デジカメアイテム丼

アルミに写真を印刷する「メタルプリント」を試す

額装なしで65年の屋外耐久性

実際にプリントをしてみたメタルプリント

CP+2018に出展していたパイオテック株式会社(Piotec)のメタルプリントをチェックした読者はいるだろうか? メタルプリントとは、アルミプレートに昇華転写プリントによって印刷するもので、サービスとしては日本に上陸したばかりだ。海外を見ると、オフィシャルサイトにはUSA写真業界80%導入とあり、多くのフォトラボが取り扱っているという。

特徴として挙げられているのは、高い再現性と良好な発色、圧倒的な高耐久性。再現性は後述するとして、カタログスペックでいくと、発色については14層のコーティングでフォトペーパーとは異なる光沢感があり、また摩擦や火、薬品耐性が強く、温度の影響もないそうだ。そして、耐久性は、額装などせずとも屋外で65年、屋内で130年と、とても長い。なおプリント仕様は昇華転写。

データ取りで、まず3パターンを出力してみたが、想像以上によいものだった

出力してみようと思ったのは、撮影し続けているものが研究所であり、だいたいアルミやスチール、銅などの金属モノが多く、かつ細かい。また暗めの場所が多く、シャドウ部の階調や黒の出方も重要になるので、CP+会場でサンプルを見た際、コート紙やホワイトコート紙よりもしっかりした質感を期待できそうと感じたからだ。また額装はあまり好きではないので、写真展をするならシンプルなものがいいと考えていたのもある。

CP+2018のPiotecブースで、写真中央のワンちゃんのサンプルを見て、なんか有機ELみたいでイイと、思いっきり気になった次第だ。

PiotecサイトによるとオーダーはPDFに注文内容を記入してFAXするか、サイト内に記載されているメールアドレスに注文用PDFを送付しても対応してもらえる。料金体系は127×178mmと152×152mmが最安で3,000円、最大サイズである1,016×1,524mmは12万円といった具合に紙に比べると高めだが、お気に入りの写真を長く残すのであれば安い価格ではないだろうか。またイーゼルやスペーサー、フレームも用意されており、展示するにしても、自宅に飾るとしてもやりやすくなっている。

アルミイーゼル
厚みはサイズに関係なく約1.2mm

今回はほどよいサイズの203×254mmを発注してみた。素材はアルミで共通しているが、カラーには3パターンある。ホワイトグロス、ホワイトマット、クリアグロスで、それぞれ出方が異なるものだ。ホワイトグロスとホワイトマットが光沢か非光沢で、イメージとしては紙のそれと同じでいい。アルミを使用するため、合う写真が限定されそうと思ったのだが、ベースにホワイトがあるため再現性は高く、グレア仕様の有機ELのように黒が多くても浮いた感じがせず、オールジャンルに耐えるものだ。極端にいえば、iPad Pro 10.5/12.9で最終調整をかけてもOKなくらいなので、細かく考えないで済む人が多いだろう。

入稿形式は300dpi以上のJPEGかTIFFで、カラープロファイルはsRGBかAdobe RGB。最終的な変換はPiotec側で行なう。入稿データはD65/ガンマ1.8でカラーキャリブレーションした環境で生成したものを採用したが、大きく外れておらず、対ディスプレイ用の設定で処理してよさそうだ。

CMYKで出力する際のようにあれこれする必要はなさそう。また角には丸みが強制的に施される。これは安全性のため。

またアンシャープマスクなどの処理については、軽めで十分。パターンAとして量50%/半径1.0pixel/しきい値1レベル→量35%/半径1.0pixel/しきい値1レベル→量15%/半径1.0pixel/しきい値1レベルと段階的にアンシャープマスクをした紙用の汎用設定と、パターンBとしてディスプレイ用の量7%/半径0.8pixel/しきい値1レベル×3とデータごとで分けてみたが、どちらもアリな傾向だった。ともあれ、127×178mmで感覚を掴んでから、好みのサイズで本命を出力がいいだろう。

パターンAのアップ。少しきつめな印象。
パターンBのアップ。パターンAと比べると少し甘めだが、70cmほど離れた状態での見え方は良好だった。またここまで細かいものだと、203×254mmのサイズでは厳しかった。

クリアグロスはアルミの質感を活かせるというもの。データ取りに良さそうな高エネルギー加速器研究機構にあるBelle II測定器をソースとしてみたが、白色の部分だけがアルミの質感が剥き出しではなく、全体的にアルミの質感が出ている。また全体的に明るめとなったが、シャドウの強い部分はほぼそのままと独特の雰囲気で、メカメカしいものとの相性はいいが、それ以外となると、念密なデータ取りをしたうえでクセに合わせてデータを生成しておく必要があるだろう。ともあれ白は飛びやすいが、メカに合うので大変よろしい。

クリアグロス用の入稿データ。
実際に届いたもの。左上がやや明るいが、これはこの写真の撮影時に当たっていた光なので無視してほしい。
寄ってみるとアルミの質感がよくわかる。

といったように、アルミにプリントするため、題材を選びそうなイメージが先行しがちだが、ホワイトグロスとホワイトマットはオールラウンドに耐えるもの。手元に届いた実物の雰囲気もよく、日本でも浸透しそうな出力サービスになりそうだ。

林佑樹

ライター・フォトグラファー。今回のメタルプリントは、4月21日に二子玉川で開催の第三回ウェブメディアびっくりセールで展示しているので、現物が気になる人は見にきてください。