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「Adobe MAX Japan 2019」Lightroomがテーマのセッションを紹介

黒田明臣さんによる効率的なワークフロー構築の例

フォトグラファーとエンジニアという経歴の黒田明臣さん。

アドビのクリエーター向けイベント「Adobe MAX Japan 2019」が、パシフィコ横浜で開催され、今年もCreative Cloudの人気ツールに関するセッションが多数行われた。

その中のひとつ「エンジニア流!フォトグラファーが写真を効率的且つクリエイティブに扱うためのLightroomワークフロー」の内容をお届けする。セッションに登壇したのはヒーコの黒田明臣さん。

黒田さんは、もともとサーバーサイドのエンジニアで、DeNAでエンジニアとして働くかたわら、プロのフォトグラファーとしても活動を両立していた異色の経歴の持ち主。今回のセッションでは元エンジニアとしての立場からも、Lightroomを活用するワークフローを紹介した。

現在Lightroomは、大きく分けて2つのバージョンが用意されている。「Lightroom Classic」と、クラウドベースの「Lightroom」だ。双方ともに写真編集機能は充実しているが、Lightroom Classicの写真管理機能は「最大にして最強の機能」だと強調する。

LightroomとLightroom Classicのそれぞれの特徴(以下セッションで使用された

その鍵となるのが「カタログ」と「コレクション」。この2つをうまく使いこなすことで、「有効なワークフローを実現できる」と黒田さんは紹介する。

カタログは、Lightroom Classicのデータベースだ。実画像ファイルを保管するデータベースであり、自由にフィルタリングし、検索し、カタログ自体の分割・結合も自由自在に行える。カタログ上で表示される画像と実画像データが完全に分離されており、「シンボリックリンクのようなもの」(黒田さん)。そのため、複数のカタログに同じ画像を登録しても、実データが複製されることはない。

Lightroom Classicの特徴は強力なカタログ機能にある。

黒田さんは、「3つの考え方で複数のカタログを作っている」という。

まずは時系列でのカタログ。1年ごとだが、今年はさらに細かく四半期ごとにカタログを作成しているそうだ。カタログ自体の結合が簡単なので、1年が終われば四半期ごとのカタログを統合しているという。

黒田さんのカタログ管理方法。

これに加え、現在進行中のプロジェクトのカタログを作成する。これは期間を横断しているので、年をまたいでもそのまま継続する。

さらに一過性のセッションカタログも作成する。これは、(今回のMAXでの講演のような)一時的なイベント時のような時に使うカタログ。

黒田さんは「Slackなどのチャットで複数のグループやチャンネル作ったりするようなもの」と説明し、「カタログ設計が重要」と指摘する。カタログをきちんと扱わなければ、Lightroom Classicのメリットを120%享受できない、と黒田さんは話す。

カタログではなく「コレクション」は、カタログ内の画像データをフォルダ構造のように入れ子で分類する機能。レーティングなどによって自動で分類していくのが一般的だという。黒田さんは、ほかのフォトグラファーから受け取った画像などを受領して、セレクトして、採用した画像という具合に、それぞれをレーティングなどで自動分類しているそうだ。

カタログ内はコレクションによって分類する。

複数のカタログ、コレクションを使いながら「ワンソースであることがポイント」であり、むだのないデータ運用ができる、と黒田さん。「写真をただ編集するだけのソフトウェアであれば山ほどある」が、Lightroom Classicは「カタログとコレクションが最大の武器」だとしている。「写真管理を使わずに写真編集のためだけにLightroom Classicを使うのは、電話機能を使わないiPhoneぐらいのイメージ」。

この管理機能は強力であり、「フォトグラファーだけでなくディレクターのような職種の方も使っている」そうで、Webサイトを構築するための各種アセットを管理できるポテンシャルを秘めているのがLightroom Classicなのだという。

ポータビリティ性の高さもLightroomのメリットだ。実データはクラウドに保管し、マルチデバイスで同じデータを活用できるのがLightroomの強みだと黒田さん。メインで使っているのはLightroom Classicだという黒田さんは、LightroomのクラウドベースのカタログをLightroom Classicに同期させて、レタッチや写真のピックアップなどをiPadで行う、といった使い方をしているという。

ポータビリティの高さによってマルチデバイスで活用できるのがLightroomの強み。Lightroom Classicとも同期させて活用しているそうだ。

黒田さんは、2つのLightroom製品について、「得手不得手がそれぞれある」と指摘。写真編集についてはどちらも強力な機能を備えているが、管理機能のLightroom Classic、ポータビリティのLightroomといった具合に、ユースケースに応じて使い分けることを推奨する。「一番のポイントは写真家のためだけのツールではなく、デザイナーでも活用できる」(同)という。

そうしたことから、黒田さんは「Lightroom ClassicとLightroomはまったく区別されている製品で、両方ともあってほしいし、あってしかるべきソフトウェア」だと強調。フォトグラファーだけでなく、デザイナー、フロントエンドのエンジニアでも写真などのアセットを活用することがある、として、Lightroom製品を使ってみることを勧めていた。

他にも、編集機能ではLightroom Classicの一括処理を紹介。
多彩なアウトプット機能も重要で、Lightroom Classicの新機能である複数の書き出しプリセットの一括処理も紹介された。
それぞれに特徴があり、フォトグラファーだけでなく幅広く活用できるのがLightroomだという。
ちなみにこれは黒田さんが最後に紹介した、Lightroom Classicのショートカットキー。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。