カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

猫の数が急増中!瀬戸内海の“訪れやすい猫の島”へ行く!(佐栁島・前半)

瀬戸内海には大小合わせて無数に島がありますが、正確には、海上保安庁の調査によると、有人・無人と合わせて727島あるそうです。(外周0.1km以上の島)

その島々には、猫が多く暮らす島があり、私は今回、何度も来島している香川県の佐栁島へと向かいました。猫好きの間では、前回ご紹介した愛媛県の青島に次いで、瀬戸内海にある有名な“猫島”の1つです。なにより、船の欠航も少ないので、訪れやすい島です。

【これまでのネコ島めぐり】

近年、いくつかの“猫島”では、人と猫の共生を実現させる対策として、島のすべての猫に去勢・避妊手術をしました。そのため、猫の数が激減しているところも多いのです。

そのなか、あれよ、あれよと猫の数が増えているのが佐栁島です。そして、今年8月には、移住者が島に唯一の宿兼カフェをオープンさせたそうです。

猫も増え、人も増え、なんだか楽しそう!

いざ猫たちに会いに、カメラをかかえ、佐栁島へ行ってきました! 猫はどれくらい増えているのでしょう?

にゃんこ隊に追われて

香川県多度津駅から歩くこと20分、小さな桟橋に到着しました。ここから、三洋汽船のフェリーに乗って50分ほど、高見島を経由して、佐栁島に到着します。

桟橋にある切符売り場は可愛らしい小屋で、レトロ感漂い旅情をおぼえます。さっそく片道680円のチケットを買いました。

朝9時5分発のフェリーには、釣り道具を携えたご年配の方々が何人も乗船していました。秋晴れの爽やかな日で、絶好の釣り日和なのでしょう。

甲板のベンチに腰掛け、心地よい揺れに体をあずけながら、遠方に見え隠れする幾重の島々をぼうっと眺め、清涼な海風とあたたかな太陽の光りを受けていたら……眠っていました。

気付けば、「佐栁島へ上陸の方は〜」というアナウンスが流れ、あっという間に佐栁島の本浦港に到着です。島には、本浦と長崎という2つの集落がありますが、本浦に観光客が多く訪れるせいか、猫は本浦のほうが多いような気がします。

あ、いそがなくちゃ。いそいそと船を降りましたが、「そんな慌てんでも」という、島ならではのスローモード。

ああ、気持ちがいいなあ。

いざ、陸に上がると……!

にゃーーーん。

青島ほどの数ではないけれど、「ようこそ〜」と出迎えに来てくれる猫たちの姿がありました。

それからめざとく、釣り道具を携えたおじさんの後をとことこ、とことこと、歩いていきます。一匹の猫が後を追い、その後ろにまた一匹、もう一匹と猫たちは隊を成していきます。
やがて、「ほら!」とおじさんからがクーラーBOXから魚を1匹投げました。

魚をめぐる争奪戦に勝った猫は、魚をくわえたまま遠くへと猛ダッシュ。安全な場所で魚を独り占めして食べるのでしょう。

残りの猫たちは、おじさんの過ぎ去ったその場所で、「あーん、お魚おちてないかにゃあ」と探すものの、そこに魚はないとわかると……、目をつけたのは、私です。

一瞬の猫たちの攻防戦をパシャパシャ写真に撮って、ほんわかとした気持ちでいたのですが、気付けば猫たちが、「にゃーーーん」といっせいに私の元へと集まってきました。

にゃんこ隊が目をつけたのは、私のトートバッグです。

「ここに、ご飯があるでしょう? しってるにゃん」

「みせてもらおうかにぇ」

「なんかにおうにゃあ」

そういってきているのは、彼らの瞳、眼差しを見ればわかります。

「えーと、ご飯。朝ご飯のパンの残りならあるよ、ウインナー付きだよ」

バッグの中をごそごそさせている間に、ひらり、ひらりと塀の上に飛び乗った猫がずらり。1年ほど前にも佐栁島に来たけれど、こんなにたくさんの猫は港にいませんでした。やはり、猫の数は増えているのでしょうか。

観光客が猫にご飯をあげるのを禁止する島もあるなか、何度も来島している佐栁島は、よく島民の方から「いいよ、いいよ。どんどんご飯、あげてな」といわれることが多く、実際に観光客は、島のあちこちで自由に猫たちにご飯をあげています。

だから、猫が特定の場所に集まってくるわけではなく、銘々好きな場所でのほほんと寛いでいます。そして、その傍を人間が通れば、「にゃ〜ん」と、とびきり可愛い声を出して、「ごはーーーん」と近寄ってくるのです。

なかには、人間に慣れすぎて、警戒心のカケラもない猫たちも。お魚をもらう夢でも見ているのか、起きる気配のない居眠り猫も多いです。

のんびり、のどかなネコ時間

佐栁島には、両墓制という墓制風俗があり、遺体を埋葬した埋め墓(うずめはか)と、石塔を建てて霊魂を祀る参り墓(まいりはか)を両方つくっています。

お墓の前であろうと、猫はのんびり。ご先祖様方もきっと、この猫がのんびり寛げる島の暮らしをあたたかく見守っているのかしら。

そう思っていると、またまた猫たちが、「そのバッグにご飯はない?」と集まってきました。

それにしても、お墓を背景にした猫の写真もなかなか絵になるとは。日本らしい風景というのは、こういうワンショットだろうなあ〜なんて思って、嬉しくなります。

それから、本浦で、猫がわいわいと集まる有名な山路商店があります。

いつだって、店前では猫がずら〜り。ここに行けば、間違いなく猫にまみれることができますが、やはり、猫の数が増えている気がします。

前に商店のおばさんとお話したときも、「猫がかわいくて、かわいくて。旅行なんて行けなくなってしまったよ」といっていたのを思い出しました。

商店の近くにいたおじいちゃんが、「今年は春できた子がようく育って、あちこちいるよ〜」と教えてくれました。

「佐栁島では、猫の去勢手術はしないんですか?」と聞くと、「うちの島はしないねえ」とのほほ〜んと応えてくれました。

「また秋にできた子も増えるよう」と、おじいちゃんがニコニコしながら「まあ、ゆっくりしていきなよ」と言って、ゆっくり、ゆっくりと歩いていきました。

なんだか、おじいちゃんも猫みたいに、のどかでいらっしゃる。

ふわふわとした猫のような空気が流れる佐栁島。

猫たちも増え、島は元気いっぱいにみえます。

さて、島に最近、宿兼カフェがオープンしたそうです。いったい、どんなところなのでしょうか。せっかくなのでランチもしたいし、良ければ次回泊まってみたいし、いざ島に誕生した「ネコノシマホステル」へ行ってみることにしました!

つづく

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。