カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

瀬戸内海屈指の映画ロケ地となる美しい島で、猫にまみれる!(真鍋島・前半)

日本の5大“猫島”のひとつと言われている、岡山県笠岡諸島の真鍋島。

【これまでのねこ島めぐり】

瀬戸内海に浮かぶ、周囲7.6kmの小さな島ですが、いっときは人口よりも猫の数が多いと聞いたことがあります。ここは、岡山県と四国の香川県の県境付近にある、古い街並が残る情緒的な雰囲気の島で、「獄門島」や「瀬戸内少年野球団」など、映画のロケ地となった場所でもあります。

昭和24年に建設された木造の二階建て校舎は、いまも使われていて、中は見学も可能。観光の目玉となっています。

真冬の寒い日、私は香川県の讃岐広島にいたのですが、知り合いの船に乗せてもらい、およそ15分かけて真鍋島へ来島しました。

知り合いが、「最近も、たくさん猫がおるんよ」というので、期待! 真鍋島へは、約1年ぶりです。最近の猫たちは、どんな暮らしをしているのでしょうか。

島に着くなり猫が集合!

真鍋島には、お昼に香川県の讃岐広島を出て、約15分で到着しました。瀬戸内海には幾つもの島がありますが、他県の島同士をつなぐ船は少なく、目先の島であっても、海上タクシーを利用するか、知り合いの船に乗せてもらうなどしないとなかなか自由に行き来ができません。

通常、真鍋島へは、岡山県の笠岡駅からおよそ7、8分歩いたところにある笠岡港住吉乗り場から船にのります。高島、白石島、北木島と経由して、高速船だと45分、普通船だと65分で真鍋島へ到着します。

真鍋島は、集落がきゅっとまとまっていて、ノスタルジックな家並みが広がります。とくに本浦地区は、とても、のどか。猫が似合う、ゆっくりとした時間が流れています。

船が発着するのも本浦港。

漁業の島らしく、漁船がいくつも停泊しています。

本浦港につくと、さっそく、猫たちがとこところ姿を現してくれました。

港に来て、5分もしないうちに、あれよ、あれよと猫が集まってきました。いったい、どこにこれほどの猫たちがいたのかと思うほど。

寒い真冬ですが、日中は太陽も顔を出して、少しあたたく、猫たちは日向で日光浴をしていたのだと思います。

気付けば、私のまわりに猫大集合!

ベンチに座ると、猫たちもベンチに乗ったり、足元でちょこんと座りこんだり、猫にまみれました。

でも、正直驚きました。

実は何度か真鍋島へは来たことがあったのですが、こんなにも猫が飛びつくように集まってくることがなかったのです。どちらかといえば、のほほんと、観光客の様子を観察しているような、おっとりとした猫たちが多かったです。

これはいったい?

島の事情、猫の事情

思う存分猫の写真をパシャパシャと撮っていたら、船の待合所の切符売りなどを担当している中室さんという女性がやってきました。
彼女とも、何度かお会いしたことがあります。

「ご無沙汰してます~」と声をかけると、

「あら~小林さん! まあ~猫がたくさん集まってますね~」と、嬉しそう。

彼女は、切符売り場で島を出入りする島の人、観光客をいつも見守っている存在ですが、10年前に、家族で島に移住してきたそうです。ソックスくんという黒白猫も飼っていて、猫が大好き。

ベンチでまったりとしていた猫たちも、今度は中室さんのあとを追うように大移動がはじまりました。彼女が押してきた荷車の上に飛び乗って、甘えモード全開です。

「前よりも、猫増えました? こんなに人に集まって来ましたっけ?」と尋ねると、いろいろな島事情と、猫事情が見えてきました。

私が何度か来島したとき、猫が多く集まる場所は二カ所あって、それ以外にもぽつぽつとありました。

そのどこにでも、猫たちにご飯をあげるおばあちゃんや、おじいちゃんがいたそうです。

でも、ご高齢で、そんな方たちが病気になったり、お亡くなりになったり、施設に入られて島を出たり。

そして昨年の終わりにもそんなことが……。

「みんな、おなか空かせているから、こうして集まってきちゃうんですよね」

過疎化、高齢化の島では必ずこういう流れになってしまいます。それは、他の島でもいくつか、同じようなことを耳にしたり、目の当たりにしたりしました。

ここ数年、瀬戸内海の島々に通っていますが、「あれ、あそこ猫島でしたよ?」と言っても、「いやあ、いまは猫がほぼいなくなったよ」と聞くことがあります。同時に、島の人口の一気に過疎化しています。

「私、猫のご飯持ってますけど、あげてもいいですか?」とうかがうと、中室さんが、

「うん、私が見てるから大丈夫だよ」

というふうに許可をくれて、思う存分あげることができました。

島民の迷惑にならないように……

島では、それぞれが猫に対して思う感情が違います。それは、当然のこと。私は猫が好きなので、猫に出会える島はまさに楽園ですが、島の人にとっては、それが迷惑だと思っている場合もあります。

だから、必ず島のルールに従う必要はあります。島の人たちは、猫好き観光客が勝手なことをすると、猫がいるせいだと思ってしまうでしょう。

真鍋島は、特に「猫にエサやり禁止」とはいうふうな決まりはないそうです。だから、実際には観光客がご飯をあげているらしいのです。もし、島の方が近くにいれば、一声かけたほうがいいかなと思います。

私が猫にご飯をあげていると、おじいちゃんがやってきて、

「今日は天気がいいから、猫が多いなあ」

と、猫にあたたかい眼差しをむけると、ゆっくり、ゆっくりと歩いていかれました。

真鍋島の港に大集結した猫たち。ご飯をもらって、満足、満足、という感じ。

今日は天気もいいし、青空に猫たちの写真が映えました。

今回の真鍋島は、出だしは港で、予想以上に猫にまみれましたが、もう一カ所、島の中で猫がたくさんいる場所があるのです。

今はどうなっているのでしょうか。

さあ、島の中をもっと散策しようと思います。

後編はこちら

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。