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リコー、THETAを使った不動産向け撮影・オーサリングサービスを開始

ビジネス向けクラウドサービス「THETA 360.biz」で展開

左からLIFE STYLE株式会社代表取締役の永田雅裕氏、株式会社リコー新規事業開発本部SV(Smart Vision)事業開発センター所長の大谷渉氏。

株式会社リコーは、全天球カメラ「THETA」を用いた不動産向け撮影・オーサリングサービスの提供を3月28日に開始した。

リコーが2014年に開始した法人向けクラウドサービス「THETA 360.biz」の有料プラン契約社を対象として提供する新サービス。VRコンテンツのクリエイター支援事業を展開するLIFESTYLE株式会社との業務提携によって、VRコンテンツの制作を請け負う。当面は不動産物件の内覧向けVRコンテンツ制作を行なうが、順次対象とする業界を拡大する予定だという。

THETA 360.bizでは、顧客がTHETAで撮影した全天球画像をクラウド上に保存し、Webサイトに埋め込める画像プレーヤーのHTMLコードを取得できる。複数の全天球画像を組み合わせて、必要に応じてプレイヤー内で表示を切り替えられる「ツアー」と呼ばれるコンテンツも作成可能。リコーでは観光地の景観紹介や建物の内装チェック、工事現場などの施行管理といった活用シーンを提案している。

今回の不動産向け撮影・オーサリングサービスでは、THETAを使った全天球画像の撮影とVRコンテンツ(ツアー)の制作をLIFE STYLE株式会社が担当し、物件の間取りに含まれる複数の部屋の全天球画像を用いたVRコンテンツ(ツアー)を提供する。THETAの全天球画像によって物件の主要な箇所を仮想的に見て回れる点が特徴となる。コンテンツの提供先プラットフォームはPCを想定しているという。

LIFE STYLEの担当者によると、これまでにも一部の不動産業者によって物件の内覧を目的としたVRコンテンツは提供されていたが、多くは営業・管理部門の現場社員が撮影したもので、撮影のプロによって制作されたコンテンツは少なく、本サービスを利用することで安定したクオリティのコンテンツを提供できるだけでなく、不動産業者が現地に赴いてVR用画像を撮影する業務負担の軽減が見込めるとしている。

料金は、物件の居住部向けプラン(税別3万4,800円/1戸)とマンションの共用部向けプラン(税別4万4,800円/1棟)の2種類を用意しており、別料金で別途静止画の撮影にも対応する。

3月28日に行なわれた発表会では、株式会社リコー 新規事業開発本部 SV(Smart Vision)事業開発センター所長の大谷渉氏が、不動産の分野でTHETA 360.bizを活用した際のユーザーメリットについて説明した。

「不動産業界と組んで全天球画像を活用したときにエンドユーザーが得られるメリットは、VRによる物件の内覧、例えば地方にいながらにして都内の物件が見られるという利便性です。VR内覧を提供している賃貸業者では最近、入居者が現地を訪れることなく契約が成立するケースも出てきているといいます」

「従来の物件内覧は実際に現地を訪れる必要があるため、直接詳細に物件の確認ができる反面、拘束時間も長く、1日に何件も回ることが困難でした。この点を解決するのが全天球画像によるVRコンテンツであり、移動や余計な手続きにかかる時間も節約でき、担当者が同行する必要もなく、ユーザーとしてもより多くの物件を回れる効果が期待できます。詳しいデータは出せませんが、成約率も上がっているようなので、今後増えていくやり方だと考えています」

大谷氏は登壇した際、THETAの今後についても言及しており、「コンシューマ向け全天球カメラのトップシェアを今後も維持していきたい」と意気込みを述べた一方で「IoTデバイスとしてとらえたとき、どう活用できるのかも考えて行かなければならない」との意向も明らかにした。

「全天球画像データをどう活用してマネタイズするかは非常に重要なテーマです。現在、THETA 360.bizの有料契約社は約100社で、無料のお試しプランを利用している法人は1,000にのぼります。業種としては観光、飲食、ウェディング、中古車販売(内装)、検査系が多い傾向。THETA 360.bizを活かす方向性としては、何か価値のあるものを伝える広告的な使い方と、場の記録を積み重ねて検査に使う2つがあると考えています」

「BtoB分野におけるVRとTHETAの連携は魅力的だと思いますが、現段階では特に具体的なプランはありません。でも例えば、VRによる業務のハンズフリー化とか、まだまだできることはたくさんあるはずなので、この分野の将来の展望にはとても大きな期待を持って取り組んでいます」

実際のコンテンツはPC向けだが、提供イメージとして、GearVRを使った動画デモを実施していた

関根慎一