カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

瀬戸内海屈指のフォトジェニックな島で、最新な猫事情に触れる(真鍋島・後半)

猫が暮らす島で、とくに猫が多い“5大猫島”のひとつに、瀬戸内海の真鍋島があります。岡山県の笠岡諸島にあり、7つの有人島のひとつで、周囲7kmほどの小さな島です。映画のロケ地にもよくなる、手付かずの情緒的な家並みが美しいところ。

【これまでのねこ島めぐり】

私は何度か来島したことがありますが、今回は1年以上ぶり。

前に来たときは、日中、猫がのほほんと道端で寛ぎ、夕方になると、島のおばあちゃんやおじちゃんが猫たちにご飯をあげる姿が微笑ましかったのです。

しっかりとご飯をもらっていた猫たちは、観光客にご飯をもらいにいくこともあまりなかった記憶があります。

ところが、今回来島すると、港のほうに猫がわんさかとやってきて、ご飯をおねだり。その様子から島の猫事情がみえてきました。

いざ、真鍋島の猫旅、後半です!

ノスタルジックな街並みも魅力

真鍋島の集落はこぢんまりとしていますが、中のほうへと行けば行くほど、古い家並みがところ狭しと並び、懐古的な雰囲気に、ノスタルジーをおぼえます。

空家はいくつもあって、ずいぶんと朽ちていますが、時の流れを感じさせる美しさがあるなあと思います。

時折、猫が姿を現して、案内をしてくれるかのように、振り返っては前方をとことこ歩いていきます。その光景が、とても絵になるので、写真をパチリ。

真鍋島では、港周辺にもう一カ所、猫がよく集まる場所があります。

何度か顔を出したことのある民家なのですが、その家のおばあちゃんが猫に毎日ご飯をあげています。

こちらのおばあちゃんは、以前もお話を聞かせていただいたことがあります。

「これはね、みんな野良猫なのよ。うちの猫は一匹だけ」

そういいながら、どの猫もご飯が食べられるようにしばらく見張りを続けます。

「うちのおじいさんが、漁師だったからね。昔は港からぞろぞろと猫の大名行列ができて、集まってきたよ」

このお宅では、漁で獲れた魚をあげていた時から、今でも少なからず、猫が集まってくるといいます。

猫がきっちりと横並びでご飯を食べているのを見届けて、おばあちゃんは家に戻っていきました。横並びの猫たちを写真に撮らせてもらって、私もその場を離れました。

それから私は、島の観光名所といえる、真鍋中学校へと向かいました。昭和24年頃から、今も現役で使われている木造の校舎は、風情があって、フォトジェニックで、とっても素敵です。

現在2名の生徒さんがいるようです。もちろん、全学年で、2名です。

“マル”がエスコート

この学校の向かいの家の軒下に、マルという猫がいました。

マルは島の方が飼われていた猫なので、人間が大好き。私が近づくと、「ニャーン」とないて、すり寄ってきてくれました。

学校とマルのベストショットを撮っていると、遠くからマルを呼ぶ声が。

立派な石垣のうえに立つ学校のほうから、ある男性がマルに声をかけています。その声に、猛ダッシュで向かっていくマル。

「マルはね、飼い主さんが亡くなってしまったから、たまにご飯をあげているの」

体育の先生だという男性が、ポケットからご飯を取り出すと、マルに与えていました。

島では、こうして猫のお世話をする人というのが、バトンタッチでつながっていっているように思えます。

木造校舎の中も、昔ながらのまま。フランス人が、何度も来島してつくった本にも出てくるため、多くのフランス人観光客も、学校に立ち寄るそうです。

校舎の裏側にまわると、小高い場所に眺海台という看板が立てられた場所があり、瀬戸内海と集落を一望できます。

ここまで来るのに、マルも、とことことついてきてくれました。頼もしく、エスコートしてくれているようです。

人懐こいマルは、体育の授業がない日は、島のほかの方がご飯をあげているようです。島には当然、猫が好きな人、好きでない人が一緒に暮らしているわけですが、島をちょこっと散策するだけでも、猫を大事に思う方たちと出会えて、これが猫島たる理由なのかなあと感じました。

猫を想いながら島に手を振る

そろそろ、船の時間が迫ってきました。16時半の普通船に乗って、笠岡まで行こうと思います。その途中にも、集落の路地で、ごろにゃんと甘えてくる猫に出会いました。

港に戻って待合所に行くと、切符係の中室さんがいました。

1,080円の切符を買い、港へ向かうと、後ろから中室さんが娘さんと一緒にお見送りに追いかけて来てくれました。

「猫がいること、いろいろ思う人がいるけど、島のみんなで考えていくからね。まあ、自然に任せるというか。また会いにきてね」

猫好きな旅人の心の中を見透かしたように、笑顔でそう言って、船が見えなくなるまで、いつまでも手を振ってくれました。

笠岡港に到着するころには、すっかり日が暮れていました。

また、真鍋島に行こう、猫だけでなくて、島の人にも会いたいから。

ピンクとブルーのグラデーションが美しい空を眺めながら、そう思いました。

港から笠岡駅に向かっていると、中室さんが一緒に撮った写真を送ってきてくれました。この旅の想い出がまたひとつ、アルバムに刻まれました。

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。