写真展レポート
「やりたかったことが全部できた」。いのうえのぞみ×福島裕二写真展 #03『I/F』『Y/N』
集大成の写真集完成を記念して AtelierY -青山-で11月28日まで
2021年11月25日 09:00
モデル・フォトグラファーのいのうえのぞみさんと、写真家の福島裕二さんによる写真展「いのうえのぞみ×福島裕二写真展 #03『I/F』『Y/N』」がAtelierY -青山-で開催されている。会期は11月28日まで。
いのうえさんはカメラ業界でも広く活動しており、デジカメ Watchにも度々登場しているのでご存知の方も多いことだろう。今回の展示作品は全て沖縄で撮り下ろしたもので、大判プリントの迫力で楽しめる。
併せて今回、自身の集大成という写真集制作をクラウドファンディングで実現。2冊で400ページ以上という異例のボリュームとなっており、こちらも必見だ。
「やりたかったことが全部できた」――いのうえのぞみ
――簡単に自己紹介をお願いします。
カメラ関係を中心にモデル活動をしています。自分でも写真を撮っており、最近ではフォトライターとして、旅行の記事やグルメの記事なども手がけています。
――写真を撮られることについての思いは?
「自分を残す」という事ですね。
――写真集について教えてください。
今回、ずっと夢だった写真集をクラウドファンディングで出せることになりました。1冊は福島さんがセレクトしたモノクロのみの作品集『I/F』で、もう1冊は私がセレクトした写真集『Y/N』です。福島さんとの写真展は5回目でこれまでも図録は作っていたのですが、写真集は今回が初めてになります。支援してくださる皆様のおかげで実現できました。
モノクロの『I/F』が64ページ。冊子を正方形にして縦写真でも横写真でも1枚1枚が映えるようにしています。私がセレクトした方は368ページとボリュームがあるので、手に取りやすいようにB5サイズにしています。合わせて400ページ超えですね。これらはクラウドファンディングのリターンですが、会場でも販売しています。
福島さんに最初に撮影していただいたのが2019年2月なので、まだそんなに経っているわけではないのですが、18回撮影してもらって、約2万枚の写真がありました。その中から選んだのでセレクトが大変で、ホテルに丸2日缶詰でした(笑)。
印刷は、創業100周年、憧れていた山田写真製版所さんにお願いして作りました。色校正に私も参加しましたが、モニターで見るのとプリントで見るのは全然違って、紙にすると今まで見えなかった細かいディティールまで見えてびっくりしました。
――写真集は初めてではないですよね?
実は二十歳の時に写真集を出していました。その時は自分でこうしたいという意見がまだ言えなくて、なされるがままに慌ただしく撮った感じでした。良いものができたと思っていますが、「もっとやりたいことがあった」という想いも一方ではありました。それでもう一度どうしても写真の世界で挑戦したくて、ずっと写真集を出すことを目標にしていました。
もともと写真が好きで芸能の仕事を始めたので、撮る方も撮られる方も両方やっていきたいと思っていました。撮られる方はある程度の形にまとめたかったので、今回が被写体としての集大成になったと思います。
福島裕二さんという凄く大きな存在に出会えて、一番良い形の写真集ができたと思っています。まさか30歳を超えてからこんなことができると思っていなかったので、皆さんに感謝しています。
いま38歳ですが、やっと「自分がやりたいことが全部できた」という感じです。10代、20代の頃も楽しかったですが、色々経験した思いが詰まっている今、出せてよかったと思っています。
――写真集タイトル『I/F』『Y/N』の意味は?
モノクロ作品集『I/F』は、いのうえ/福島の頭文字と、infallible(絶対確実な人、百発百中、間違いない)、infatuation(夢中)、interface(境界面)という意味があります。
私はもともと福島さんのモノクロ作品が大好きなんです。なので、それをもっと世の中に広めたくて、『I/F』を世界の色々なところに持っていって見せたいと思っています。
いのうえのぞみ写真集『Y/N』のほうは、裕二/のぞみの頭文字に加えて、Yearner(何かに対する強い欲求をもつ人)という意味をかけています。こちらは、10代の頃から私がやりたかったことが詰まっているという意味が込められています。
――今回の作品制作のきっかけは?
2019年のCP+の際に、ニッシンジャパンさんのステージで福島さんによるライブシュートのモデルとして参加したのが、福島さんと知り合ったきっかけです。ちなみに、その時の作品も写真集に入っています。
「いつか写真集としてまとめたい」という話は福島さんにしていたのですが、福島さんから「のぞみちゃん、そろそろどう? クラウドファンディングやらない?」という話があって、進めることになりました。
――クラウドファンディングの成果は?
450万円を目標にしたところ、お陰様で183人に支援していただいて最終的に約595万円を集めることができました。最初は300万円を目標に考えていたのですが、それでは作れないとわかり450万円に決めたという経緯があります。
写真展もそうですが、やはり写真集として形に残せたのがすごく嬉しいですね。写真集を家に置いてもらって、ずっと見ていただけるというのは本当に嬉しい事です。
――写真展の作品について教えてください。
沖縄で撮った写真のみで構成しています。全てSNSなどでは出していない作品になっています。ライカムという味のあるホテルがロケ地の1つですね。沖縄には夕方に到着して、撮影は次の日のお昼頃までで、丸1日ないくらいでした。
会場の写真は、最初は若いころのイメージで、奥に行くほど年齢を追っていく雰囲気だと感じています。1日で、10代、20代、30代といろんな時代の私を撮ってくれたと感じています。
福島さんはあまりポーズなどを指示せず、「そこにいてくれるだけでいいよ」という感じなのですが、ちゃんと被写体を見てくれていて、任せて自分が出せるという感覚がありましたね。それで、本当の自分を撮ってもらえているという実感がありました。
――お気に入りの1枚は?
私の撮影の時にいつも天気が悪くて、福島さんに雨女みたいに言われているのですが、沖縄でこの時だけ30分くらい陽が差したんです。それで嬉しくて飛び跳ねているんです。衣装も可愛くて、昔にタイムスリップしたようでしたね。
――撮影はどんな感じでしたか?
撮影中はあまり何かしようとせずに、自然でいられるように心がけていました。「のぞみちゃん、すきにやって」と言われていましたので。
撮った写真は全カット見ました。福島さんはライカのマニュアルフォーカスで撮っているのですが、ピントが合っているんですよ。私がすごく動いているのに。加えて、真っ暗なシーンでもピントが合っている。「なんでこんなに撮れるんだろう」とびっくりしました。
――撮影を終えてどうでしたか?
10代の時にも芸能の仕事をやらせてもらっていましたが、どこかで最初から全部諦めているような気持ちだったんですね。「私はあまり売れないんじゃないか……」というように。でも福島さんに出会ってからは、覚悟を決めて全力で挑戦できるようになりました。
なので今回の写真を、「昔の自分に見せられたら良かったのに」と思いましたね(笑)。
――最後に読者にひと言お願いします。
クラウドファンディングの写真集もご覧頂けますので、ぜひご来場頂ければ嬉しいです!
展示概要
会場
AtelierY -青山-
東京都渋谷区神宮前3-5-2 EFビル 地下1階
開催期間
2021年11月19日(金)~11月28日(日)
開催時間
平日:13時00分~20時00分
土日祝:11時00分~20時00分
休館日
水・木曜日
入場料
無料