交換レンズレビュー

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

高コントラストで抜けの良い描写 最短撮影距離の短縮で使い勝手も向上

ニコンは8年の時を経て2016年11月、さらなる高画素にも対応する「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR」を発売した。前モデルでも満足いく写りをしていたが、やはり8年の進化は目覚しい。写りも操作性も格段に進化した「攻め」のレンズを実写とともに紹介しよう。

発売日:2016年11月11日
実勢価格:税込29万円前後
マウント:ニコンF
最短撮影距離:1.1m
フィルター径:77mm
外形寸法:88.5×202.5mm
重量:約1,430g

デザインと操作性

ポートレート撮影では手持ちによる撮影や開放絞りでの撮影が多く、実絞りの明るさや開放絞りでのクリアな解像感と大きく美しいボケが期待される。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VRは蛍石を採用し、さらに球面収差と像面収差を同時補正する高屈折率レンズやEDレンズを使用した18群22枚の贅沢なレンズ構成でナノクリスタルコートも忘れていない。開放F2.8の明るいファインダーは四隅までとても見やすく、ピントとボケの関係も正確に観察できる。

ボディはD810(以下同)

ニッコールレンズでは初めて公式アナウンスされた防塵防滴構造をはじめ、鏡胴操作リングの配置変更や最短撮影距離の短縮など「撮影者」の立場から見た改良点が随所に盛り込まれ、今まで以上に「使えるレンズ」に進化している。

僕の撮影を思い出すと、塩水や砂の舞うビーチや水辺など不安の多い状況での撮影も多い。防塵防滴構造はポートレート撮影でも大きな安心材料だ。

また、最大撮影倍率が約0.21倍に向上、最短撮影距離は1.4mから1.1mになった。これまでより30cm寄れるのはポートレート撮影では嬉しい進化。顔のアップをひと回り大きく入れることができるようになった。

前モデルに比べて僅かに太く短くなり、110gの軽量化が図られた。しかし、鏡胴操作リングの配置変更(ズームリングがフロント、ピントリングがリア)の恩恵は大きく、ホールディングのバランスが格段に良くなり実際以上に軽くなった感じだ。

冬季の手袋着用時にカメラ側の親指AFを使うと、右手を不安定にさせてしまうが、レンズに配置されたフォーカス作動ボタンは防寒用手袋をしている時とても便利だった。

迷いのない素早いピント合わせはストレスなく、気持ちよく作画に集中できた。ピントの精度も素早く正確。手ブレ補正効果はCIPA規格準拠でシャッタースピード4段分。実際にそれを感じる画像の見え方で、ファインダーに像が吸い付くように見えて安心感を増幅させる。

作品

短い焦点距離で絞りをF4.5まで絞っているが、背景の自然で見やすいボケが「素直」と評したいポイント。ピント面もクリアでスッキリした印象だ。

D810 / 1/250秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出/ 70mm

105mmレンズを意識した画角を設定して撮影。色乗りも良く描写も自然だ。1段しか絞っていないが周辺部まで玉ボケは丸い。玉ボケを意識して1段以上絞り込む必要は感じない。

D810 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出/ 100mm

テレ側の画角で引いて撮影している。絞り開放にもかかわらずこれだけ正確なピントと解像感であれば何の不満もないだろう。攻めて使えるレンズだ。

D810 / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出/ 165mm

中心部の解像感はかなり高い。一方、像が流れたり解像感が落ちやすい周辺部は、手に触る幹を見ても画質が高いことがわかる。逆サイドの柔らかく滑らかなボケも見逃せない。

D810 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出/ 200mm

最短撮影距離でスイングしながら距離を調整した。このサイズまで寄れるのは最短撮影距離が30cm短縮された恩恵だ。ピント精度も解像感も高い。

D810 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出/ 200mm

強いトップライトでの逆光だが、色収差もなくシャドー部への繋がりも自然。逆光のポートレート撮影にも安心して使える。

D810 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出/ 82mm

まとめ

僕がニコンへカメラを変えるきっかけになった思い出深いレンズのリニューアルモデルだけに、発売当初から強い興味を持って使ってきた。すでに数々の仕事で実戦投入してきたが、素晴らしい写りだ。

絞り開放から正確で気持ちの良いピントを得られ、高い解像感は引きのカットでも目元をクリアに描写した。またコントラストはやや高めでピント面ではヌケが良く、大口径レンズの生み出す美しいボケは大きく素直。ポートレートでは開放絞りから「攻めて」使うべきレンズだろう。

総じてデジタルカメラを使うなら持っておくべきレンズだと思う。確かに高価だが、数年使えることを考えられるなら是非オススメしたい。ただ電磁絞りのEタイプなので、少し前の機種を使用しているなら適合機種の確認はしておこう。

モデル:畑山亜梨紗

河野英喜

こうのひでき:1968年島根県生まれ。人物写真をメインに撮影。現在は女優やタレントの撮影が多く、D3からのニコンユーザー。今はデジタルカメラが主流だが、銀塩写真もこよなく愛するハイブリッドな写真家。

http://www.kono-hideki.com/