交換レンズレビュー
FUJIFILM XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
シリーズ初の等倍マクロレンズを試す
2018年2月1日 07:00
XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macroは、等倍(被写体の大きさとセンサー上に写る像の大きさが同じ)までの撮影倍率をもつ、中望遠マクロレンズ。
非球面レンズ1枚、EDレンズ3枚、スーパーEDレンズ1枚を含む12群16枚構成の光学設計と、フローティングフォーカス方式を採用することで、ぽわんとした描写になりやすい高倍率撮影時でも高い解像感を実現。
また、マクロ領域でのシフトブレに対応した手ブレ補正機能を搭載し、約5段分(CIPAガイドライン準拠)の手ブレ補正が可能となっている。
鏡筒の11カ所にシーリングを施した防塵・防滴・-10度の耐低温構造に加え、レンズ前玉にはフッ素コーティングを施すことで、高いタフネス性能を実現。同じく防塵・防滴・耐低温構造をもつFUJIFILM X-Pro2やFUJIFILM X-T2との組み合わせなら、過酷な環境下でも安心して撮影が可能だ。
XFレンズのマクロレンズにはXF60mmF2.4 R Macroがあるが、軽量コンパクトながら単体での撮影倍率が1/2倍にとどまっていたり、手ブレ補正機構がないなど、やや物足りなさを感じることもあった。XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macroの登場で、FUJIFILM Xシリーズのボディでも等倍までの高倍率撮影がレンズ単体でできるようになった。
発売日:2017年11月30日
実勢価格:税込12万円前後
マウント:富士フイルムX
最短撮影距離:25cm
フィルター径:62mm
外形寸法:80×130mm
重量:約750g
デザイン
XF60mmF2.4 R Macroがとても軽量コンパクトだっただけに、それと比べるとふたまわりくらい大きく、太く、重たくなった印象を受ける。
とはいえ、等倍の撮影倍率や手ブレ補正機能の搭載、描写性能を見れば納得できる大きさ。X-Pro2やX-T2のような富士フイルムとしては大柄のボディなら、フードに左手を添えると、ボディを持つ手に力をいれずに済む。
フードは大型ながらプラスチック製にすることで全体の重量を抑えつつ、最大限の遮光性能を確保。ロックも適度な固さで脱着はしやすいが、撮影時に不用意に外れてしまうようなことはないしっかりした作り。
操作性
ピントリングは幅が広く、フードに左手を添えても左手親指が届く絶妙な配置。また、MF時の微調整のしやすさからやや重めの印象を受けるが、これはXFレンズ全般に言えること。適度なトルクで不用意に動くことはないが、左手親指で微妙な調整ができる絶妙なフィーリング。
絞りリングも定番のレンズ手前に配置され、左手で操作できるのでシャッターを押すタイミングに集中できる。また、設定は素早くでき、確認も一目瞭然なため、使い慣れるとこのマニュアル感から抜け出すのが大変なくらい使いやすい。
レンズ根元にある手ブレ補正機能(OIS)スイッチは、手持ちなら常にONにしておこう。不用意にOFFにならないように凹凸をなくしているあたりにユーザー想いのやさしさを感じる。
マクロレンズは最短撮影距離から無限遠までピントリングの移動量が大きく、AF時にピントを合わせ直す時間がどうしても長くなってしまう。
そんなときに設定するのが撮影距離範囲切り替えスイッチ。ピント移動範囲を制限することで合わせ直す時間を短くすることができる……のだが、高倍率撮影では明暗差がなくなりやすく、合わない条件の方が多くなってしまう。このスイッチで制限をしたから合いやすくなるというものではないので、基本は「FULL」にしておけばいいだろう。
AF
フォーカスレンズ群がレンズ内部を移動してピント調整を行うためレンズの全長は変わらず、駆動にリニアモーターを採用しているため、AF時は非常に静かで速い。
だが、前述したように高倍率撮影になるほどAFで合わない方が多くなるため、そういうときは素直にMFに切り替えよう。
このとき、ピントリングを回しながら合わせるのではなく、カメラを数mm前後に移動させる感覚でピント合わせを行うと、被写体の大きさをイメージ通りに仕上げやすくなる。
その際、撮影メニューの「MFアシスト」から、デジタルスプリットイメージ、もしくはフォーカスピーキングを選択すると、ピントの合っている合っていないの判断がとてもしやすくなる。
作品
太陽を直接取り込んで、フレアやゴーストがどのくらい出るかテストのつもりで撮影したのだが、太陽のボケの中の被写体はしっかり解像しており、フレアやゴーストも皆無。マクロレンズの中では最上位の逆光性能といえる。
ポピーの茎の毛の部分にピントを合わせているが、細い毛だけでなく、茎の質感までしっかり解像している。それでいて、奥の毛もピント面から離れるほど徐々に太くなっているのは、ボケがキレイで滑らかな証拠。
日陰の松の葉を枝先から狙っているが、木漏れ日がとても柔らかなボケに仕上がっている。解像力を重視すればボケが固くなりがちだが、柔らかい光の雰囲気をしっかり描写している。解像力とボケ味のバランスが絶妙なマクロレンズ。
生け垣の上から顔を出しているスイセン。反射のある細い無数の枝の前ボケはかなりゴチャゴチャすると思ってレンズを向けたが、予想に反してキレイに仕上がった。
最短撮影距離、等倍での撮影。AFでピントを合わせようとすると構える位置で倍率が変わってしまうので、MFでピントリングを最短撮影距離まで回し、近づきながら体の前後移動でピント合わせを行うのがマクロレンズで高倍率撮影を行うコツ。
アスファルトの上の水たまりを地面スレスレのアングルで撮影。水の上から飛び出たアスファルトの反射している部分が玉ボケの正体。コントラストがあるときはボケもしっかり形が出ており、理想のボケ味。
葉の上に落ちていたアロエの花を先端から狙っているが、画面の中の被写体の距離差は5cm程度。等倍・絞り開放では被写界深度が1mmになるので、この程度の距離差しかなくてもこれだけ大きくキレイにぼける。
円形絞りを採用しているので、絞り込んでも点光源などは丸に近い形をキープ。「ボケ=開放」というイメージが強いと思うが、マクロレンズで寄ったときにはボケ過ぎることもあるので、絞り込んでボケ味を調整してみよう。
まとめ
全域での高い解像力と素直なボケ味という両立の難しい部分を、全てバランスよく持ち合わせたマクロレンズ。特に逆光性能の高さはマクロレンズの中でのトップクラスと言える。
また80mmという焦点距離設定は、35mmフルサイズの100mmクラスのマクロレンズとほぼ同じワーキングディスタンスになるため、カメラのセンサーサイズがAPS-Cサイズサイズだというのを忘れてしまうほど、違和感なく使えるのもポイントが高い。
これまでのXFシリーズの中では大柄のレンズになるが、マクロ好きならぜひ揃えておきたいレンズだ。