PROGRESSIVE PRO LENS − 写真家がプロレンズを選ぶ理由

ポートレート撮影ではチーム全体の「化学反応」を意識……黒田明臣さんインタビュー

逆光の状態で開放絞りで撮影。開放絞りとは思えない解像感と肌の微細な階調が表現されていることに驚いた。影になったモデルの顔の質感もしっかりと描写されている。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / 絞り優先AE(F2、1/1,250秒、±0EV) / ISO 200

写真はレンズで決まる……このフレーズの重みを誰よりも意識しつつ、日々創作活動に勤しむ若手写真家たちがいる。彼らの写真との出会いや写真に対する考え方、そしてレンズへの想いなどをインタビューするのが本連載「PROGRESSIVE PRO LENS」だ。

第1回目に登場するのは、広告写真などで活躍中の黒田明臣さん。

黒田さんがポートレート撮影に求めるレンズとは。そしてオリンパスの大口径標準レンズ、M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PROの切れ味はいかに。

黒田明臣
1983年東京生まれ。Webディレクター、 エンジニアとして活動。プライベートで制作した写真が国内外のコンテストで評価 され商業撮影を開始する。現在は広告、雑誌、企業写真を中心に活躍している。

今回使用したレンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO

現在、どのような写真の仕事をされていますか。

広告写真、ビジネス誌、カメラ誌、そして一般企業のビジネス写真を中心に活動しています。また、並行してヒーコというWebマガジンの運営・セミナー企画も行っています。

他にはメーカーをはじめとする企業とのタイアップで製品レビューやイベント登壇なども増えてきました。もっと簡潔に説明する方法があれば良いといつも思うのですが、色々なことに手を出してしまっているので説明に困っています(笑)

強い直射光と影という明暗差の激しい状況。全階調で収差を感じさせない丁寧な描写で、陰影が作るメリハリを際立たせてくれている。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / マニュアル露出(F3.5、1/160秒) / ISO 200

写真の仕事をされるようになったきっかけは?

元々フリーランスのエンジニアとして、企業の新規Webサービス立ち上げなどに関わってきたのですが、2014年より意欲的に人物を撮り始めるようになってから、次第に本業のお客さんから「採用サイト用にクリエイターの撮影できない?」といったようなお話をいただくことが増えてきました。どうやら腕試し用に参加していた国内外のコンテストで、受賞する度にFacebookなどで報告していたことから、「なにやら黒田が写真をはじめて、それなりに撮れるらしい」といったように周りで広まったようです。

昨年から急激に写真案件の比重が増えてきたのでつい最近商業写真家としてキャリアシフトしました。

狭い室内で、ピント面と背景まで距離がない状況だが、木々のボケは美しく、女性の姿を引き立たせてくれる。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/1,250秒、-0.3EV) / ISO 200

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

好きな写真家はたくさんいるのですが、明確に影響を受けたと感じるというよりは広く浅く無自覚に影響を受けている気がします。

好きな写真家は、Gregory Crewdsonや、Paolo Pellegrin、国内だと上田義彦さんの写真が好きです。キャンディッドな写真に心惹かれることが多いですね。写真集は、好きな写真家のものもそうですが、興味のあるなしに関わらず高名なものであれば勉強のためにできるだけみるようにしています。

室内で直射光が当たっていない中で撮影。被写体への光は反射光のみで構成されているが、質感がしっかり描写された。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/800秒、-0.7EV) / ISO 200

人物を撮るときに大切にしていることは?

相手やケースによって異なる面もあるので一概には言えないのですが、最大公約数的なポイントでいうと「化学反応」を意識しています。

モデルをはじめヘアメイクやスタイリストなど写真を作り上げるチーム全体で、皆全力で取り組むのは当然として、その結果が一人では辿り着けないベストを越えた結果になるように良い化学反応を常に求めています。

そのために、現場に柔らかい空気が流れるように働きかけたりといったアクションが生まれてくる感じですね。

瞳にピントを合わせて開放絞りで撮影。恐ろしいまでの解像感に驚かされる。ハイライトの階調が残る好みの描写だった。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/1,600秒、±0EV) / ISO 200

ポートレート撮影における交換レンズの条件とは?

基本的には画質です。解像感と階調性の2点を注視しながら判断しています。外寸などはほとんど気にしません。

解像感はあればあるほどいい、という方もいますが、あまりありすぎるとエッジが高コントラストすぎてジャギーのように見えてしまうこともあるので、バランスが大事だと感じています。

また、階調性の豊かさもRAW現像を行った際に細かい調整を破綻なく行えるかどうかという点で重要視しています。

オリンパスのM.ZUIKO PROレンズを使っていかがでしょう。

解像感と階調性、両方の意味で驚かされました。特にハイライトのトーンがキレイに出ている点などは、表現の幅が広がるので嬉しいですね。

光に照らされて明るい肌の中でも、キレイなグラディエーションとして表現されているのは衝撃でした。決してマクロな写真でもなく、バストアップより広い範囲の構図でも肌の産毛がわかる解像感にはもう目を疑いましたね。

フルサイズ機と大口径レンズの組み合わせに劣らないボケ具合。ボケの中でも美しい濃淡が表現されている。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / 絞り優先AE(F1.2、1/3,200秒、-0.7EV) / ISO 200

海外と日本、それぞれのフォトコンテストの違いは何でしょう。

国内外という点よりも、フォトコンテストそれぞれの特色というのが一番大きいとは思いますが、海外のフォトコンテストは国内以上に比べてビジュアル的な要素を重視している印象は強いです。国内は、写真内の要素やコンセプトをよく見ている印象です。

あとは海外のしっかりしたコンテストだとステートメントを重視されるので、そのあたりも国内以上に気を配る必要があると感じています。

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

いま現在取り組んでいるシリーズが2つあるので、それを継続してやりたいと思っています。

他には、自分は運良く雑誌や広告などで仕事をやらせてもらっていますが、従来のようにフォトグラファーとしてのキャリアパスを歩んできた方々の何倍も努力しないといけない立場だと感じています。なので習作としての作品制作を都度重ねていきたいです。

そして覚えたことはできるだけ世の中に対してアウトプットしていきたいとも思っています。そんな思いから、ヒーコを立ち上げたという経緯もあります。

50mm相当は寄っても引いても心地良く使える焦点距離。単焦点レンズを1本選ぶとしたら、迷わずこの焦点距離を選ぶ。
OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO(50mm相当) / 絞り優先AE(F2.0、1/160秒、±0.0EV) / ISO 200

デジタルカメラマガジン7月号にも黒田明臣さんが登場!

発売中のデジタルカメラマガジン2017年7月号でも、連動企画「PROGRESSIVE PRO LENS」がスタート。黒田さんによる大口径標準レンズのテクニックが紹介されています。こちらもぜひチェックを!

モデル:勝海麻衣(CRUVA)
ヘアメイク:小夏
制作協力:オリンパス株式会社

デジカメ Watch編集部