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ソニーIP&S、第44回日本写真家協会賞を受賞

写真技術に関する功績を讃えて

日本写真家協会が主催する3賞の贈呈式と、会員相互祝賀会が12月12日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で開かれた。2020年5月、同協会は創立70周年を迎える。同協会の正会員は1,511名、賛助会員55社、名誉会員15名(2018年6月現在)。

日本写真家協会賞(ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社)

日本写真家協会賞は写真技術に関する発見、発明、開発での功績を顕彰するもので、第44回はソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社に贈られる。この日は同社デジタルイメージング本部第1ビジネスユニット シニアゼネラルマネージャーの田中健二氏が登壇。

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社デジタルイメージング本部第1ビジネスユニット シニアゼネラルマネージャーの田中健二氏。

同社は2006年にレンズ交換式デジタル一眼の「α100」を世に送り出した。以来、自社でイメージセンサー、プロセッサー、レンズを開発し、最近はEVFも手掛けている。

田中氏は「ハードだけでなく、プロサポートサービスを始め、発表の場としてのギャラリー、世界との接点としてソニーワールドフォトグラフィーアワードにも力を入れている。今後もハード、ソフト両輪で事業を進めていきたい」と語った。

名取洋之助写真賞(鈴木雄介氏)

第14回名取洋之助写真賞は鈴木雄介氏、同奨励賞はやどかりみさお氏に決まった。

鈴木氏の受賞作「The Costs of War」は戦争の現場、そこで傷ついた人々を捉えたものだ。

第14回名取洋之助写真賞受賞作品(鈴木雄介氏)
第14回名取洋之助写真賞受賞作品(鈴木雄介氏)
第14回名取洋之助写真賞受賞作品(鈴木雄介氏)
第14回名取洋之助写真賞受賞作品(鈴木雄介氏)

氏は現在、ニューヨークを拠点に写真家として活動する。写真撮影だけでなく、映像、ミュージックビデオなども手掛けながら、自らのテーマである紛争の現場を追う。その写真はアメリカのタイムウェブ版などや、日本の通信社や週刊誌で掲載されている。

22歳まではミュージシャンを目指していたが、ある出会いから2006年、アフガニスタンに行った。

「戦争で傷ついた国の姿に衝撃を受け、どう咀嚼し、表現したらいいかを思い悩んでいた。その時、写真を目にして、人の心に直感的に訴えかけられる表現力に気づいた」

10年ほどの間に、戦争の現場、その周辺諸国、またアメリカ本土での帰還兵、その遺族たちの姿などを見て、写真に収めてきた。アフガンをはじめイラク、シリア、西アジア、中東諸国、ヨルダンなどだ。

「戦争とは何か、僕たちの社会との接点を考えながら、その写真を見返した時、ばらばらにあった点と点が一つの大きな円に結ばれて見えてきた」

戦争を海の向こうの事と思っている日本でも、政治経済を通じて軍需産業は密接に関わっている。IT、AIなど最先端技術が戦争の形を変えていくが、人々の暮らしを破壊し、人の命を奪う事実は変わらない。

「情報があふれた今の時代に、写真が戦争を止めることは難しいかもしれない。ただ日常を見直すきっかけや、世界で起きていること、そこに住む人に想いを寄せることにつながればと思います」

第14回名取洋之助写真賞を受賞した鈴木雄介氏。

受賞作はキヤノンEOS 5D Mark IIIで撮影し、日常的には富士フイルムのX100Tを使う。

「クラシックなデザインと発色でXシリーズを好む海外のカメラマンは多い」と話す。

2019年にはシリア、イラク、イエメンの情勢を見ながら、取材に行く予定だ。

名取洋之助写真賞奨励賞(やどかり・みさお氏)

奨励賞のやどかりさんは病気療養中で欠席。受賞作の「夜明け前」は双極性障害で入院した妹を被写体にしたものだ。

第14回名取洋之助写真賞奨励賞作品(やどかり・みさお氏)
第14回名取洋之助写真賞奨励賞作品(やどかり・みさお氏)
第14回名取洋之助写真賞奨励賞作品(やどかり・みさお氏)
第14回名取洋之助写真賞奨励賞作品(やどかり・みさお氏)

「極身近でありながら、多くの命を奪う精神疾患をテーマにしました。近すぎて見えないもの、見ようとしないものに目を向けるきっかけになればと思います。この場を借りて、妹に感謝を伝えさせてください」

会場では、代読で作者のメッセージが伝えられた。

笹本恒子写真賞(足立君江氏)

第2回笹本恒子写真賞は長年、カンボジアの農村に暮らす子どもたちを撮影してきた足立君江氏に贈られた。

第2回笹本恒子写真賞を受賞した足立君江氏。

賞の候補には男女年齢を問わず、多くの作品が俎上に上げられていたそうだ。審査ではまず賞の基準を模索し、「賞に冠した名前からも女性を対象にする」ことを決めたと、審査に当たった椎名誠氏は経緯を説明している。

足立さんは2000年、初めてカンボジアを訪れた。孤児院では子どもが売られる姿を目にし、この国とどう向き合うか、子どもたちとどう接するかを真剣に考えたそうだ。

当時の子どもたちは社会に出て、トラックの運転手やボクサーになった人もいるが、人身売買の犠牲になり、命を落とした子たちの姿も見てきた。

「彼らにいろいろなことを教えられ、生かされてきたのかもしれない。政治的に難しい時期にあるカンボジアで、もう少し、村の人たちと交流しながら写真を撮っていけたらいいと思います」

名取洋之助写真賞受賞作品展

東京会場

会場:富士フイルムフォトサロン東京
開催期間:2019年1月18日(金)〜2019年1月24日(木)
開催時間:10時00分〜19時00分(入館は18時50分まで)
休館:無休
入場料:無料

大阪会場

会場:富士フイルムフォトサロン大阪
開催期間:2019年2月15日(金)〜2019年2月21日(木)
開催時間:10時〜19時(最終日は14時まで、入館は18時50分まで)
休館:無休
入場料:無料

市井康延

(いちいやすのぶ)1963年、東京生まれ。ここ数年で、新しいギャラリーが随分と増えてきた。若手写真家の自主ギャラリー、アート志向の画廊系ギャラリーなど、そのカラーもさまざまだ。必見の写真展を見落とさないように、東京フォト散歩でギャラリー情報の確認を。写真展の開催情報もお気軽にお寄せください。