イベントレポート

日本カメラ博物館「カメラものしり展 やさしい カメラのABC」

普段見ることのできない収蔵品が多数展示 10月20日まで

日本カメラ博物館は、夏季特別展「カメラものしり展 やさしい カメラのABC」を7月9日から開催している。期間は10月20日まで。

全26テーマを実機とともに解説

特別展ではカメラの歴史、原理、種類などをAからZの26テーマに分けて説明パネルとともに実機の展示で解説する。今回は普段は見られない同博物館のコレクションが数多く並ぶため、カメラ愛好家には必見の展示となっている。

一方、カメラに興味があるものの知識には自信が無いという初心者や小中学生なども対象にしている。

カメラがどんな仕組みになっているのかといったことを実際のカメラを例に学べるように配慮されている。開催期間は小学校の夏休みを含んでおり、自由研究にも適した展示になっているそうだ。

説明パネルの例

親子向けのワークショップも開催

例年大人気となっている親子が対象の夏休みワークショップも開催する。詳細はWebサイトを参照してほしいが、既に定員に達したワークショップもあるほどだ。

日本カメラ博物館 運営委員の市川泰憲さんによると、「ぜひ子ども達に見て楽しんでほしいと思います。カメラの長い歴史の中でいろいろな技術が生まれましたが、それらを分かりやすく展示しています」とのこと。

今回の展示で特に珍しいアイテムは? と市川さんに聞いたところ、「『8×10インチ判カメラ用水中ハウジング』ではないでしょうか」と教えてくれた。大判カメラを中に入れてシートフィルムに記録するものだが、水中ではフィルム交換ができないため、1度の潜水で1枚しか撮影できない。メーカーは不詳だが特注品とのことだ。

日本カメラ博物館 運営委員の市川泰憲さんと8×10インチ判カメラ用水中ハウジング

なお、本展の図録が500円で販売される。

以下に展示の一部を紹介する。

C:カメラの始まり

画家が正確に絵を描くための「カメラ・オブスクラ」(左2つ)や実用カメラの第1号「ジルー・ダゲレオタイプカメラ」(右端)など、カメラ黎明期のモデルを展示。

E:日本のカメラの始まり

国産初のアマチュア用量産カメラ「チェリー手提暗箱」(レプリカ、左)や、明治期の日本製カメラ「軽便写真機」(右)などが並ぶ。

F:カメラの原理

デジタルカメラもフィルムカメラもレンズ、ボディ、撮像素子(フィルム)といった基本的な構造は同じだ。

G:カメラの種類

被写体を見る方法によって透視ファインダー式、一眼レフ式、背面モニター式などに分かれる。

H:大型カメラと小型カメラ

撮像素子やフィルムのサイズが違えば、ボディの大きさもまったく違ってくる。この中で一番大きなカメラは「ディアドルフ11×14」。約280×360mmの大判フィルムを使用する。

I:銀塩カメラと電子カメラ

初期の電子カメラのアナログ磁気記録方式や、デジタルでフロッピーディスクに記録する方式など様々な記録メディアのカメラを見ることができる。

L:レンズの役割と種類

レンズの加工工程が説明されていた。

レンズのカットモデルを見れば、レンズエレメントが複雑に組み合わされてできていることが分かる。

M:写真用レンズ

超広角レンズから超望遠レンズまでを焦点距離順に展示。焦点距離の違いによるそれぞれの役割を知ることができる。

O:レンズの絞り

Fナンバーとレンズの明るさを解説。Fナンバーが特に小さい大口径レンズも並んでいる。

Q:シャッター

現代では見られない、昔のシャッターも数多く展示されていた。

P:感度と露出

露出調整のパートでは、懐かしいフィルムのパッケージが目を引いた。様々な感度があることを提示しており、シャッター速度や絞りと併せて露出が調整できることを説明している。

R:光の種類

ストロボや写真用電球に混じって、昔使われていた閃光器があった。マグネシウムの粉を燃やして照明とするものだ。

V:動画

動画は静止画の連続であることが説明されている。フィルムのムービーカメラとして、35mm機の「ベル&ハウエル アイモ71 改造機」があった。毎日新聞出版が使っていたものだ。

W:特殊カメラ

特殊な目的で使用されるカメラが並んでいた。たとえば、指紋の撮影に使われた「ポラロイド 指紋カメラ103」は、検出した指紋に直接カメラを当てて撮影するインスタントカメラだ。

こちらは「キヤノン ハイスピード モータードライブカメラ」。キヤノンF-1をベースにした報道向けの高速連写カメラ。

他にも、ブローニーフィルムを使う水中カメラ「シルーロ水中カメラ」(右)や天体撮影用の「ニコン全天カメラ」(左)などがあった。

X:ステレオ写真

ステレオカメラは古くから存在するジャンルだ。比較的新しいデジタルのステレオカメラも見ることができる。

イベント詳細

展覧会名

日本カメラ博物館 夏季特別展「カメラものしり展 やさしい カメラのABC」

開催場所

日本カメラ博物館
東京都千代田区一番町25 JCII一番町ビル 地下1階

開催期間

2019年7月9日(火)~10月20日(日)

開館時間

10時00分~17時00分

休館日

毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日)

入館料

一般:300円
中学生以下:無料
団体割引(10名以上)一般:200円

武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。