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「RICOH THETA × IoTデベロッパーズコンテスト」の優秀作品が発表

最優秀賞は、遠隔会議を助ける「聖徳玉子」

株式会社リコーは11月7日、東京都江東区青海の日本科学未来館で「RICOH THETA × IoTデベロッパーズコンテスト」の表彰式を開催した。

同社の360度カメラ「RICOH THETA」と連動するアプリケーションやガジェットを募ったコンテスト。2015年の「RICOH THETAデベロッパーズコンテスト」に続き2度目の開催。参加者にはベータ版のクラウドAPIやTHETA筐体の3Dデータを提供した。

今回は33の国と地域から347のエントリーがあり、最終的に54作品が集まった。"VR元年"として360度カメラへの期待が高まる中、クラウド連携や、小型コンピューターが埋め込まれたTHETA向けガジェットなど、いわゆる"IoT時代"らしい作品が目立ったという。

リコー代表取締役会長の近藤史朗氏は、「"IoTの目"としてTHETAが果たす役割は広がると確信している」と話し、このコンテストを第一歩に、ソーシャルイノベーション、オープンイノベーションの流れが加速することに期待する。

リコー代表取締役会長の近藤史朗氏

日本科学未来館の館長である毛利衛氏は、「THETAが登場した時、いつかこれで動画を撮りたいと思った。今はそれも実現した。こうした要望が次々と叶うカメラ」と評価。「日本科学未来館も建物が古くなってきたと思っていたが、THETAを通して見ると、まだカッコいいところが見えてくる」とも述べた。日本科学未来館はオープンしてから15年を迎え、リコーとのパートナーシップも10年になるという。

日本科学未来館 館長の毛利衛氏

前回に引き続き審査員長をつとめる、東京大学大学院情報学環教授の坂村健氏は、同コンテストがIoT対応になりパワーアップしたとコメント。昨年に引き続き、THETAがオープンAPIである点を取り上げ「こういった開発はオープンでないと面白さが半減」、「たくさんの人を参加させないとイノベーションは起きない」と力説した。

東京大学大学院 情報学環教授 坂村健氏

また同コンテストが、ニューヨークからパリまで最初に無着陸で飛んだ者に賞金を出す「オルティーグ賞」(1919年設立、1927年にリンドバーグが賞金獲得)にはじまる、賞金提示により技術進歩を促進する「Xプライズ」の発想に近く、日本においてはリコーが先行していると評価した。

表彰作品

最優秀賞

・「聖徳玉子」インフォコム技術企画室

喋っている人の方向を検知し、その方向を表示。複数人が喋っているときは画面上に小窓で表示する。360度映像につきものの、見たい方向にスクロールする手間を省く
THETAをはじめ、8つのマイクが1つのUSB機器にまとまったマイクなどのデバイスやソフトウェアをベースにした

優秀賞

・「360 stream to AR app for imagebased lighting and real-time reflections」grigtod

360度画像にCG物体を置いたときの映り込みを、リアルタイムに計算する

・「360EyeToEar」StrawberrySaurs

2台のTHETAからの映像をもとに、サラウンドヘッドフォンからの出力音として周囲の状況を伝える
人に近づくと音が変わり、位置関係が変わると音の聞こえてくる方向が変わる

・「THETA EYE」THETA EYE

ライブストリーミングモードでPCに接続して配信
受信者は配信側のIDを指定すると、特別なソフトの用意なくWebブラウザでストリーミングを見られる

80周年記念賞

・「Veaver Theta S Mobility Streamer」Team Veaver(from IOK Company)

配信側はTHETA SをAndroid端末に接続
位置情報とともにストリーミング配信される

・「VANISH360」ViRD

動いている通行人などを消せるアプリ
三脚にセットし、複数枚を自動処理で合成する
撮影者が写りたくない場合は、自身が1コマずつ動けば合成時に消える

・「Sun Light Estimator」馬場雅志

CGにおいて2次元画像を光源とするIBL(イメージ・ベースド・ライティング)用の画像を作成するためのツール。太陽光の強さを推定する場合、明るすぎてTHETAのHDR撮影でも難しい
そのため、太陽光の中で影を使って光の方向と強さを推定する
推定結果をもとにCGをレンダリング

・「Next Number VR360」muteua

THETA画像の中に32枚の数字パネルが並び、VRゴーグルで視野の真ん中にとらえると消せる。番号順に32枚を消すまでの時間を競うゲーム
スマートフォン版は、端末を動かして遊ぶ

・「水中全天球ライブ配信システム i-Ball(アイ・ボール)」谷川&山縣

水族館の水槽の中をリアルタイムで観たい、との着想から始まったプロジェクト
地上とはLANケーブル1本で繋ぐことにこだわった
耐圧殻はアクリル半球とアルミ枠で構成

審査員特別賞

・「Panomate」株式会社マジックアワー

不動産用のパノラマコンテンツを作成するWebサービス
歪みなく見られる。方向により表示されるガイド文を変えられる
指定位置を切り取り、静止画スライドショーとしても書き出せる
SNS向けにデータサイズの軽いGIFアニメーションでの書き出しも可能

・「MOUTHETA」virtual dentist center

紙一枚で、THETAを使って口腔内写真を撮れるソリューション
THETA底面を鉛筆でなぞって、切り抜く
紙はディフューザーとして活躍する
口腔内も明るく写る

・「THETA Monitoring System」Tsukasa Horinouchi

THETAで360度を監視し、差分画像で動体検出する
家主は外出先からWebアプリ経由で動体監視。不審者への攻撃(おもちゃ)もできる
クラウドでユーザー端末とRaspberry Piを繋ぎ、遠隔攻撃を実現

・「World in a jar - ジャム瓶の中の世界 -」MIRO

ポジフィルムを使ったチップをジャム瓶に使用する
ジャム瓶や電球にセットする
瓶の内部に全天球イメージが映し出される

講評

日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任 小沢淳氏は、「人類の進化に寄与できるか」をポイントに審査。うさぎの耳のような360EyeToEarは健常者でもソナーになり、未来の人類の姿はこうなのかもしれない、と考えたという。

日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任 小沢淳氏

加えて、「まだ見たことのない世界」という切り口では「THETA EYE」の完成度が高く、工事現場やライブ鑑賞、スポーツ観戦、宇宙や辺境の地を見るのにも使えそうと述べた。口腔内を見る「MOUTHETA」には、身近なところに見たことのない世界があるんだな、と衝撃を受けたと述べた。

NAKED Inc.代表の村松亮太郎氏は、「今回は、旧来のカメラにない可能性が広がると感じられた」と印象を述べた。村松氏はアプリやガジェットが「どういった体験になるか」という視点で審査したが、フレームで切り取る従来のカメラとな異なる"THETAの持つ可能性"が自分も含めて見えてきた感じがするとコメント。今後さらに飛躍の段階に入ると、クリエイティブやアートの観点からも面白いものが出てくるのではと期待を語った。

NAKED Inc.代表の村松亮太郎氏

ドワンゴ 人事部 部長の清水俊博氏は、前職であるエンジニアの視点から審査。MOUTHETAは家族の健康を考え、360EyeToEarは障害を持つ人のためなど、「高度な技術力を持った作品も多かったが、それ以上に愛を感じた」と話す。THETAという製品そのものへの愛も強く感じ、審査していて楽しかったと述べた。

ドワンゴ 人事部 部長の清水俊博氏
フォトセッションのあと、THETAでの記念撮影も行われた