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キヤノン、新コンセプトカメラ「iNSPiC REC」発表会レポート

未開拓のユーザー層へアピール イラストレーター横峰沙弥香さんによるトークショーも

「iNSPiC REC」の発表会、午後の部に登壇した人気イラストレーター横峰沙弥香さんと、愛息のまめちゃん。

キヤノンは12月5日、新製品ウェアラブルカメラ「iNSPiC REC」の発表会を午前と午後の2回に分けて開催。午前の部はガジェットを中心とした媒体向けにマーケティング戦略と製品紹介を、午後の部では女性誌や一般誌向けに商品コンセプトの説明に加えて、人気イラストレーターの横峰沙弥香さんを迎えたトークショーが行われました。

ここでは午前・午後両方の発表会の模様をお伝えします。

新規ユーザーを取り込むマーケティング戦略

iNSPiC RECは、テストマーケティングとして、2019年10月に日本のクラウドファンディングサイト「Makuake」にて1,000台限定で出品し、12時間で完売になり話題となった製品です。

午前の部は、カメラやガジェットを中心とした媒体向けの発表会です。はじめにキヤノンマーケティングジャパン株式会社であるコンスーマビジネスユニット コンスーマ商品企画本部 本部長の沢田泰一さんが登壇。コンセプトやマーケティング戦略を説明しました。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 コンスーマビジネスユニットコンスーマ商品企画本部 本部長 沢田泰一さん。

iNSPiC(インスピック)は、2018年にキヤノンの新たなブランドとして発表され、2018年9月にスマホ専用ミニフォトプリンター、2019年5月にカメラ付きミニフォトプリンターが発売されました。今回発売されるiNSPiC RECは、iNSPiCブランド第3弾です。

iNSPiCというブランド名は、instant(インスタント)・picture(ピクチャー)・inspiration(インスピレーション)を掛け合わせた造語。iNSPiCというブランドを通して実現したいことは、次世代顧客の獲得とイメージング市場の活性化とのこと。

「キヤノンのカメラユーザー層は40〜60代が約8割、男性が7割を超えています。スマートフォンが生活の中に当たり前にあるデジタルネイティブ世代に対して、弊社が訴求できているかが直近の大きな課題と感じています。その課題に対してiNSPiCというブランドを通して、デジタルネイティブ世代に商品だけを届けるだけでなく、商品を通じて新しい写真の楽しみ方を提案したいと考えています」

「新しいマーケティングにチャレンジするため、クラウドランディングサイトMakuakeとコラボレーションしたり、デジタルネイティブユーザー向けにiNSPiCで撮って、プリントして、日記にするなど新たな写真の楽しみ方を提案したり、若年層にリーチするためのマーケティングを20代を中心とした若手の女性プロジェクトチームを立ち上げたりして取り組んで来ました」

「若手の女性中心としたichikara(イチカラ)プロジェクトチームは、商品をいかに売るか? ではなく、商品イメージをどう伝えていくか? 写真を通してお客様の生活を豊かにするか? に取り組んでいます。iNSPiCのアプリケーションの登録情報から分析した結果、iNSPiCのユーザーは女性が8割強、さらに年齢層は10〜30代が半分を占めていました。iNSPiCは従来リーチできなかった層を取り込む結果につながっていることがわかり、今後もiNSPiCブランドで新たなユーザー獲得を目指していきたいと考えています」

防水のカラビナ型カメラでいつでも撮り歩く楽しさを提案

続いてiNSPiC RECのプロジェクトリーダーである浅葉森さんが登壇し、製品コンセプトと国内市場のあり方について説明が行われました。

iNSPiC RECプロジェクトリーダーの浅葉森さん。

「iNSPiC RECのコンセプトは、“RECORD EVERYDAY 〜撮り遊ぼう〜”です」

「まず、カメラなのか? という見た目が一番の特徴だと考えています。従来の弊社の製品とは違い、シャッターボタンとレンズというシンプルな作りになっています。昨今、いろいろな機能が増えてきたカメラ業界において、究極の引き算をした製品です」

フレームとレンズのみというシンプルな形状。
上面右にシャッターボタンが付いています。
背面は電源ボタンと撮影モードダイヤルのみ。液晶モニターを搭載せず、左側のフレームをファインダーとして使います。
側面にmicro SDスロットとmicro USBポートを備えています。

「身につけられるということが、最大の武器です。身につけると言っても昨今流行っているGoProを代用するようなアクションカムのような身につけ方ではありません。カラビナの形状を活かしてリュックやストラップにつけ、“常にカメラを持ち歩きいつでも写真が撮れるようにしよう!”と提案します」

「スマートフォンにカメラが搭載され、昨今あらゆる撮影シーンで活躍していますが、ポケットやカバンからカメラを出すというひと手間を躊躇してしまうことがあります。どこでも引っかけられるカラビナのデザインは、バッグなど外側に出した状態で持ち運べるので、スマホやカメラを出すのが面倒だと感じる心のストレスを減らせることができると考えています」

