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第15回名取洋之助写真賞に和田拓海さん

海外の児童労働を伝える

日本写真家協会は第45回日本写真家協会賞、第15回名取洋之助写真賞、第3回笹本恒子写真賞の贈呈式を12月11日に開催した。

第45回日本写真家協会賞

日本写真文化協会の田中秀幸会長(右)。左は日本写真家協会の野町和嘉会長。

今年の日本写真家協会賞は、写真文化の発展へ長年にわたり貢献してきた一般社団法人 日本写真文化協会に贈られた。

同協会は国内の写真館を中心にした団体で1948年に発足した。会員は約1,984名、賛助会社21法人(2018年4月現在)。2002年には東京・四谷にある日本写真会館内にポートレートギャラリーを創設し、年間約50の写真展を開いている。

「毎年、JPSの会員や、会員が指導するサークルなどにギャラリーを活用いただいている」と同協会・田中秀幸会長。この受賞を励みに、今後とも活動を続けていきたいと述べた。

なおポートレートギャラリーはプロ、アマ問わず利用でき、申込受付は2月と8月の年間2回行なっている。

第15回名取洋之助写真賞

第15回名取洋之助写真賞に選ばれた和田拓海さんは貧困や児童労働、難民問題などをテーマに活動するフォトジャーナリストだ。受賞作の「SHIPYARD〜翼の折れた天使たち」はバングラデシュのダッカにある船舶解体工場で働く子どもたちにフォーカスを当てた。

第15回名取洋之助写真賞を受賞した和田拓海さん。

「労働者のドキュメンタリーを考えて2018年から撮影を始めました。そこで幼い子どもたちが働く姿を見て、この現実を伝えたいと強く思いました」と和田さんは話す。

審査員の飯沢耕太郎さんは「この作品は歴代の受賞作の中でも完成度が高い」と評価する。と同時に、ドキュメンタリー写真を取り巻く環境が厳しい中で、若いフォトジャーナリストをこれからいかにサポートしていくかが大事とも指摘した。

和田さんはインドやバングラデシュなど南アジアでの取材に力を入れていく考えで、当初、ニュージーランドに拠点を置く計画だった。

「現地で生活を始めて3日目にこの受賞を聞き、計画を白紙に戻して帰国しました」

香港にあるストックイメージSOPA Imagesに所属し、海外の通信社などにフォトストーリーを配信しているが、写真だけでは十分な活動費が賄えないのが現実だ。写真とは別の仕事を持ちながら、取材を行なっており、海外に拠点を持つのは南アジアへのアクセスの良さと、もう一つの仕事に利する場所だからだという。

「来春、再度、南アジアへの取材に行きます。その後、オーストラリアへ移るかもしれません」

第3回笹本恒子写真賞

第3回笹本恒子写真賞に決まった吉永友愛さんは会社勤めの傍ら、35年かけて撮影した写真で写真集「キリシタンの里-祈りの外海」をまとめた。

第3回笹本恒子写真賞を受賞した吉永友愛さん。

1976年に、写真仲間と小さな教会のある村へ撮影に出かけたのがきっかけだった。囲炉裏の煙でいぶされた部屋にキリストとマリアの御影を見て、興味を惹かれ、休日を使い、撮影に出かけるようになった。

審査した大石芳野さんはモチーフの一つ、長い歳月を感じさせる石の階段に強い印象を受けたという。

「昔ながらの暮らしを大事に生活し、住む人たちが深くつながっている。そうした日々の営みの豊かさを広く私たちに訴えかけてくる、普遍的な広がりを感じる」と評した。

吉永さんは受賞の喜びとともに、「自分を受け入れてくれた長崎市外海地区の人たちへ深く感謝いたします」と話している。

2019年第15回「名取洋之助写真賞」受賞作品 写真展

富士フイルムフォトサロン東京

開催期間:2020年1月24日(金)〜2020年1月30日(木)
開催時間:10時00分〜19時00分(最終日は16時00分まで、入館は終了10分前まで)
休館:無休

富士フイルムフォトサロン大阪

開催期間:2020年2月7日(金)〜2020年2月13日(木)
開催時間:10時00分〜19時00分(最終日は14時00分まで、入館は終了10分前まで)
休館:無休

第3回「笹本恒子写真賞」受賞作品展 吉永友愛写真展「キリシタンの里-祈りの外海」

会場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」
開催期間:2019年12月19日(木)〜2019年12月25日(水)
開催時間:10時00分〜18時00分(最終日は15時まで)
休館:日曜日

市井康延

(いちいやすのぶ)1963年、東京生まれ。ここ数年で、新しいギャラリーが随分と増えてきた。若手写真家の自主ギャラリー、アート志向の画廊系ギャラリーなど、そのカラーもさまざまだ。必見の写真展を見落とさないように、東京フォト散歩でギャラリー情報の確認を。写真展の開催情報もお気軽にお寄せください。