写真展告知
稲垣徳文写真展:Blue Period
『自然の鉛筆』ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットの邸宅を訪れる
2024年7月25日 09:39
ギャラリー冬青では、写真家の稲垣徳文氏による写真展「Blue Period」を8月2日(金)より開催する。
2023年に同氏が訪れたという、英国 ヘンリー・フォックス・タルボットの邸宅「Lacock Abbey」を中心とした「写真技術の生誕地」の作品を展示。
これまで撮影に訪れたパリやニセフォール・ニエプスのアトリエと同様に、大型カメラで撮影。19世紀の写真技法、サイアノタイプにプリントしているという。
サイアノタイプは、青写真とも呼ばれる青が特徴的な写真技法。作品の一部には、同一のネガから「サイアノタイプ 」と「鶏卵紙」にプリントしている。
同展では、サイアノタイプと鶏卵紙による作品30点を展示する予定。
自然の鉛筆の「植物の葉」を見つけたのは昨年の春のこと。探しはじめて2年あまりそれは自宅近くの街路樹の根元に生えていた。早速、枝葉のひとつを持ち帰りフォトジェニックドローイングを始めた。
サイアノタイプのシンプルな青と白の造形。光の作用により物の形が紙の上に定着される過程には期待感と驚きがある。180年前、アナ・アトキンスが海藻の標本をプリントして以来、基本的な作法は変わらない。
白いシルエットに浮かぶ葉脈は幾何学模様のように美しい。
このプルシアンブルーの青は日本語では紺青と表記される。絵画の染料として北斎や広重の浮世絵にも用いられたことからEdo Blueとも表現される。
ゼラチンシルバープリントが発明される以前、サイアノタイプ は19世紀におけるポピュラーな写真技法の1つだった。鶏卵紙に比べるとコントラストが高く、卵白やゼラチンなどの塗布層を持たないため用紙のテクスチャーそのままにマットにプリントされる。
かつて写真の黎明期を生きた人々は爽やかな紺青のプリントを眺めていた。
あらためて大型カメラで撮影したパリの街並みやニセフォール・ニエプスのアトリエの風景をサイアノタイプにプリントした。
英国南西部のレイコックを訪れたのはそれから3カ月後のこと。
ヘンリー・フォックス・タルボットが残した「植物の葉」の子孫たちは村を流れるエイボン川沿いに茂っていた。「植物の葉」は白い小さな花を咲かせる。
タルボットは比較的若い枝葉を選んでプリントしていたようだった。
※アナ・アトキンス:イギリスの植物学者。1842年にサイアノタイプを使った海藻の標本集を出版。のちに最初の写真集といわれる。
※「植物の葉」セリ科シャク属の多年草。和名「芍」シャク。英名「Wild Chervil」ユーラシア大陸東部からヨーロッパ東部まで広く分布する。山地の谷間から林の中など少し湿った場所に群生する。セリ科特有の香りがあり葉は色鮮やかな緑色。茎は直立し200cmほどに成長する。
作者コメント
会場
ギャラリー冬青
開催期間
2024年8月2日(金)~8月31日(土)
開催時間
11時00分~19時00分
休廊
日曜日、月曜日、祝日、8月13日~19日
ギャラリートーク
8月9日(金)19時00分~20時30分
※要予約