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奈良原一高写真展:宇宙への郷愁
東京工芸大学・写大ギャラリー(9/13~11/20)
2021年9月13日 06:00
初期から晩年にかけての作品を通覧できる
同大の写大ギャラリー・コレクションの中から、奈良原一高氏の初期から晩年までの作品が展示される。展示作品はカラー・モノクロあわせて約60点。
展覧会タイトルとなっている「宇宙への郷愁」は、同氏が写真集『消滅した時間』(朝日新聞社、1975年)に掲載した同名の文章によるもの。奈良原氏は、その文章中で自らが見た夢について「宇宙への旅立ちにあたって、人間は何を持って行くのだろうか。僕の見た夢は、何よりも写真を持って行くに違いないと、暗示しているかのようだ。」と語っているという。
写大ギャラリーの運営委員会は展覧会開催にあたり、奈良原氏の作品タイトルや作品集のあとがきなどからは、時間や宇宙、ノスタルジアなど、いくつかのキーワードが見えてくると指摘。作品のテーマや被写体は様々であるものの、それら作品を通観していくと、筋が一本しっかりと通っていることが感じられると、その作品世界を通覧することで立ち上がってくる視点を紹介している。
奈良原作品に関して
奈良原は早稲田大学大学院で美術史の研究をすると同時にフォトシリーズ「無国籍地」「人間の土地」を撮り始めました。銀座の松島ギャラリーにて初めての個展「人間の土地」を発表。大学院の学生だった頃から写真家として認められ、「王国」でさらに高い評価を受けました。その後「消滅した時間」で世界的な写真家となり、国内外の一流ギャラリーや有名な美術館などで数多くの展覧会を開催、作品集を発表するようになりました。
1975年に奈良原は東京工芸大学写大ギャラリーにおいて、「奈良原一高 静止した時間 1962-64&1973」を開催しました。写大ギャラリーでは「王国」「消滅した時間」より代表的なオリジナル・プリントを収蔵しておりましたが、この度、奈良原一高アーカイブズのご厚意を賜り、収蔵作品を一度に300 点に増やすことができました。そうしたことにより、奈良原の足跡をオリジナル・プリントから俯瞰することが可能となりました。奈良原は、軍艦島やトラピスト修道院、女子刑務所などの閉じられた空間から、ヨーロッパの街並みや人々、日本の文化、アメリカの広大な自然など、生涯において幅広いものに目を向けていたことがわかります。
奈良原一高は、何を見、どこを目指したのでしょうか。作品のタイトルや、作品集のあとがきなどから、時間、宇宙、ノスタルジアなど、いくつかのキーワードが見えてきます。写真集『消滅した時間』に、奈良原は「宇宙への郷愁」と題された文章を寄せています。その中で奈良原は、自らが見た夢について「宇宙への旅立ちにあたって、人間は何を持って行くのだろうか。僕の見た夢は、何よりも写真を持って行くに違いないと、暗示しているかのようだ。」と語っています。
奈良原は2005年から長い闘病生活に入り、2020年に惜しまれながらもこの世を去りました。しかし、これからも日本を代表する写真家として、ひときわ明るく輝き続けるに違いありません。ぜひ、奈良原一高の世界をお楽しみ下さい。
展覧会概要より引用
東京工芸大学・写大ギャラリー
所在地
東京都中野区本町2-4-7 中野キャンパス5号館2階
会期
9月13日(月)〜11月20日(土)
時間
月〜金:10時~18時
土:10時~17時
休館日
日曜日
入場料
無料