私はこれを買いました!

X-T3いまさら導入の超ぶっちゃけ話

FUJIFILM X-T3(今浦友喜)

今年、デジカメ Watchでレビュー系の記事を複数執筆していただいた写真家・ライターの皆さんに、2019年に購入したカメラ関連製品(新品に限る)をひとつだけ挙げていただきました。(編集部)

CCR搭載が決め手

これまでずっと悩ましかった。Xのさらなる色の深みを知ってしまったからだ。Xシリーズの色再現はとても美しいが、GFX 50Sで初めて搭載された「カラークロームエフェクト(CCR)」の階調豊かな表現力を目にしてからはより一層その色味に惚れ込んでいた。

CCRは彩度の高い被写体で起こりがちなベタッと塗りつぶしたような色飽和を抑制し、立体感のある質感再現を可能とする機能だ。そんな優れた機能であるCCRは当初、GFXのみに搭載されX-H1をはじめとしたXシリーズには非搭載だった。画像処理エンジンはGFX 50SもX-H1も同じ第3世代である「X-Processor Pro」であるため処理自体は可能だと想像するが、両機の価格差を考えると非搭載も仕方なしと考えていた。

しかし「X-T3」が2018年9月に登場し、状況は一変した。X-T3はXシリーズとして初めてCCRを搭載し、さらには画像処理エンジンも第4世代の「X-Processor 4」になることでGFX 50Sでは1枚につき約1秒ほど必要だったCCRの処理時間を0秒、ましてや高速連写時にも使えるようになってしまったのだ。

このこと自体は企業努力として素晴らしいことだし歓迎したいところだが、問題は私の使うX-H1だった。X-H1はXシリーズで“もっともハイパフォーマンス”であるにも関わらずCCR機能を有していない。CCR以外にも画素数やAF性能、高速連写やプリ連写などX-T3の方が優れている点は多い。もちろんX-H1には大型グリップやボディ剛性、5.5段のボディ内手ブレ補正など無二の魅力がある。だがやはり私の中でXシリーズ最大の魅力と感じている“色”の部分で最高の性能が出ていないことへ不満を感じていた。

そして今年X-T3をついに購入したわけだが、それも実は12月に入ってから。ここまで我慢しておいてなぜいまさら踏み切ったかというと、富士フイルムならではの理由がある。富士フイルムはこれまで“最新機種に入った新機能もセンサーと画像処理エンジンが同世代であれば以前の機種にも後にファームアップで入れる”というユーザー想いの素晴らしい対応を採ってきた。そう、なにを隠そう最新機種である「X-Pro3」を12月に入ってから触れる機会があり、それからX-T3の購入を決めたのだ。

X-Pro3を試用してみて感じたのはソフト面での大きな改良。新フィルムシミュレーションの「クラシックネガ」をはじめ「カラークロームブルー」「トーンカーブ」「フォーカスリミッター」「セルフタイマー保持設定」など新機能が多く入っている。ちなみに私はX-Pro2ユーザーでもあるのでもちろんX-Pro3の導入も検討していたが、X-Pro3のモニターやボタンの仕様変更は風景のフィールドに関していえば大歓迎とはいかない。そのため、そうした新機能がX-T3にファームアップで追加されることを大いに期待して今回の購入に至ったということなのだ。

なんだか書けば書くほど自身の小物感がでてしまったがさすがに全部買ったれ! といえるほどの剛気さは持ち合わせていないのでしかたがない。と、万全を期してX-T3を導入したはいいもののX-Pro3の新機能がファームアップで入るという確証はない。もちろん入らなかった場合は結局X-Pro3が欲しくなるというオチもあるわけなので、ユーザー想いでありがたいファームアップが出てくれることを祈って新しい年を迎えたいと思う。

どんよりとした曇り空の日だったがそれを逆手にとったハイキー表現。大胆なプラス3EVの露出補正を行うと桜の紅葉が白い背景に鮮やかに浮かび上がり爽やかな印象となった。ダイナミックレンジを400%に拡大しているため背景の曇り空は白とびは起こしていない
X-T3 / XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR / 100mm / 絞り優先AE(F11・1/15秒・+3.0EV) / ISO 640

近況報告

今年は車、パソコン、カメラを買い替え、結婚もした。なにかと変化の多い年で落ち着かないところもあったが年末にカメラ機材のリニューアルを図ったことでだいぶスッキリした気分。まだもう少し断捨離して気持ちよく年末年始を迎えたい。

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。