フレームがカラビナになっていて、どこにでも引っかけられる形状になっています。

「大人だけでなく、子どもにも使ってほしいと考えています。子どもが使っても、壊れる心配がない耐衝撃性や防水性を備えています」

「液晶モニターがないこともセールスポイントです。すぐに確認できると、満足いくまで何度も撮り直したくなります。構図のこだわりや撮り直しの手間を省き、“シャッターチャンスに撮った!”という喜びと、どんな写真が撮れているだろうか? というワクワク感を楽しんでもらいたいと考えています」

専用アプリ「Canon Mini Cam」がiNSPiC RECの発売と同時にリリースされます。カメラの記録画質やアスペクト比の変更はこのアプリから設定します。

iNSPiC RECの前面は取り外しができ、別売りで着せ替えジャケットが売られ、今後ジャケットの柄は増える予定だそうです。

最後にiNSPiC RECを実際に身に着けたモデルのフォトセッションとタッチ&トライが行われました。

カラーバリエーションは4色。ジャケットを変えて楽しむこともできます。
防水性能は水深2m30分まで。水に沈められたモデルも展示されていました。

横峰沙弥香さんのママ目線による製品レビュー

午後の部は、女性誌や一般紙向けの発表会です。最初に午前中にも登壇した浅葉さんよりiNSPiC RECのコンセプトや製品特徴が紹介されたあと、イラストレーターの横峰沙弥香さんが登壇しました。

横峰さんは2児の母で、愛息「まめちゃん」と、愛娘「ゆめこちゃん」との日々をつづった育児絵日記が人気です。インスタのフォロワー数は30万人以上で、育児日記は書籍化もされています。

イラストレーターの横峰沙弥香さん。長年、EOS Kiss X4を愛用し、EOS Kiss X9iのCMでは息子のまめちゃんと親子で出演しました。
横峰さんと一緒に登壇したまめちゃん。まめちゃんの登場に来場者全員が癒やされ、笑顔になりました。

「一眼レフはじっくりきれいな写真を撮りたい時に使っています。以前、旅行に持っていって使おうと思ったのですが、カメラが大事すぎてアクティティに熱中できないことがありました。そのような時に機動力が高そうなスマホで撮影しています」

「iNSPiC RECを使った印象ですが、起動が速さが最高でした。スマートフォンのカメラロールの写真と、iNSPiC RECで撮った写真は子ども達の表情がぜんぜん違うのです。いまの娘は“寝るごっこ”をするのがブームで、“今から私が寝るから、可愛い私を撮って”とよく言います(笑) でも、スマホを起動させた瞬間にこの表情は終わってしまいます。子どものシャッターチャンスは、本当に短いんです。この写真は娘の良い表情をとらえられた嬉しい1枚です」

「私が使っていると、可愛い色のカメラに子どもが食いつかないわけがなくて、すぐに子どもたちも使うようになりました。下の真ん中の写真は息子が撮ったものです。スマホだと失敗だと思い消してしまう写真でも、時間が経ってから見ると息子の目線で見た世界だと思えて大切な1枚になりました」

「子育てをはじめて、カラビナの便利さに気づきました。カラビナは普段もよく使っていて、買ったものをベビーカーに引っかけるなど、いろいろなシーンで便利です。だから、カラビナという形状はすごくありがたかったです。お借りしている間は、カバンの紐に引っかけて持ち歩いていました。外に出しているのが不安という人は、周りがラバー素材で傷が付きにくいので、鍵のような使う頻度の高いものに付けておくのも良いかなと思いました」

「いろいろ試しましたが、首掛けがいちばん速くカメラを構えることができました。アクティビティの時でも軽いので気にならないと思います」

防水・耐衝撃性のおかげで、子どもが触ってもハラハラ&イライラすることなく様子を見ることができたそうです。

「子どもにとって写真を撮ることは、身近なものになってほしいと考えています。レンズ付きフィルムを渡して、旅行や普段に好きなものが撮れるようにしています。撮り終わったら現像に出して、何が写っているか家族で見るということをずっとやっていました」

「繊細なカメラだと、子どもに持たせることができないので、iNSPiC RECと子どもの相性はすごく良いと思います。子どもに好きに撮ってもらって、何が写っているかを見返すのがとても面白いんです」

「どんなことに息子が心を動かされたのか、子どもの目線ってこんなに低いんだなどと、毎回発見があります。子どもが撮った写真は、家族の会話が増え盛り上がります」

iNSPiCというブランドが、スマホが当たり前のデジタルネイティブ世代や、女性ターゲットにどのように広がっていくか今後が楽しみです。

加藤マキ子

編集者、ライター。女子美術大学卒。二児の母。カメラ書籍を手掛ける編集プロダクションで女性向けのカメラ雑誌や書籍を多数手掛ける。その後、実用書系編集プロダクションを経て、2013年に独立。仕事が好きで、マグロのように止まらず常に全力疾走中!