特集

2016年「私はこれを買いました!」(第2回)

萩原俊哉・北村智史・藤井智弘・三井公一

2016年を締めくくるにあたり、本誌のレビュー系記事にご寄稿いただいた皆様および本誌編集者に、今年新品で購入したデジタルカメラ、レンズのうち、特に思い入れのある製品について語っていただきました。(順不同、敬称略)

撮影のモチベーションが上がる完璧なレンズ

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR/萩原俊哉

いわゆる大三元レンズの一角をなす70-200mm F2.8ズームレンズといえば、風景撮影ではなくてはならない存在だ。その大口径望遠ズームレンズがリニューアルしたというニュースが飛び込んで来ればいてもたってもいられないのは風景写真家の性だろう。

折しも、デジタルカメラマガジン12月号でAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VRのテストレポートを担当させていただく機会に恵まれ、レンズのもつポテンシャルを存分にテストすることができた。

詳細なレポートはそちらでご覧いただくとして、実際に使ってみると非の打ちどころのないゴキゲンなレンズだ。多画素モデルのニコンD810との相性も抜群で、画面のごく周辺に至るまで緻密な描写を得たい風景では鬼に金棒といったところ。それでいて大口径レンズならではのF2.8のボケを活かせるのだから、情景表現においてもおおいに役立ってくれている。

前モデルがニコンの第3世代大三元レンズと謳うのなら、このAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VRは第4世代大三元レンズ。現在、昨年発売されたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRと共にザックに収納して本格的な冬撮影の待機状態である。

新しいアイテムの導入は、撮影に対するモチベーションも上げてくれるというもの。新たな相棒とともにどんな表現を楽しもうかと、この冬の撮影がいまから楽しみでならない。

はぎはらとしや:今年は地方量販店での店頭セミナーなど講師業が多めの年でした。著書は「自然風景撮影 基本からわかる光・形・色の活かしかた」(玄光社刊)を発刊。好評発売中の「世界一わかりやすい デジタル一眼レフカメラと写真の教科書 四季の風景編」(インプレス刊)と合わせてぜひご覧くださいませ。

ニコン、蛍石を採用した「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR」

待望のライブビューが決め手 デザインも◎

SIGMA sd Quattro/北村智史

ここ何年かのシグマのイメージと言えば、「すごいレンズを作っているメーカー」だろうと思う。そんなシグマのレンズの性能をめいっぱい引き出せるのは、やはりシグマのカメラなのではないか。というのもあって、以前から使ってみたいと思ってはいたのだけれど、AFがどうこうとか、レスポンスがうんぬんとか、いろいろ耳に入ってくるものだから、手を出しかねていた。

ライブビュー機能がなかったのも、踏ん切れなかった理由の1つである。だんだん視力があやしくなってきて、一眼レフの光学ファインダーでは不安なシーンが増えてきた。まして、ピクセル等倍で見ても問題ないレベルでピントを合わせようと思うと、ライブビューで拡大してチェックしないと心配でしかたがない。

そんなところに登場したのがsd Quattroだ。シグマ初のミラーレスカメラである。まず、あのデザインにしびれてしまったこともあるのだが、像面AFならピント精度の面では安心だろうというのもあったし、画面の一部を拡大してピントをチェックできる機能もちゃんとあった。

あとはもう勢いである。気がつけば、レンズが4本(18-35mm F1.8 DC HSMに50mm F1.4 DG HSM、MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSMとAPO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM)あったりするから不思議である。

使い勝手を聞かれれば少し首をかしげるところはある。純正RAW現像ソフトも圧倒的にスピード不足だ。けれど、仕上がりを見るたびに溜め息が出る。苦労する甲斐のあるカメラなのである。

きたむらさとし:今年も雪の季節がやってきて、地面はかちかち、空気はきんきんに冷えてます。新しいカメラとレンズ、それからあったかい帽子と手袋のおかげでなんとか生きてます。はい。

新製品レビュー:SIGMA sd Quattro(実写編)

ボケが良くなりフードもメタル製に 期待通りの描写性能

ズミクロンM F2/35mm ASPH./藤井智弘

ライカMシステムといえば、50mmか35mmが定番の焦点距離。私は50mmが好きなので、ズミルックスM F1.4/50mm ASPH.をメインにしている。そこで広角はエルマリートM F2.8/28mm ASPH.をメインにした。

35mmは1970年代の6枚玉と呼ばれるズミクロンを15年以上所有していて、これはこれでよく写るのだが、6bitコードがつかないことや、現代的な描写の50mmや28mmとバランスが合わないことが気になっていた。しかし50mmほど使用頻度が高くないため、「いつか現行モデルの35mmが手に入ればいいな」くらいの気持ちだった。

とはいえ、人物を中心に周囲の雰囲気も重視した撮影や、やや広めに撮りたいスナップでは、やはり35mmが欲しくなってくる。「そのときは6枚玉で」と思っていたところ、ズミクロンM F2/35mm ASPH.がリニューアルするというニュースが飛び込んできた。

フードがメタル製になり、絞り羽根が増えてボケ味が良くなった。しかも価格は従来モデルとほぼ同じ。突然頭の中がズミクロン35mmでいっぱいに。気持ちを落ち着かせて、従来モデルが中古で安くなれば、そちらも考えたのだが、調べてみると依然として高価。それなら最新型を新品で、と購入を決めてしまった。

手に入れた最新ズミクロンM F2/35mm ASPH.は、期待通りの使い心地と描写力。その様子は「ミニレポート」でも紹介している。メインはやはり50mmだが、35mmも現行モデルになったことで、予想以上に撮影に幅ができたのを実感した。来年以降も活躍してくれること間違いなしだ。

ふじいともひろ:20年近くフリーランスでしたが、9月からデザインオフィス(株)AQUAに入るという、とても大きな出来事があった年でした。来年はチームの一員として、より広がりのある仕事をしていきたい、といろいろ考え中です。

ミニレポート:新しくなったズミクロン35mmをチェック

使えば抜け出せなくなる孤高の写り

SIGMA sd Quattro/三井公一

2016年の目玉はやはりコレしかないだろう。シグマから久々に登場したレンズ交換式カメラのSIGMA sd Quattroである。ミラーレスカメラへと変貌を遂げたが、一眼レフカメラ用のシグマSAマウントのためそのボディは大きい。

しかし写りはFoveon X3 ダイレクトイメージセンサーのQuattroジェネレーションなので、独特というか孤高というか変態である。一度この描写を味わってしまうと抜け出せない魔力があるのは皆さんご存じの通り。よってこのカメラを手に入れない理由などない(笑)。オートフォーカスも正確。EVFで視野率約100%となって使いやすくなり、仕事でも大活躍してくれた。

優秀なシグマグローバルビジョンレンズも続々と登場し、APS-HモデルのSIGMA sd Quattro Hもシグマとしては珍しく山木社長の宣言通り2016年内に登場したので、2017年はダブルQuattroで各地をブラブラと撮影したいと思っている。

みついこういち:2016年も日本各地をブラブラと撮り歩いたが、2017年はよりその範囲を拡げて撮影する予定。もっぱら地方都市とわびさび溢れる渋い街をさすらいたいと思っている。風景だけでなく美女も撮りたいので我こそはというモデルさん随時募集中(笑)。ツイッターは@sasurau

新製品レビュー:SIGMA sd Quattro(実写編)

(第3回に続きます)