写真展告知

稲垣徳文写真展:ROOTS -ニエプスのアトリエ、キューバのポラロイド-

(ソラリス大阪)3月22日~4月3日

昨年に引き続き、ソラリスでは2回目となる稲垣徳文写真展を開催いたします。
前回の展覧会『鶏卵紙のパリ』では、アジェが写した20世紀初頭のパリを辿り、8×10の大型カメラで撮影・当時の技法である鶏卵紙で仕上げた作品を展示し好評を博しました。

本展『ROOTS -ニエプスのアトリエ、キューバのポラロイド-』では、写真の発明者であるニエプスのアトリエを訪れ撮影した作品<ニエプスのアトリエ>と、世界各地の街角で出会った写真師たちのポートレート作品<キューバのポラロイド>をミックスして展示いたします。

写真の始まりの地、そして写真師たちへのオマージュを鶏卵紙のプリントの美しさとともにぜひご高覧ください。

写真展情報

現存する最古の写真は、1827年頃、ブルゴーニュのシャロン・シュル・ソーヌ郊外で撮影された。写真の発明者、ニセフォール・ニエプスの別荘から眺めた庭の景色だ。黎明期の写真は化学そのものだ。ニエプスの別荘は、今も住居として使われている。広い屋敷の一部は記念館として公開されているが、街からのバスすらなく、訪れる者も少なかった。屋根裏にはニエプスが暮らした頃の色褪せた壁紙が残る。
窓辺から眺めた庭は、ニエプスのイメージに写る納屋や鳩小屋などの構造物はもはや存在しない。ニエプスが発明したヘリオグラフィは40時間ほどの露光時間が必要だったとされる。南東を向いて建つ邸宅の庭は終日、明るい日差しが降り注いでいた。光が飽和したようなニエプスのイメージはその痕跡なのだと思った。
ニエプスが残した一枚から写真は始まった。屋根よりも高く聳える庭の木々に200年の歳月を感じさせられた。

ニエプスのアトリエ

2013年の秋、パリの広場で大型カメラと佇む写真師に出会った。
写真師のハンスさんはポートレートを撮影すると、傍らに置かれた箱に手を入れて現像を始めた。待つこと3分、白黒反転した印画紙を取り出すと、それを複写、ほどなくモノクロプリントが出来上がった。所要10分のインスタント写真は1枚5ユーロなり。
かつて、写真館のない街ではこうした写真師が活躍していたという。
70年前に撮影されたカルティエ・ブレッソンの「INDIA」にも街角の写真師を写した作品がある。インドやキューバの街角には現役の写真師がいるらしい。
このインスタント写真術は「キューバのポラロイド」とも呼ばれるという。
水道、電気の整った暗室を使わず、日光と銀の化学変化だけで生成されるモノクロプリントに写真の原点を見た思いがしたあの時。写真の古典技法に興味を抱いたのはそれからこのことだ。

キューバのポラロイド

会場

フォトギャラリー・写真教室・写真フレーム「ソラリス大阪」
大阪府大阪市中央区南船場3-2-6 大阪農林会館地下1階

開催期間

2022年3月22日(火)~4月3日(日)

開催時間

11時00分~19時00分

休廊

3月28日(月)

作家在廊予定

3月25日、3月26日、3月27日

ギャラリートーク

3月26日(土)19時30分~20時30分
定員:会場6名、Zoom90名
参加料:税込1,000円

作者プロフィール

1970年東京都出身。法政大学社会学部卒業。
在学中より写真家・宝田久人氏に師事する。
朝日新聞社「AERA」編集部を経てエディトリアルを中心に活動する。
「ウジェーヌ・アジェが写したパリの再訪」と「アジアの古刹巡礼」をライフワークにしている。東日本大震災後、太陽光でプリント可能な鶏卵紙による作品制作に取り組んでいる。日本写真協会会員。

・写真展
1991年『タシュクルガンへの道』オリンパスギャラリー
1995年『大陸浪人』ドイフォトプラザ
2007年『In the viewpoint of Asia / Tokyo』gallery Litfasssaeule Munchen
2011年『巡礼 Mt.Kailas』 コニカミノルタプラザ
2011年『Habitat』ギャラリー・シリウス
2017年『HOMMAGE -アジェ再訪-』 gallery bauhaus
2019年『10th gelatin silver session』参加 AXIS GALLERY
2020年『ROOTS -アジェとニエプスを巡る旅-』 gallery bauhaus
2020年『巡礼 2010-2020』フジフィルムイメージングプラザ東京/大阪
2021年『鶏卵紙のパリ』ギャラリー・ソラリス / 大阪