違わず、最短撮影距離(0.3m)、最小絞りはF16、絞り羽根9枚と、撮影に関わるスペックは全く同じ。
一方、価格といえばDistagon T*FE35mm F1.4 ZAは20万円前後とやや手を出しにくい価格だが、サムヤンAF35mmF1.4 FEは7万円前後とこのスペックとしては安価。F1.4という大口径にリーズナブルな価格とくれば、競争力は十分と言えるだろう。
発売日:2018年1月12日
実勢価格:税込7万5,000円前後
マウント:ソニーEマウント
最短撮影距離:0.3m
フィルター径:67mm
外形寸法:約115×75.9mm
重量:約645g
デザイン
金属製の鏡筒デザインは、これまでのサムヤンAFレンズと同じく、とてもシンプルで高級感漂う。
α7R IIIに装着するとややフロントヘビーっぽく感じられるが、撮影時は特に気にならなかった。
アクセントカラーとなる赤いリングが、ソニーα9、α7シリーズのマウントカラーに合わせてあるからか、装着するととても似合う。
AF
撮影はほぼ瞳AFを使って行った。AFは思った以上に静かで速い。ストレスをほぼ感じることなく撮影できた。
作品
まずは中心部の画質を見ていくことにする。絞りはF2.8で撮影。ピントが合っている部分のキレの良さは素晴らしい。カリカリした感じはなく繊細な描写で、ポートレート向き。
絞り開放で撮影する。広角とはいえ35mmで、かつF1.4となれば、これだけのボケを得られる。やや柔らかで滲んだような描写。キレがないわけでなく、少しウェッティな感じで、開放の描写に惚れるユーザーも出てきそうな、優しい描写だ。
やや広がりをつけて、周辺を入れながらの構図が作りやすいのも35mmという焦点距離の魅力。引けば距離感の誇張が生まれるが、F1.4のボケが被写体を浮かび上がらせ、独特の世界観になる。ボケ味はなだらかで立体感がある。さりげなく状況を広く説明しながら、人物を浮かび上がらせてくれる。
F8まで絞り、画面周辺の解像感をチェック。画面隅々までしっかりと解像されていて、しかもシャープ。私が感心したのはシャドウ部の階調。とても豊かでじっくりと眺めてしまう。
絞り開放時に撮影しての次なる関心事といえば、玉ボケ。バストアップ以上のアップで、玉ボケがはっきり見えるように撮影。綺麗な円形は期待できないものの、丸くて輝きを感じさせるには十分だろう。
35mmでF1.4の大口径レンズなので、ぜひ屋内でも撮影したくなった。24mmほど遠近感が誇張されるわけでもなく、ほんの少し広さを得られる感じが使い易いところだ。さらに大口径で背景をボカすことができるので、被写体を浮かび上がらせることができる。
ボケ味がうるさいと、屋内では物が多いため、ボケがかえってうるさく感じることも。しかし滑らかなボケなので、優しくモデルを浮かび上がらせてくれる。
屋内で逆光を試す。落ち着いた雰囲気の洋館で、ハイライトとシャドウ部のメリハリがはっきりと付く環境。レンズには厳しい条件だが、解像感は損ねていない。
サイド光で撮影。窓からの光は回り込んできそうな状況での撮影だが、すっきりとした描写はそのまま。F1.8に絞ったものの、開放近くでこの描写は、実践向き。
一転、シルエットにして撮影。絞りはF2.2。開放F1.4で見られた滲みのような描写は、F1.8あたりからシャープさに転じる。シャドウの中の表情もくっきりと描写され、憂いを感じる、いいカットに仕上がった。
最短撮影距離で撮影してみる。このレンズの最短撮影距離は0.3m。フードをつけて撮影すると、瞳への圧迫感が半端ないので、フードを外して撮影。絞りは開放F1.4。
瞳の表面が最短撮影距離になるが、とてもシャープ。こうしたアップカットも積極的に行いたくなる。ちなみにモデルと私、双方とも動いてしまうので、最短撮影距離にセットし、ピーキングを使って体を前後させてピント合わせを行った。
さすがF1.4の大口径レンズ。薄暗い廊下でもISO100で、1/320秒でシャッターが切れるので、動きのあるシーンも室内で撮影できる余裕がある。瞳AFを使うことで、高確率で目にピントを追い続けてくれる。
自然な広がりに大きく柔らかなボケ。こう言うシーンが合うかなと、ポーズをお願いしてみた。
再び外で撮影。モデルには自由に動いてもらい、瞳AFで追いかけながら撮影。AFは十分に動きについて来てくれた。
35mmはスナップ撮影で最も使われている焦点距離の1つだろう。素直に状況を切り取れるので、説明しやすいカットになる。日常でつけっぱなしにしておくにはやや大きいレンズだが、35mmという焦点距離の魅力にこのレンズ1本で迫る、というスタイルもいいかもしれない。
引きのカットで開放近くで撮影するのが私の好み。ピントはモデルに合い、背景は少しづつボケて、不思議な浮かび上がりがなんとも魅力。このカットは開放F1.4。
まとめ
先に述べたが、ソニー純正のDistagon T*FE35mm F1.4 ZAとがっぷり四つのスペック。写りはというと、コストパフォーマンスという言葉が薄く感じてしまうほど、秀逸な写り。開放から1つ絞ったあたりからの解像感は特にいい。開放時は独特の写りで、ポートレート撮影にはこの描写をむしろ使いたくなる。
Distagon T*FE35mm F1.4 ZAを金銭的に躊躇しているαユーザーは、このレンズを1度お試しいただきたい。仕事での撮影でも十分使えるレンズだ。